2022.11.30
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薬局の価値を高めるセルフメディケーション①
~地域薬局での物販戦略~

“超”地域密着調剤薬局の経営戦略 ~地域と共に生き続ける~ vol.8

“超”地域密着調剤薬局の経営戦略  ~地域と共に生き続ける~

 

編集部より

「物」から「人」へ。2025年の実現を目指す地域包括ケアシステムの構築に向けて、薬局のあり方は変革期の真っ只中です。厳しい薬局経営が続く中、地域に根差す調剤薬局の強みを活かせる時代がようやく来たと考えている薬局経営者・管理者の方たちも多いことと思います。しかし、街の小さな薬局が地域と共に生きるとは具体的にどういうことなのでしょうか?本コラムでは、東京都練馬区江古田で地域密着調剤薬局経営をされている、たむら薬局の田村憲胤(のりつぐ)さんに、採用・税務・地域連携など薬局経営に関わる実践知についてお話しいただきます。

第8回から2回に渡ってセルフメディケーション・セルフケアに対する調剤薬局の取り組みについてお届けします。2020年の薬機法改正により、今後の薬局・薬局薬剤師はそれぞれ調剤する場所・調剤する人からの転換を求められています。その先駆者として道を切り開いてきた田村さんは、開業以降地域住民との関わりを持ちOTC医薬品の売り上げを倍増させてきました。その手腕を振り返りながら、地域に根差す調剤薬局のあるべき姿を探ります。

新型コロナとインフルエンザの同時流行への地域薬局としての備え

皆さまこんにちは。

   

新型コロナウイルスの感染者数が再び増え始めていますね。

政府の「新型コロナ・インフルエンザ同時流行対策タスクフォース」では、第8波に備えて抗原検査キットやOTC解熱鎮痛薬をあらかじめ薬局で購入しておくよう国民に呼びかける方針がまとめられました。第7波の際に「どこで販売しているか分からない」といった声があったことを踏まえ、厚労省は抗原検査キットを取り扱う薬局・店舗の情報が国民に分かるようにするため「新型コロナウイルス抗原検査キット取り扱い薬局・店舗の情報」を公表しています。 

      

   

薬局の価値を高めるセルフメディケーション① ~地域薬局での物販戦略~

    

また、新型コロナウイルス感染症と季節性インフルエンザの同時検査キットについて、厚生労働省の薬事・食品衛生審議会医療機器・体外診断薬部会でOTC薬化が28日に了承されました。12月初旬にも販売が始まる見込みです。

 

このように新型コロナとインフルエンザの同時流行への対策が進められる中、地域での暮らしの課題解決に向け、地域薬局に対する地域住民からの認識を変える好機といえるのではないでしょうか。抗原検査キットや解熱鎮痛剤や風邪薬をはじめとしたOTC薬の販売体制を充実させることを通して「病院の帰りに薬をもらう場所」から「健康で安心・安全な暮らしの拠り所」へという、薬局に対する住民の認識変化につながる良い機会なのではないかととらえています。

  

そこで、今回から2回に渡り、地域薬局でのセルフメディケーションに対する取り組みについてお伝えしていこうと思います。

   

    

コロナ禍でピンチの中、必要な「モノ」を地域へ供給

ちょうど3年前の2019年12月、新型コロナウイルス感染症が中国の武漢市で報告され、その後世界各地で感染が急拡大しました。マスク・消毒剤・体温計が売り切れ、さらには根拠のないデマ情報から、ティッシュ・トイレットペーパーなどの紙類が品薄になったことは記憶にある方も多いと思います。

 

このコロナ禍で「ドラッグストア」と「調剤薬局」の明暗がはっきりし、薬局で処方薬以外の「モノ」を供給することの必要性を痛感した経営者も多いのではないでしょうか。

 ただ、処方薬以外の「モノ」の供給は必要だとは思いますが、地域薬局がドラッグストアと同じ土俵で勝負する必要はないとも考えています。

 

なぜならドラッグストアは「不特定多数」の顧客が何でも購入できる場所であるのに対し、地域密着の中小薬局は関係性が強い「特定少数」の顧客が必要なものを購入できる場所であれば良いからです。

        

薬局の価値を高めるセルフメディケーション① ~地域薬局での物販戦略~

    

    

OTCを「武器」にした強い薬局づくりの理想と現実

私の薬局も最初からOTC薬の仕入れルートがあったわけではありません。

   

私は学生の頃に憧れた、宝箱(=OTC薬品)で埋め尽くされた薬局のイメージが強かったこともあり、住民からの相談に対応できるよう一通りのOTC薬品を揃えてきました。

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