2025.03.06
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第2回 看護マネジメントに欠かせない能力(前編)

現場で役立つ!看護マネジメント入門

第2回 看護マネジメントに欠かせない能力(前編)            

編集部より

看護管理を実践するには、患者さんに安全で安心な看護を提供するための優れたスキルだけでなく、看護師を適切に導くための現場管理、リーダーシップ、組織運営、コミュニケーションなどにまつわる力を身に付けることが求められます。

本連載では、看護マネジメントに関するさまざまなテーマを解説していきます。今回のテーマは「看護マネジメントに欠かせない能力」です。

日本看護協会が公表する「病院看護管理者のマネジメントラダー」には、管理者が身に付けておきたい6つの能力(組織管理能力・質管理能力・人材育成能力・危機管理能力・政策立案能力・創造する能力)が示されています。

これらを前編(第2回)と後編(第3回)に分けて解説します。

  

執筆株式会社ナレッジリング

編集メディカルサポネット編集部

          

目次

  • 1.  組織管理能力
  • 2.  質管理能力
  • 3. 人材育成能力
  • まとめ. 効果的なマネジメントに欠かせない能力の3つ


  

  

1.組織管理能力

他部門と調整を行う看護師

   

「組織管理能力」とは、看護組織の方針を実現するために、人材・時間・物資などの資源を適切に活用する能力のことを指します。

また、自部署内の活動にとどまらず、他部門との交渉や調整を行う力も求められます。

 

方針を正しく伝える

組織を管理する上で重要なのは、まず自身が組織の方針や目標を正しく理解し、それを自部署に浸透させることです。そのためには、病院や看護部がめざす姿を把握し、スタッフへの伝え方を上長とすり合わせると効果的です。

明確な理解をもとに伝えれば、個々の解釈の違いによる誤解を防ぎやすくなります。

 

上層部の雰囲気や姿勢はスタッフの帰属意識に大きな影響を与えるため、上長や管理者同士でコミュニケーションを重ねることで、良好な関係を維持しておきたいところ。管理者という立場や責務からは「スタッフの管理」がイメージされやすいですが、まずは自らがめざすべき方向性を理解し、マネジメント層での連携を深めることが肝心です。

  

管理者だけで答えを出さない

組織を構成する人材・時間・物資といった資源は有限であり、限られた資源を最大限に活用しながら、看護の質や業務の効率を高めることが求められます。その際に大切なことは、現場の声を聞き、スタッフが無理なく実行できる計画を立てることです。

  

現場では患者対応が最優先されるため、管理者とスタッフの思いがすれ違うこともあります。例えば「病棟が落ち着いているから、今日は褥瘡ケアについてカンファレンスをしよう」と提案しても、スタッフは「今日はいつもより多くの患者さんに入浴ケアをしたかったのに」と不満を感じるかもしれません。こうしたすれ違いが積み重なると、管理者とスタッフの間には徐々に溝が生まれてしまうことも…。

 

管理者だからといって、自分の考えだけで答えを出す必要はありません。むしろ、スタッフと課題を共有し、全員で知恵を出し合いながら進めていくプロセスが組織の成長や活力につながり、チームワークを高めていきます。現場の声を積極的に拾って反映する姿勢も、組織の管理には欠かせないでしょう。

 

倫理観の学びが、組織を強くする

倫理的な問題や判断に対する意識を高め、正しい行動を選択できるよう支援することが、組織の強化につながります。具体的には、コンプライアンス、ハラスメント防止、情報管理などのテーマで研修やワークショップを開催するといった方法があります。特に、院内での成功例や失敗例を活用すれば、書籍や動画では得られない実践的な学びを提供できるでしょう。こうした学びの機会を通して、倫理的な問題についてオープンに話し合える職場文化が生まれると、継続的なコミュニケーションの活性化にもつながります。

 

ただし、そのような職場文化を育むためには、管理者自身が率先して倫理的な行動を実践し、良質な手本を示すことが大切です。管理者がスタッフに対して思いやりのない言動を見せていると、信頼関係を築くことはできません。管理者が倫理を重視する姿勢を一貫して示すことで、スタッフは日常業務の判断や行動をより倫理的に考えられるようになり、結果として組織全体の信頼性と強さが向上します。

 

  

2.質管理能力

データをまとめる看護師

  

「質管理能力」とは、患者さんの尊厳を尊重しつつ、生命や生活を守るために看護ケアの質を保障する能力のことを指します。看護実践の改善に必要なデータを活用して現状を見える化し、標準化と効率化を推進することが求められます。

 

看護のばらつきを最小限に

看護の現場は非常に流動的で、ケアを提供する状況や患者さんが求めるニーズが常に同一ではないからこそ、看護の質を保障することが欠かせません。例えば、時間に余裕があって患者さんとゆっくりと関われる場合もあれば、検査やリハビリの時間が迫っていて、迅速にケアを済ませなければならない場合もあります。

 

また、病状やニーズを十分に把握している患者さんと、接する機会が少なくまだ十分に情報が得られていない患者さんでは、対応の難易度も異なります。こうしたさまざまな状況の中でケアをするとなると、これまでの経験やその場の感覚に頼った対応になることもあるかもしれません。

 

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