2022.08.01
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手続き編ーーー看護管理者が把握すべきメンタルヘルス不調者の労務管理・人事対応

看護師がメンタル不調を訴えた時の人事・労務マネジメントvol.3

看護師がメンタル不調を訴えた時の人事・労務マネジメント 

 

編集部より

皆さんの職場に仲間入りした新卒・中途採用看護師の方たちは研修を終えて各配属先で生き生きと看護実践できていますか?昨今、働く人たちのメンタルヘルスが重視され、さまざまな取り組みが行われていますが、医療現場に目を向けるとその実態はどうでしょうか?厚生労働省の調査によると、保健師・助産師・看護師は令和2年度(2020年度)における精神障害による労災請求件数の多い職種の第3位となっていることがわかります。中小規模病院やクリニックでは、医療従事者のメンタルヘルスサポート体制が十分とはいえません。メンタル不調による休職や退職は、本人だけでなく組織にとっても大きな影響を及ぼします。スタッフのメンタル不調に気付いた時、最も近い看護管理者は何をすべきなのでしょうか?

 

本特集では、看護師がメンタル不調を訴えた時の人事・労務マネジメントと題して、産業医・社会保険労務士・看護管理者、それぞれの視点からお話しいただきます。第3回「手続き編」では、メンタルヘルス不調者が出た場合に看護管理者や人事担当者が具体的にどのように対応したらいいのか、特定社会保険労務士の館野聡子さんに解説いただきました。

 

執筆/館野 聡子(特定社会保険労務士・公認心理師・株式会社イソシア代表取締役)

編集/メディカルサポネット編集部

 

医療業は精神障害の労災認定件数が第2位

令和4年6月24日、令和3年度の「精神障害に関する事案の労災補償状況」が公表されました。精神障害の労災の支給決定件数は、令和2年度を上回って629件と過去最高を記録しました。支給決定件数の内訳を業種別にみると、医療業が59件/年と全体の2番目に多い数字となっています(最も多かったのは社会保険・社会福祉・介護事業の82件/年)。もはや医療現場でメンタルヘルス不調者が出ることは珍しいことではありません。メンタルヘルス不調者が発生した場合の対応の基本的な考え方に加え、病院で看護師が不調になった場合に必要な配慮も併せて考えてみたいと思います。

 

 

看護師のメンタルヘルス不調がわかったら

―――本人からの申し出でわかるケース

メンタルヘルス不調だと知るタイミングは、多くが本人からの申し出です。なんらかの精神的な不調を感じて病院等を受診し、結果業務を休んで療養が必要だと診断されて、職場に申し出があるという流れです。このような申出があった場合には、職場のルールに従って休んでいただく必要があります。なぜならば、職場には、労働契約法第5条に定められる安全配慮義務が課せられているからです。(労働契約法 第5条  使用者は、労働契約に伴い、労働者がその生命、身体等の安全を確保しつつ労働することができるよう、必要な配慮をするものとする。)主治医が「仕事を休んで療養する必要がある」と診断しているにもかかわらず、勤務を継続させた結果、悪化するようなことがあれば、安全配慮義務違反を問われる可能性が出てきます。看護師の場合、シフト等の手配がつかず休ませることができない、ということもあるかもしれませんが、使用者は体調不良者が療養できるよう最大限の配慮をする必要があります。

 

―――周りが気付いてわかるケース

一方で、本人からの申出はないが、周囲の人がメンタルヘルス不調を心配するようなケースもあります。この場合は、最初から精神障害と決めつけて対応するのではなく、職場での気になる出来事に焦点をあてて、声かけをするようにします。

 

「最近遅刻が多いようだけど、体調が悪いことはない?」

「前はしなかったようなうっかりミスが最近増えているようで、心配なんだけど、体調はどう?」

 

というように、具体的な出来事について話をするようにします。体調不良だという話が出てくれば、安全配慮義務の観点から「このまま働いて問題ないかどうか、一度診察を受けてきてほしい」と依頼しましょう。その結果、配慮しながら継続勤務が可能な場合もあります。

 

―――受診先は自院か外部か

病院に勤務する医療従事者特有のお困りごととして、自院に受診するか否か、が挙げられます。これについては、病院内に精神科や心療内科等があっても可能であれば外部の病院で診察を受けることをお勧めいたします。患者として治療

 

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