2022.05.02
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「前残業」を削減し看護師の働き方改革を実現した秘訣とは?
ーーー埼玉県済生会加須病院(旧:埼玉県済生会栗橋病院)

看護部ビフォーアフターvol.3

 

 

 

編集部より

大きな声では言えないかもしれないけれど、どこの看護部もそれぞれに課題を抱え、頭を悩ませているもの。どのように課題と向き合い、乗り越えていくのか……。そこで組織としての真価が問われます。始業時間より大幅に前倒しして出勤する「前残業」が常態化している医療機関は少なくないといわれている状況の中、埼玉県済生会加須病院(旧:埼玉県済生会栗橋病院)は、看護師の「働き方改革」の一環として前残業の削減に挑みました。看護部長をはじめ、現場の課長、システム担当者、入職2年目(取材当時)の看護師というさまざまな立場から、取り組みのきっかけや具体的な施策、その成果などについて語っていただきました。

 

取材・文/朝倉 奈津子(ナレッジリング)

写真提供/埼玉県済生会加須病院(旧:埼玉県済生会栗橋病院)看護部

編集/メディカルサポネット編集部

 

【お話を伺った方】
鮎ヶ瀬 光子(写真右上/済生会栗橋病院 看護部長)  柳井 千恵(写真左/済生会栗橋病院 整形外科病棟 看護副課長)  芦葉 弘幸(写真右下/済生会栗橋病院 整形外科病棟 看護師 兼 看護部システム担当)

鮎ヶ瀬 光子さん(写真右下/済生会栗橋病院 看護部長)
柳井 千恵さん(写真左上/済生会栗橋病院 呼吸器内科・整形外科病棟 看護副課長)
芦葉 弘幸さん(写真左下/済生会栗橋病院 呼吸器内科・整形外科病棟 看護師 兼 看護部システム担当)
富樫 渓太さん(写真右上/済生会栗橋病院 呼吸器内科・整形外科病棟 看護師)

 

 

常態化する前残業に歯止めを!

 ――前残業の削減に取り組んだきっかけを教えてください。

 

鮎ヶ瀬:何よりも、看護師の拘束時間を軽減したかったからです。医療現場は常に多忙を極めており、看護師の身体的・精神的な負担はなかなか減ることがありません。そのため、国が提唱する「働き方改革」を当院でも推進することにしました。第一歩として定時後の残業(後残業)対策を進めたところ、実際に残業時間を減らすことができたので、「残業は減らせるんだ」という意識がスタッフ間に芽生え始めました。そこで、同じく課題となっていた前残業の削減にまで踏み込むことにしました。

 

柳井:この取り組み以前は、病棟看護師の4分の1以上が朝の始業時間よりも30分以上前に業務を始めていました。担当患者数が日勤帯の2倍以上になる夜勤の場合は、1時間以上前に出勤する人までいました。言うまでもなく、本来の労働時間よりも長く働けば働くほど身体的・精神的な負担が蓄積していきます。また、業務パフォーマンスを十分に発揮するためには、出勤前後のプライベートな時間をしっかりと確保することも重要です。そこで、前残業を削減することで拘束時間を減らし、働きやすい環境を整えたいと考えました。

 

働きながら3人の子育てをした経験が今回の改革の原動力の1つになったと話した鮎ケ瀬光子看護部長

働きながら3人の子育てをした経験が今回の改革の原動力の1つになったと話した鮎ケ瀬光子看護部長

 

 

 

業務にメリハリをもたらした「+15分」

 ――前残業を削減するため、病棟では主に2つの取り組みをしたということですが、具体的に教えてください。

 

柳井:1つ目は、申し送り時間の変更です。従来は、朝の始業時間(8:30)と同時に申し送りを始めていました。そのため、「情報収集に時間がかかるので、早く出勤しないと不安」「申し送りが始まるまでに、情報収集、点滴の準備、配薬などを済ませておきたい」といった理由から、8時前に出勤する人が多い状況でした。

 

そこで、申し送りの時間を8:30から8:45へ変更し、「+15分」の準備時間を設けました。準備時間があることで不安が軽減すれば、そこまで早く出勤する必要がなくなるかもしれないと考えたわけです。また、情報収集の面で不安があるスタッフに対しては、必要な情報を効率よく集める方法をアドバイスしていきました。

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