2025.07.11
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第5回 多様性を認め合うチームの在り方
―時代の変化に強い組織をめざす―

現場で役立つ!看護マネジメント入門

第5回 多様性を認め合うチームの在り方    ―時代の変化に強い組織をめざす―         

編集部より

看護管理を実践するには、患者さんに安全で安心な看護を提供するための優れたスキルだけでなく、看護師を適切に導くための現場管理、リーダーシップ、組織運営、コミュニケーションなどにまつわる力を身に付けることが求められます。

本連載では、看護師を適切に導くための現場管理、リーダーシップ、組織運営、コミュニケーション能力など、看護マネジメントに関するさまざまなテーマを解説しています。

 

今回のテーマは「多様性を認め合うチームの在り方 ―時代の変化に強い組織をめざす―」です。

患者さんに安心・安全で質の高い看護を提供するには、志を同じくする看護師たちが一つのチームとして結束し、協力し合うことが不可欠です。しかし、同じ「看護師」という職業に就いていても、一人ひとりの考え方や背景は実にさまざま。

性別、世代、雇用形態などが異なり、多様な価値観を持つメンバーをチームとしてまとめるために、管理職にはどのような思考やリーダーシップが求められるのでしょうか。 

 

今回は、多様な価値観を理解する姿勢や時代の変化を柔軟に受け入れる意識の重要性に加えて、チームとして患者さんに対応しつつも、個々の看護師がやりがいを持って活躍できる仕組みづくりについて解説します。 

  

執筆株式会社ナレッジリング

編集メディカルサポネット編集部

          


  

  

1.価値観を認め合うことがチームビルディングの土台

価値観を認め合うことがチームビルディングの土台

   

「ダイバーシティー」という言葉が一般化してきたことからも分かるように、価値観の多様化が進み、互いの違いを認め合おうという風潮が世界的に広がっています。看護の現場も決して例外ではありません。

例えば、性別の面では「看護婦」から「看護師」へと名称が変更され、「ナースマン」という言葉も浸透してきました。

現在、男性看護師の比率はまだ1割に満たないものの、年々増加する傾向にあります。

国籍の面でも、フィリピン、ブラジル、ベトナムといった多国籍の看護師や看護助手が増えてきました。

 

また、働き方の選択肢も多様化しています。

かつては常勤雇用が一般的でしたが、現在ではパートタイム、派遣、契約などの非常勤雇用、さらには夜勤帯のみ働くパターンもあります。勤務時間が柔軟化して短時間勤務が可能になったことにより、子育て世代が育児と仕事を両立しやすくなったり、経験豊富な看護師が再雇用というかたちで現場に復帰しやすくなったりと、看護師の年齢層やライフスタイルも多様化しています。 

 

このように、看護師として働く人々の社会的背景が多様であれば、看護師という仕事に対する気持ちや大切にしている価値観も、人それぞれで当然です。

もちろん、患者さんのために温かい看護を提供したいという基本的な思いは、誰もが共有しているでしょう。

ただし、それを実現する方法として「患者さんのためなら残業してでもケアを続けたい」と考える人もいれば、「小さな子どもがいるので定時で業務を終えてお迎えに行ける環境で、継続的に働きたい」と考える人もいます。

どちらの考え方も、チームメンバーの大切な思いであり、否定されるものではありません。

むしろ、お互いの価値観を尊重し、認め合い、受け入れる姿勢が重要です。そうでなければ、メンバー間の信頼関係が損なわれ、チームとして患者さんによりよい看護を提供することが難しくなってしまいます。 

 

人間の命を扱う医療現場には常に独特の緊張感があり、実際に臨機応変な対応が求められる緊急的な場面も少なくありません。そうした中でも、メンバー間のコミュニケーションが円滑で、互いに協力し合える関係性を築けていれば、難しい局面も力を合わせて乗り越えられるはずです。

 

しかし、メンバー間の関係がぎくしゃくし、相談しづらい雰囲気になってしまうと、働きづらさやモチベーションの低下を招くだけでなく、ヒヤリハットやインシデントの増加といった患者さんへの不利益にもつながりかねません。 

ただし、スタッフの背景を把握しようとするあまり、過度に立ち入った質問をするのは避けましょう。

たとえ信頼できる上長であっても、(少なくともその段階では)話したくない話題があるのは自然なことです。

「差し支えない範囲で、話したいことだけ教えてくださいね」「いつでも話したくなったときは声をかけてください」といった、相手に無理をさせないスタンスを取ることがポイントです。

 

また、聞き取った内容については、「誰にどこまで伝えていいか」「どのようなかたちで共有するか」を本人に確認し、その約束をきちんと守ることも重要です。

相手は信頼して話してくれているのですから、それに応える姿勢が関係の深化につながり、結果としてスタッフの働く意欲向上にも結び付きます。

管理職が各スタッフの状況を適切に把握し、各々が尊重し合える関係を築くことができれば、背景や価値観が異なっていても気持ちよく働ける職場風土を育めるでしょう。

 

2.医療分野において、新しい文化に歩み寄る意義とは?

医療分野において、新しい文化に歩み寄る意義とは? 

「新しい文化や考え方」に歩み寄る姿勢を持つことは、相互理解を促すというだけでなく、新たな時代の医療を提供するという意味でも重要です。

時代の移り変わりに伴って医療技術が日々進化し続けているように、世の中の先端技術やネットリテラシーも常に変化してきました。人と人との関わりによって成り立つ看護の世界であっても、このようなデジタル文化とは切り離して考えることができないのです。 

 

現在、ほとんどの医療機関では電子カルテが導入され、患者さんのバイタルサイン、処置の指示、内服薬、治療方針、看護記録など、治療やケアに関わるあらゆる情報が一元的に管理されています。

紙カルテの時代と比べると、

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