2022.07.11
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待ったなし!病院のハラスメント対策
~パワハラを予防・防止するために~

攻めの中小病院経営 ~事務部門が動かすヒト・モノ・情報~vol.4

攻めの中小病院経営 ~事務部門が動かすヒト・モノ・情報~

 

 

編集部より

新型コロナウイルス感染症の影響を受け、経営・人材確保・収益化など、病院はさまざまな課題に直面していることがこれまで以上に浮き彫りとなりました。それらの課題解決のための取り組みが、必ずしも改善に結びつくとは限らず苦戦する病院もあるようです。本コラムでは、熊本県甲佐町にある谷田(やつだ)病院(99床)で事務部長を務める藤井将志さんに、病院において大きな役割を担う事務部門のリアルな実践方法について解説いただきます。第4回は病院のハラスメント対策がテーマです。2022年4月から中小企業にもハラスメント対策が義務化され、医療機関での対応も必至となっています。チームづくりや相談窓口の整備、また、そもそもハラスメントが起こらない環境を整えることが事務長の役割でもあると言えます。谷田病院のハラスメントへの取り組みを参考に、自院での環境整備を進めてみてはいかがでしょうか。

 

 

心理的安全性とハラスメントの関係

改正労働施策総合推進法による職場のパワーハラスメント対策が、2022年4月から中小企業にも義務付けられました。これは医療機関も例外ではなく、人材確保や生産性向上の観点からも対策が求められています。そこで今回は、ハラスメントを予防・防止するために当院で取り組んでいることをご紹介します。

  

パワーハラスメントとは、組織での地位や人間関係などの優位性を利用して、他者に苦痛を与えたり職場環境を悪化させたりすることです。たとえば、身体的・精神的な攻撃や、人間関係からの切り離し、過大・過小な要求、個の侵害などの行為(図表1参照)がパワーハラスメントにあたると言われています。

  

図表1:パワハラにあたる行為

    

パワハラにあたる行為

 

一方、近年では心理的安全性(phychological safety)という言葉が組織運営において注目されています。Googleが実証実験により「チームの生産性向上の最重要要素」と位置付けた概念です。心理的安全性が高い組織では、誰もが気兼ねなく自分の意見を言い合ったり、共通の目的に向けて助け合える状況により、高いパフォーマンスが発揮されます。

 

つまり、メンバーが互いに尊重される心理的安全性が高いチームと、職場の上下関係や権力を利用したハラスメントが横行している組織は、まさに対極にあると言えます。

 

そこで当院では、心理的安全性の要素を病院理念と基本方針に反映しました。数年前に理念を「一人ひとりの大切な時間に寄り添います」と改定しました。この“一人ひとり”には職員や事業に関わる全ての人々も含まれていることと、人生の「大切な時間」を安心して楽しく過ごせるフィールドとして私たちの職場があることを基本方針の一節に明記しました。まずはこうした姿勢を理念・方針に掲げ、繰り返し伝えながら少しずつ浸透させることで、ハラスメントのない組織文化の醸成につなげたいと考えています。

 

医師のパワハラ事例と対策について

医療機関では、医師は意図せずパワハラ加害者になりやすい立場だと言われています。医師は資格的に医療現場で権限が集中しており、自分の気に入らないことがあるとすぐに怒鳴ったり、暴力をふるったり、周囲の意見をまったく受け入れなかったりと、裸の王様になりがちです。事実、筆者もこれまで医師に恫喝されたり、物を投げられたりした経験があります。

 

医療の制度上、医師がいなければ診療が成り立たないため、これまで問題に目をつぶり、必要な指導や処分を行ってこなかったという病院も多いのではないでしょうか。しかし、医師によるパワハラは、医療現場での権限が大きいだけに影響も

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