編集部より

「ナーシングビジネス」2023年vol.17 no.5より抜粋。看護職の公平性とお互いさまを重視した働き方改革』をご紹介します。

 

松本佳代(まつもとかよ)

社会医療法人財団新和会 八千代病院 看護副部長・認定看護管理者

1988 年看護師免許取得後、1998 年に社会医療法人財団新和会八千代病院へ入職。手術室・急性期病棟を経験し、地域包括ケア病棟、患者支援センターの立ち上げに参画。2016 年より現職。    

看護職が育児と仕事を両立させ、なおかつ不公平感や負担感が生まれることのない職場をつくるにはどうしたらよいのでしょうか。筆者が勤務する病院で5年間にわたり取り組んだ改革を紹介します。

目次

  1. 当院の働き方改革の経過
  2. 看護職員の変化と今後の課題

 

 

当院の働き方改革の経過

 看護職が仕事と生活のより良い調和(ハーモニー)を実現させ、長く働き続けるためには、看護職一人ひとりが、ライフサイクルに応じた働き方を選択できることが必要です。働き続けることで、豊かなキャリアが継続し、看護職としての専門性も向上させることができます。そのためには、働きやすさの実現といったメリットに目を向けるだけでなく、子育て期の看護職に生じがちなデメリットにも目を向け、克服する方法を柔軟に考えることが必要です。

 

 当院では、子育て期の看護職員を悩ませることが多いデメリットを克服できるように、選択肢を可能な限り広げる取り組みを行いました。その過程では、お互いの働き方を把握し、職員間での公平性を確保することを重要視してきました。

 

 まず2014年の100床増床を機に、看護師確保対策を積極的に進めてきました。その一つとして日本看護協会のワーク・ライフ・バランス(WLB)推進ワークショップに参画し、個々のライフステージに合わせた多様な勤務形態を取り入れました。一方でその弊害として、看護職員間で正規職員の要件が不明瞭となり、混乱を招き不公平感や不満が生まれていました。

 

 そこで2017年にプロジェクトチームを発足させ、さらなる働き方改革を推進する取り組みを始めました。活動目標を①WLBを考えた働きやすい勤務環境の提供による看護職としてのキャリアの継続 ②子育て中の職員への充実した保育体制の整備としました。改革の柱を①勤務時間とシフト ②正規職員の要件と多様な働き方 ③働き方に合わせた保育所運営の3点としました〔図-01〕。

チーム構成は看護部長、看護副部長、看護課長、事務部門(事務次長、人事課長、人事職員)の計8名です。そして「誰もが働きやすく公平な職場を目指して」をスローガンにして約2年間、月に1度の検討会議を開催しました。2020年からは、スローガンを「お互いさまの働き方を目指して」に変更し、課題解決に取り組みました。表-01は働き方改革プロジェクトの経過と取り組み内容です。

  

図-01 改革内容

  表-01 働き方改革プロジェクトの経過と取り組み内容

 

❶勤務時間・シフトについて

 改革前は正規職員の働き方が多種多様であり、シフトの種類も部署によって違っていたため、正規職員の働き方の統一に取り組みました。まず12時間夜勤勤務を全部署に導入しました。12時間夜勤を先行導入していた部署の情報を看護課長会議で共有し、看護職員への周知や勤務表作成方法など課題を解決するための移行期間を設けました。勤務時間の公平性については、夜勤・長日勤の回数により個々の労働時間に差が出てくるため、1カ月の労働時間で管理することにしました。そして1日でも多く休みを確保することや時間外勤務を削減するなどの狙いから、1日の日勤勤務時間を7時間35分から8時間に変更しました。さらに100種類以上あったシフト数を「日勤」「夜勤」「早番」「遅番」「日中」「長日勤」の6種に絞り、早番は7:15より前に勤務はしないこと、遅番は21:00を過ぎての勤務はしないように留意しました。

 

 12時間夜勤導入後、「子どもと夕食時間を過ごせるようになった」「夜勤の疲労感が減った」などの意見が聞かれました。一方で長日勤や遅番により「夕方、家族との時間が減った」「日勤が長くてつらい」という意見も挙がっています。

 

❷正規職員の要件と育児短時間勤務者の多様な働き方

■育児短時間勤務の設定

 正規職員の要件を決め、育児短時間勤務の要件として法律が定めている6時間勤務に加え、7時間勤務と週休3日制を追加しました〔表-02〕。

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