2022.03.17
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超高齢社会に誰もが使いやすい共用品の普及を

協会・団体インタビューvol.2 公益財団法人 共用品推進機構

介護事業者インタビューvol.9 公益財団法人 共用品推進機構

 

編集部より

超高齢社会を迎え、共用品(アクセシブルデザイン)のニーズが増えています。共用品とは「身体的な特性や障害の有無に関わりなく、より多くの人々が利用しやすい製品・施設サービス」のことを言います。市場規模は3兆円を超え、製品やサービスだけではなく、WEBでもアクセシビリティに配慮した設計が推奨されるようになってきました。高齢者施設でアクセシブルデザインを取り入れることで、多くの高齢者や障害者が自立し、快適かつ元気に過ごせることができると期待されています。誰もが使いやすい製品やサービスを推進し社会へ普及させる活動を通して、より多くの人々が暮らしやすい社会を目指す公益財団法人共用品推進機構の取り組みについて、専務理事兼事務局長の星川安之さんにお話を伺いました。

 

取材・文/松崎 純子

撮影/山本 未紗子(株式会社BrightEN photo)

編集/メディカルサポネット編集部

 

 

介護事業者インタビューvol.9 公益財団法人 共用品推進機構

星川 安之ほしかわやすゆき

共用品推進機構 専務理事兼事務局長

1980年に玩具メーカーのトミー工業株式会社に入社し、新設の「H・T研究室」にて勤務。1999年の公益財団法人共用品推進機構設立時より事務局長・専務理事を務める。

2014年度工業標準化事業 経済産業大臣表彰受賞。著書に「共用品という思想」(共著)、「アクセシブルデザインの発想」、「障害者とともに働く」(共著)共に岩波書店、「共生社会の教養」経済法令研究会 などがある。

 

 

  

20年間で3兆円規模に拡大した共用品(アクセシブルデザイン)市場

 

――共用品は福祉用具や一般の製品とはどう違うのでしょうか

 

福祉用具と一般製品の中間的な位置にある、高齢者や障害がある人にも共に使いやすいように配慮して設計された製品やサービスを「共用品」と呼んでいます。日本が国際標準化機構(ISO)に提案して2001年に制定された高齢者・障害者のニーズに配慮するための規格を作成する際の基本指針「ISO/IECガイド71」が「共用品」を作る時のベースになっています。

 

そのガイドで、共用品は「アクセシブルデザイン」と訳されており、日常生活に不便を感じている全ての人を対象に、不便さを感じている製品やサービス、生活環境を使いやすいものに変えていくということがテーマになります。市場規模は、調査を始めた1995年には4,869億円でしたが、2019年度には3兆638億円へと増加しています。

 

 

介護事業者インタビューvol.9 公益財団法人 共用品推進機構

 

 

――私たちがよく耳にするユニバーサルデザインとも違うのですよね

 

ユニバーサルデザインは、アクセシブルデザインを含むものです。ユニバーサルデザインについて、基本規格のISO/IECガイド71(JIS Z 8071:2003)では、特別な改造や特殊な設計をせずに、すべての人が可能な限り最大限まで利用できるように配慮された、製品や環境の設計のことを言います。アクセシブルデザインは、不便さを使いやすい製品やサービスに変えていくというやり方です。

 

当機構は、製品やサービスに対し不便だという声を聞き、解決方法の検討を行っています。合意された解決案は規格に反映させています。現在、アクセシブルデザイン関連の規格は43種類あり、その多くは身の回りの製品にすでに取り入れられています。その手段として、不便さの声を製品・サービスへのニーズに置き換え規格に反映させる作業を行なっています。ここで決められた規格は私たちの身の回りの製品にすでに取り入れられており、高齢者に合ったカラーやデザインとのバランス、文字のサイズ・間隔や、表現方法を調整した商品などのリリースが増えています。

 

 

 

若い人も高齢者も誰もが使いやすい「共用品」のある暮らし

 

――どのような製品・サービスがありますか

 

高齢者や障害がある人が感じる不便さは、障害がない人も感じることがあります。例えば、同じ形をしたシャンプーとリンスの区別についてたずねたところ、目の不自由な人だけでなく、髪を洗うときには目をつぶって

 

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