2024.09.09
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【薬局経営者向け】患者さんから選ばれる!他と差別化できる「かかりつけ薬局」づくりに向けた取り組みとは

利益を取りこぼさない 薬局マネジメント経営~Vol.13

    

編集部より

調剤報酬改定のたびにマネジメントの工夫が必要となる薬局や調剤併設ドラッグストア。「物」から「人」へのシフトが鮮明になり、地域の医療情報集積とコミュニケーションを担う役割も求められています。地域社会や患者さんのニーズを満たす新しい試みを続けていくためにも、薬局は安定した経営を続けていくことが必要と言えるでしょう。

 

この連載では、大手薬局グループのエリアマネジャー補佐 篠原奨規(しのはら しょうき)さんが、薬局で実際は行っているのに請求できていない報酬の把握や、見落とされがちな業務の工夫など、利益を取りこぼさないようにする薬局マネジメントについて解説します。

 

 第13回は、【薬局経営者向け】患者さんから選ばれる!他と差別化できる「かかりつけ薬局」づくりに向けた取り組みとはです。

 

本記事では、多くの患者さんに「かかりつけ薬局」に選んでもらえるためのポイントを解説します。厚生労働省がかかりつけ薬局に求める3つの機能やかかりつけ薬局に選ばれる薬局経営のメリット、他薬局との差別化につながる取り組みについて解説するので、ぜひ参考にしてください!

  

執筆/篠原奨規 管理薬剤師 薬局グループ エリアマネジャー補佐

編集/メディカルサポネット編集部

   

  腕組みをする女性薬剤師

 

 

かかりつけ薬局として利用する患者さんが増えると、利益も上がりやすくなるなど経営面でのメリットがあります。

ですが、なかなか利用者が増えず、「かかりつけ薬局」として選ばれるにはどうしたらいいか分からないと悩んでいる人もいるかもしれません。本記事では、厚生労働省がかかりつけ薬局に求める3つの機能やかかりつけ薬局に選ばれる薬局経営のメリット、他薬局との差別化につながる取り組みについて解説します。

  

 

1. 厚生労働省が求める「かかりつけ薬局」の3つの機能とは

薬の入った引き出しをあける医療従事者

  

患者さんが薬について、いつでも気軽に相談できる場所・相手として、「かかりつけ薬局」や「かかりつけ薬剤師」の重要性が注目されています。実際に、厚生労働省が公表している資料「患者のための薬局ビジョン」では、2025年までにすべての薬局をかかりつけ薬局にすることを目指すことが示されています。患者さんから選ばれる薬局になるためには、国が求めるかかりつけ機能を満たす必要があるでしょう。

 

はじめに、資料「患者のための薬局ビジョン」をもとに、厚生労働省が求めるかかりつけ薬局の3つの機能について解説します。

 


 

資料:厚生労働省が示す薬局再編の全体像

出典:厚生労働省「患者のための薬局ビジョン 概要」

服薬情報の一元的・継続的把握

かかりつけ薬局では、患者さんの体調変化や副作用の発現状況を継続的に確認したり、重複投薬や薬同士の相互作用を防止したりするために、服薬情報の一元的・継続的把握が求められます。特に生活習慣病などの慢性疾患を抱えている患者さんや、重篤な疾患に対して複数の薬で治療している患者さんは、副作用や相互作用など薬に関するトラブルを抱えやすいため、かかりつけ薬局・薬剤師による支援が必要です。かかりつけ薬局で市販薬やサプリメントを含む服薬情報を一元管理するとともに、適切に薬学的管理・指導を行い、薬歴へ記録し、継続的に患者さんの健康状態を継続的に把握することが大切です。 

 

また近年では、電子お薬手帳などのICTを活用した服薬情報の管理が注目されています。ICT化によって服薬情報の管理が容易になり、業務効率化にもつながります。生産性向上も踏まえて、積極的にICTの活用を検討してみましょう。

24時間対応・在宅対応

かかりつけ薬局では、電話相談や処方せん調剤を24時間対応できる体制が求められます。夜間や休日であっても、急な体調不良や妊娠中・授乳中の薬相談など、患者さんのニーズに対応できるように、人員体制を整えたり夜間や休日の問い合わせ先を周知したりする必要があります。また通院が難しい患者さんに対して在宅医療を提供できる体制の整備も求められます。

