2024.10.03
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全国介護事業者連盟斉藤正行理事長が語る
大改革目前の介護・障害福祉業界を全国組織の業界団体として支える

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編集部より

立ち上げから6期目となる2023年、全都道府県に支部を置く全国組織となった一般社団法人 全国介護事業者連盟。法人やサービス種別の垣根を超えた介護・障害福祉事業者による団体として2018年に設立され、持続可能な介護保険制度・障害福祉制度を確立するため活動してきました。2024年度の介護報酬改定を経て、業界の今とこれからをどのように捉えているのか、理事長の斉藤正行氏に伺いました。

 

取材・文/中澤 仁美(ナレッジリング)

撮影/和知 明(株式会社BrightEN photo)

編集/メディカルサポネット編集部

   

      

 

1. 全国行脚の日々を乗り越え、悲願の全国組織へ

斉藤さまお写真1

 

ようやくスタートラインに立った――。全国介護事業者連盟(以下、介事連)が47都道府県のすべてに支部を設立し、全国組織となった瞬間の思いです。そもそも介事連は、「介護の産業化」と「生産性の向上」を二大テーマに掲げて2018年に立ち上げた組織。これまで介護・障害福祉業界は各団体がバラバラに活動している状態で、結果的に一つひとつの声が小さくなってしまい、現場の意見が政策に反映されづらいといった問題が生じていました。これは多くの方が感じていた課題でしたが、実際に全国規模の団体を作り上げることには「現実的でない」といった反応が大多数。当初は賛同者が少ない中、情熱と気合いで全国行脚を続け、愚直に仲間を集め続けてきたのです。

 

少しずつ介事連の必要性や実効性が浸透し、この領域で最大規模の事業者団体にまで成長したことには、素直に喜びを感じます。そして同時に、ここから活動をさらに本格化させようと身が引き締まる思いでもあります。今後は、支部間の横の連携を強化することにも力を入れていくつもりです。他支部でどのような活動をしているか知見を共有する仕組みを作ったり、気軽に相談し合えるような関係を構築したり……。そのために、2023年から支部長会議や事務局会議を順次開催しているところです。

 

また、介護部門と同様に、障害福祉事業部会で47都道府県に支部を置くことも、当然ながら重視しています(2024年9月時点で28支部)。双方での組織拡大を果たし、会員数4万事業所、業界シェア10%を実現していくことが直近の目標。現在、34000事業所を超える会員数となっていますが、更に急ピッチで増加しており、毎月1,000事業所ほどの加入があることから、近々に実現する可能性は十分にあると思われます。そして長期的には、業界シェア30%という規模感の団体に成長させていきたいと考えています。

 

2024年には、介事連が全国組織となってから初めての大規模災害となる、能登半島地震を経験しました。われわれとしても可能な限りの支援を行いたいと考え、窓口を設けてお見舞金を集め、1,000万円を超える額の寄付を実現。さらに、厚生労働省の依頼を受けて介事連のメンバーを全国各地から派遣し、1.5次避難所となった金沢市内のスポーツセンターでボランティア活動に従事してもらいました(のべ156人、787日)。世間の関心は薄くなっていますが、能登半島では今も避難所で生活している方が、高齢者や障害者を含めてたくさんいらっしゃいます。中長期的な視野での災害支援についても、われわれがこれから取り組むべき大きなテーマだと感じています。

 

2. 全国大会にSNS、ぜひ現場の皆さんも注目を

設立からの6年間、介事連は「組織を広げる」「現場の声を届ける」という2点に専念して活動を展開してきました。これらは引き続き取り組むべき大切なポイントですが、今後はそれ以外のことにも活動の幅を広げていき、業界の発展へ一層貢献したいと考えています。その一つが、現場の質を高めるための活動。教育の機会を提供するため、研修、セミナー、勉強会などを数多く実施する見通しです。

 

その一環としても活かしてもらいたいのが、介事連が主催する全国大会です。第1回として、2023年10月11日に「全国大会in東京2023」を東京国際フォーラムで開催しましたが、1,500人定員の会場に約1,800人もの参加者が訪れ、立ち見が出るほどの大盛況に。岸田総理からの動画メッセージに加えて、厚生労働大臣は3代にわたって会場までお越しいただきました。一番の目玉は、全国各地の介護・障害福祉事業所で行われている取り組みの実践発表。「想像以上に学びが多かった」「もっと社員を連れてくればよかった」といった声が出るほど反響が大きく、発表者のもとには、その後も全国から視察が訪れたといいます。2024年11月6日に規模を拡大した第2回を開催しますので、ぜひ興味がある方はご参加ください。

 

業界発展のため取り組みたいことのもう一つが、活動の裾野を広げていく活動。事業所の経営者層には介事連についてかなりご理解いただいているのですが、現場にもそれを広げていきたいのです。介護・障害福祉の仕事に従事する方の声をまとめ、政府に届けていくためには、現場で尽力する皆さんにもわれわれの取り組みを知ってもらうことが欠かせません。

 

こうした思いもあって最近、SNSでの情報発信に力を入れています。YouTubeの公式チャンネル「介護チャンネル」では、制度改正や業界の動向などを解説したり、各分野のプロを招いて対談を行ったりしていて、経営者や管理者向けの内容が中心です。そしてTikTokでは、介護・障害福祉業界で今、知っておきたいポイントを短時間で伝えたり、視聴者からの質問・コメントに回答したりしています。より気軽に情報収集できるという意味でも、現場の皆さんにはまずTikTokをご覧いただくことをお勧めしています。

  

3. 大改革の序章となる今、将来への備えを

斉藤さまお写真2

 

2024年度の報酬改定では、介護報酬+1.59%、障害福祉サービス等報酬+1.12%というプラス改定が実現されました。数値だけ見れば改善したように感じられるかもしれませんが、他産業と比較すると、まだまだ十分な賃上げにつながる水準ではありません。また、プラス分のほとんどが処遇改善に充てられたことを考えると、物価高騰などに苦しむ事業所の経営改善に結び付いたと判断するのは難しいでしょう。特に、訪問介護については驚きのマイナス改定となってしまい、決して満足いく内容とはいえませんでした。

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