2022.12.06
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まちの小さな課題解決から始まった谷田病院の地域づくり事業
~社会資源とつながり、患者さん一人ひとりの課題を解決できる病院をめざして~

攻めの中小病院経営 ~事務部門が動かすヒト・モノ・情報~vol.9

  

 

編集部より

新型コロナウイルス感染症の影響を受け、経営・人材確保・収益化など、病院はさまざまな課題に直面していることがこれまで以上に浮き彫りとなりました。それらの課題解決のための取り組みが、必ずしも改善に結びつくとは限らず苦戦する病院もあるようです。本コラムでは、熊本県甲佐町にある谷田(やつだ)病院で事務部長を務める藤井将志さんに、病院において大きな役割を担う事務部門のリアルな実践方法について解説いただきます。第9回のテーマは地域連携です。地域連携とは言うものの、病院が地域に何ができるのか、足踏みしている経営者や事務長の方は少なくないことと思います。谷田病院の代名詞にもなったという「まちづくり」。この取り組みはどのようにして始まり発展を遂げたのでしょうか?地域連携は地域の病院同士がつながることだけではない、と谷田病院のケースが教えてくれているようです。

 

 

まちづくり活動の原点は、地域の声に耳を傾けること

近年では、谷田病院の代名詞と言われるほど「まちづくり」の取り組みが注目され、医療経営セミナー等で講演する機会も増えました。しかし実は戦略的に始めたわけではなく、一つひとつのご縁を積み重ねた結果だと言ったら、読者のみなさんは驚かれるかもしれません。

  

きっかけは些細なことでした。2017年、総合型地域スポーツクラブ活動の一環として甲佐町でトランポリン教室が開かれることになっていましたが、条件に見合う施設が見つからないという相談を受けたのです。そこで場所を探してみたところ、谷田ヘルスケアグループの特別養護老人ホーム内に手頃なスペースがあると分かり、2週間後には開催にこぎつけることができました。

  

この出来事をきっかけに甲佐町を元気したいと願う有志が自然と集まるようになり、当院職員も一緒になって人口減少などのまちの問題や将来像について議論を重ねるようになったのです。

   

まちの小さな課題解決から始まった谷田病院の地域づくり事業

 トランポリンをしている様子

   

ちょうどその頃に参加したイベントで、古民家再生による地方創生事業で著名な株式会社NOTE代表取締役・藤原岳史さんと出会いがあり、甲佐町に視察と講演に来ていただくことができました。その後、古民家再生ホテルNIPPONIAの開業を視野に農泊推進の助成金を申請し、2018年4月、一般社団法人パレットを設立。同年6月、甲佐町まちづくり協議会を発足させ、翌月には甲佐町、肥後銀行、パレット、当院など6団体が連携協定を締結し、短期間にドタバタと地域づくり事業に取り組み始めました。

 
まちの小さな課題解決から始まった谷田病院の地域づくり事業
 

町と一緒にまちづくり協定を締結

        

ありたい姿は「社会的処方」ができる、コミュニティ・ホスピタル

これまでワークショップで古民家を再生したレストランやホテル、キャンプ場、スポーツ教室に学習塾、農業など多岐にわたる活動に取り組む中で、病院がまちづくりに寄与する意義とは何かと考え続けてきました。そんな中で出会った概念が、社会資源を通して患者さんの困りごとを解決するという「社会的処方」です。

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