2024.08.01
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【薬局経営者向け】2024年度調剤報酬改定のポイントや注意点を解説

利益を取りこぼさない 薬局マネジメント経営~Vol.12

    

編集部より

調剤報酬改定のたびにマネジメントの工夫が必要となる薬局や調剤併設ドラッグストア。「物」から「人」へのシフトが鮮明になり、地域の医療情報集積とコミュニケーションを担う役割も求められています。地域社会や患者さんのニーズを満たす新しい試みを続けていくためにも、薬局は安定した経営を続けていくことが必要と言えるでしょう。

 

この連載では、大手薬局グループのエリアマネジャー補佐 篠原奨規(しのはら しょうき)さんが、薬局で実際は行っているのに請求できていない報酬の把握や、見落とされがちな業務の工夫など、利益を取りこぼさないようにする薬局マネジメントについて解説します。

 

 第12回は、【薬局経営者向け】2024年度調剤報酬改定のポイントや注意点を解説です。

本記事では2024年3月5日に厚生労働省から告示された「令和6年度診療報酬改定の概要」をもとに、薬局経営において押さえておきたい調剤報酬改定のポイントや注意点についてお伝えします。

 

執筆/篠原奨規 管理薬剤師 薬局グループ エリアマネジャー補佐

編集/メディカルサポネット編集部

   

  薬局のカウンターテーブル

 

 

2年に一度行われる調剤報酬改定は、薬局経営において売上や利益に大きく影響します。そのため改定内容を把握し、従業員へ周知を行い薬局としての方針を示す必要があります。

 

本記事では2024年3月5日に厚生労働省から告示された「令和6年度診療報酬改定の概要」をもとに、薬局経営において押さえておきたい調剤報酬改定のポイントや注意点についてお伝えします。

 

 

1. 2024年度調剤報酬改定の概要

薬を前に書類を書く手とノートパソコン

    

  

まずは、2024年度調剤報酬改定で注目すべき3つのポイントと改定スケジュールについて解説します。

 

2024年度調剤報酬改定における3つのポイント

2024年度の調剤報酬改定では、地域医療における薬局や薬剤師の今後のあり方・役割を示すため、さまざまな指導料や加算が新設され、要件も見直されています。

 

2024年度調剤報酬改定のポイントは、以下の3つです。

  • 地域の医薬品供給拠点としての役割を発揮するための体制評価の見直し
  • 質の高い在宅業務の推進
  • かかりつけ機能を発揮して患者に最適な薬学的管理を行うための薬局・薬剤師業務の評価の見直し

  

改定スケジュール

2024年度の調剤報酬改定のスケジュールは、従来のものとは異なります。

 

これまでの調剤報酬改定では、3月に改定内容の告示や電子点数表の交付が行われたのち4月1日に施行され、医療機関や薬局は5月上旬に初回請求、各種届出を4月1日付で行う必要がありました。しかし2024年度の調剤報酬改定では、6月1日に施行、届け出の期間は5月2日~6月3日に変更されています。

 

これまでは答申や告示から施行までの期間が短く、医療機関や薬局、ベンダーの負担になっていました。そうした課題が中央社会保険医療協議会総会で取り上げられ、今回は対応に余裕のあるスケジュールに見直されました。

 

2024年度診療報酬改定のスケジュール出典:厚生労働省「令和6年度診療報酬改定【全体概要版】」

  

 

2. 薬局経営において押さえておきたい改定内容と注意点①:薬局の体制に関する評価の見直し

「調剤薬局」と書かれた看板

 

  

薬局の体制に関する評価である調剤基本料や関連する加算は受け付けた処方せん1枚ごとに算定されるため、点数や算定要件の変更は薬局の利益に対して大きな影響を与えます。

 

調剤基本料に関わる加算の変更点を押さえておくことで、調剤報酬改定後に安定した薬局経営を行えるようになるでしょう。

ここからは、薬局の体制に関する評価における調剤報酬改定内容について解説します。

 

40歳未満の薬局薬剤師・事務職員への賃上げ措置

2024年度の診療報酬改定では、近年の物価高を受けて、医療従事者の人材確保や賃上げをするための特例措置が行われます。

40歳未満の勤務医師、勤務歯科医師、薬局の勤務薬剤師、事務職員、歯科技工所などにおける従事者の賃上げに対する措置として、+0.28%の報酬改定が行われます。とくに薬局においては、敷地内薬局や基本料の届け出がない薬局を除いて、調剤基本料が3点アップします。

 

報酬改定以外にも賃上げ促進税制や賃上げに関する抽出調査も予定されており、スタッフの業務へのモチベーションアップ、待遇改善に向けて、賃上げに積極的に取り組む必要があるでしょう。

  

地域支援体制加算の点数引き下げと算定要件の変更

地域におけるかかりつけ機能の役割を果たし、地域医療に貢献する薬局を評価する加算である地域支援体制加算が7点引き下げられます。これまで地域支援体制加算を算定していた薬局は、点数の引き下げによって利益減少を余儀なくされるでしょう。

 

さらに、地域支援体制加算を算定するための施設基準や実績要件の見直しが行われました。とくに調剤基本料1を算定する薬局では、これまでは施設基準を満たせば地域支援体制加算1を算定できましたが、改定施行後は施設基準を満たしたうえで、さらにいくつかの実績要件も満たさなければなりません。また地域支援体制加算2を算定するために必要な実績要件の数が増えており、算定するハードルが高くなります。

 

調剤報酬改定後に地域支援体制加算を算定するためには、要件となっている実績をしっかり積み上げていく必要があるでしょう。

 

2024年度調剤報酬改定における地域支援体制加算の要件見直し

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