編集部より

病院の事務長藤井将志さんが、実務者目線で病院経営を辛口解説する今シリーズ。今回は、診療報酬改定の基本方針ともなっている「医療DX」について解説していただきます。医療DXには国も相当に力を入れており、今後対応しないままでいることは難しいでしょう。そこで、本記事で点数やシステムの変更を理解しつつ、自院はいつ医療DXを進めるか判断する参考にしていただければと思います。

  

執筆/藤井将志(特定医療法人谷田会 谷田病院 事務部長 藤井将志)

編集/メディカルサポネット編集部

  

  

1.医療DXの新設点数

今回の診療報酬改定の基本方針にもなっている「医療DX」について見ていきます。これまでの診療報酬改定でもICTやオンライン診療といったキーワードで盛り込まれてきましたが、今回はもっと強力に推進される可能性があります。ひとまず、次の改定がある2年後までに整備されることは以下の3つです。

 

保険証がマイナンバーカードに変わる

電子処方箋が使えるようになる

医療情報の一部が共有される

 

診療報酬改定で、医療情報取得加算という点数が新設されました。マイナンバーで保険情報を確認する、オンライン資格確認を導入するために設けられた医療情報・システム基盤整備体制充実加算をバージョンアップさせた点数です。

 

マイナンバーを使用しなかった場合は初診時3点、再診時(3月に1回)2点と高くなり、使用した場合は初診時1点、再診時(3月に1回)1点と低くなります。その分、患者負担も下がるので、患者さん側にマイナンバーを使ってもらうインセンティブになる点数となっています。さらに、医療DX推進体制整備加算(初診時8点)が新設され、上記の①~③の対応を求められています。基本方針にも載るような大きな施策であるのですが、ついた点数は大したことがありません。100人の初診患者で算定したとしても月8千円(年9.6万円)程度で、5倍の規模の医療機関だとしても年48万円です。

電子処方箋のシステムを導入するだけでも何百万~数千万円もの見積りが届くので、ペイしないところが多いでしょう。だったら算定しなくていいのでは思いますが、ひとまず見送りをしても、永遠に逃げ切るのは難しそうです。

 

図表1:医療DXに関わる点数

出典:厚生労働省保険局医療課 令和6年度診療報酬改定の概要(医科全体版)

 

なお、令和6年10月以降は医療DX推進体制整備加算・医療情報取得加算の基準や点数が改定されます。最新の情報は下記の資料も参照するとよいでしょう。

厚生労働省:医療DX推進体制整備加算・医療情報取得加算の見直しについて

 

2.医療DXをやらない選択肢

医療DX推進体制整備加算の施設基準に、前述の③電子カルテ情報共有サービスの導入が令和7年9月30日までの経過措置となっています。届出しなければ、もちろん対応する必要はありません。しかし、気になるのが、この③のシステムが前提になっている診療報酬の項目が他にもいくつかあります。

 

例えば、特定疾患療養管理料の対象疾患から糖尿病等が削除されて、受け皿となる点数として生活習慣病管理料が見直されました。療養計画書を作成して渡さないとならないのでずが、「令和7年から運用開始さへる予定の電子カルテ情報共有サービスを活用する場合は血液検査項目の記載を不要とする」とされています。つまり、③のシステムが導入されていると簡素化してよいとか、導入が前提の点数がいくつか設けられました

まだ運営も開始してないシステムであるのにも関わらず、ここまで盛り込んできているのを見ると、厚生労働省の本気度も伝わってきます。今回の改定でこれだけ盛り込まれているので、運用を始めて軌道に乗れば、かなり多くの項目で盛り込まれる可能性が高まります。そのうち、導入しているのが前提で、していないとついていけない環境になっていくでしょう。

 

また、急性期病院にとってはシステム導入の選択の余地はなく、

 

 

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