薬局経営コラム

    

編集部より

調剤報酬改定のたびにマネジメントの工夫が必要となる薬局や調剤併設ドラッグストア。「物」から「人」へのシフトが鮮明になり、地域の医療情報集積とコミュニケーションを担う役割も求められています。地域社会や患者さんのニーズを満たす新しい試みを続けていくためにも、薬局は安定した経営を続けていくことが必要と言えるでしょう。

 

今回は、電子処方せんの導入のメリットについて、大手薬局エリアマネージャー補佐の篠原さんが解説。電子処方せんを利用することの、薬局側・患者さん側双方のメリットや、導入手順について詳しくお伝えします。

 

執筆/篠原奨規 管理薬剤師 薬局グループ エリアマネジャー補佐

編集/メディカルサポネット編集部

  

カルテを見ながら電子機器を操作する医師  

医療機関や薬局への電子処方せんの導入は、医療の質向上や業務効率化を図るために進められている医療DX施策の1つです

近年、電子処方せんの導入が進む中、薬局にどのようなメリットがあるのか関心を持つ方は少なくないでしょう。

 

本記事では、電子処方せんの概要や電子処方せんにおける調剤業務の流れについて解説したのち、電子処方せんのメリットについて、薬局・患者さんの視点からお伝えします。

 

また、電子処方せんの導入作業についても解説するため、電子処方せんの導入を検討している薬局経営者は必見です。

  

   

1.電子処方せんとは?

 

パソコンを操作する医師

  

電子処方せんとは、従来は紙で発行されていた処方せんを電子化し、データとして取り扱えるようにしたものです。

 

近年、保健・医療・介護におけるデータを活用し、医療の質向上や業務効率化を目指す「医療DX」が推進されています。国民が質の高い医療を受けられる環境を整備することで健康寿命の延伸を図り、社会保障の持続可能性を確保することが目的です。

 

「電子処方せん」は医療DXの重要な施策の1つとして、2023年1月から運用が開始されました。

 

2024年9月に厚生労働省が公表した「電子処方箋の普及拡大に向けた対応状況等」によると、電子処方せんに対応している薬局は26,661施設であり、導入率(電子処方せん対応施設数をオンライン資格確認導入施設数で除したもの)は44.6%でした。このペースで導入が進めば、2024年度中に薬局の半数以上が電子処方せんに対応することが予想されます

 

2024年9月時点における電子処方箋の普及状況資料:電子処方箋の普及状況

出典:厚生労働省「電子処方箋の普及拡大に向けた対応状況等」

 

 

2.電子処方せんにおける調剤の流れ

 

薬局で調剤業務を行う男女の薬剤師 

電子処方せんにおける調剤の流れは、従来の紙の処方せんとは異なります

 

ここからは、電子処方せんの調剤の流れを「処方せん受付・処方入力」「調剤業務・服薬指導」「調剤記録・電子署名・調剤情報データ送信」の工程ごとに解説します

処方せん受付・処方入力

患者さんが来局したら、マイナンバーカードによる受付を行い、「過去のお薬情報の提供への同意確認」とともに、電子処方せんの提出を依頼します。

処方せんが複数あるときは、一括で提出するか個別で提出するかを選択する必要があります。

 

なお、患者さんがマイナンバーカードを持参していない場合や来局前に調剤を始める場合には、医療機関が発行する処方内容(控え)に記載されている引換番号でも電子処方せんの取得が可能です。

取得した処方内容データは、薬局システムに取り込まれます。

 

調剤業務・服薬指導

処方せん受付・処方入力後は、薬剤師が調剤・服薬指導を行います。

 

電子処方せんによる調剤では、健康被害につながりかねない「重複投薬」や「併用禁忌」を自動でチェックできるため、薬剤師は、その結果をもとに処方監査を行い、処方の妥当性を判断します。

また、マイナンバーカードによる受付において、患者さんが「過去のお薬情報の提供」に同意した場合は、過去に処方・調剤された薬剤も確認することが可能です。

 

電子処方せんに基づき薬の用意ができたら、収集した患者情報をもとに服薬指導を行います。処方内容(控え)を預かった場合には、患者さんへ返却します。

 

調剤記録・電子署名・調剤情報データ送信

服薬指導後には、薬剤師が薬局システムに調剤結果を記録するとともに、必要に応じて処方医に対してコメントを入力します。

 

また、従来の記名・押印の代わりに、HPKIの仕組みを用いて電子署名を行い、調剤情報データを電子処方せん管理サービスに登録することで、電子処方せんの調剤が完了します

 

  

3.電子処方せんの導入による薬局のメリット

  電子機器を手にもって服薬指導を行う女性薬剤師

  

電子処方せんを導入すると、薬局では以下のメリットが得られます

  • 医療DX推進体制整備加算の算定につながる
  • 業務の効率化やコスト削減につながる

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