 

2024年度の調剤報酬改定において在宅業務に関する加算の要件緩和や拡充が行われました。これまで以上にかかりつけ薬局・薬剤師の在宅業務における活躍が期待されているといえるでしょう。

医療機関等との連携

かかりつけ薬剤師は患者さんの服薬情報をもとに処方チェックを行い、必要に応じて疑義照会を行います。また患者さんの状態を把握し、服薬状況や副作用など気になる点があれば、処方医へのフィードバックを行うとともに、残薬管理や服薬指導を行うことが求められます。そういった業務を円滑に行うために、日頃から医療機関との連携体制を整えておく必要があるでしょう

 

また2024年度の調剤報酬改定では、服薬情報等提供料の算定要件が見直され、介護支援専門員(ケアマネージャー)への情報提供に対して服薬情報等提供料2を算定できるようになりました。今後は医療機関や医師に限らず、多職種との連携をより意識していくことが大切です。

 

2. 患者さんから「かかりつけ薬局」に選ばれるメリット

車いすに乗っている患者さんに微笑みかける医療従事者 

患者さんからかかりつけ薬局に選ばれると、薬局の売上や利益アップにつながるだけでなく、薬剤師のモチベーションアップにもつながると考えられます

続いて、薬局経営においてかかりつけ薬局に選ばれるメリットについて解説します。

 

処方せん枚数増加による売上アップ

かかりつけ薬局として利用する患者さんが増えることで、処方せん枚数の増加につながり売上アップが期待できます。

  

患者さんがかかりつけ薬局として利用するようになると、門前の医療機関から処方せんを発行されたとき確実に来局してもらえたり、別の医療機関の処方せんも持ってきてくれたりするようになるでしょう。患者さん1人あたりの来局頻度が増え、処方せんの応需枚数増加につながれば、売上にも反映されます。患者さんとの距離がより一層近づいたときには、家族分の処方せんを持ってきてくれる場合もあるかもしれません。

加算算定による利益アップ

かかりつけ薬局として利用する人が増えると、加算を算定できる機会も増えるため利益アップにつながります。

 

一例として、挙げられるのが「かかりつけ薬剤師指導料」です。かかりつけ薬剤師が、処方医と連携しながら服薬情報を一元的・継続的に把握したうえで服薬指導を行うことで算定できます。また2024年度の調剤報酬改定では、かかりつけ薬剤師指導料の要件見直しが行われ、かかりつけ薬剤師が吸入薬の情報提供、服薬指導を行った場合に、「かかりつけ薬剤師指導料 吸入薬指導加算」を算定できるようになりました。そうした加算を漏れなく算定することで、薬局の利益アップにつながるでしょう。

薬剤師のモチベーションアップ

かかりつけ薬局として患者さんの服薬管理を支援したり相談に応じたりする機会が増えれば、その分、患者さんから感謝される機会も多くなります。結果として、薬剤師のモチベーションアップにつながることもあるでしょう。

 

たとえば、患者さんの服薬情報を把握することで、重複投薬や相互作用に気づきやすくなります。処方医に疑義照会を行い処方内容が変更されれば、重複投薬や相互作用の防止につながり、患者さんから感謝されることもあります。感謝の声にやりがいを感じモチベーションアップにつながる薬剤師もいるでしょう。

 

3. 患者さんのニーズに応じて強化すべき「かかりつけ機能」とは

 

  

「患者のための薬局ビジョン」では、先述した厚生労働省が求めるかかりつけ薬局の3つの機能に加えて、患者のニーズに応じて強化すべきかかりつけ機能が公表されています。これらの機能を備えることで他の薬局との差別化につながり、患者さんからかかりつけ薬局として選ばれやすくなるかもしれません。

ここからは患者さんからのニーズに応じて強化すべき、かかりつけ機能について解説します。

健康サポート機能

薬局に対して求められる機能・役割として、調剤対応だけではなく、地域住民の主体的な健康維持・増進を支援するための健康サポート機能が求められています。 市販薬や衛生材料の相談に乗ったり、地域の薬局へ情報発信を行ったりすることで、セルフメディケーションの推進や地域の医療の質向上につながります。

 

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