編集部より

看護師の西川さんに、患者満足度の向上を目指した施策について解説いただきます。筆者が勤めていた病院では、患者満足度の現状を把握するためにアンケート調査を行い、入院生活や看護師の対応に「不満」を感じる患者さんの割合が6%であることがわかりました。この割合を4%に減らすために病院で行った3つの施策を紹介いたします。

 

執筆/西川 正太 (看護師、医療専門ライター)

編集/メディカルサポネット編集部

          

 

バインダーを持ち笑顔を見せる女性の看護師 

近年、患者指向の医療サービスの提供が求められ、多くの病院では「患者満足度の向上」を目指し、さまざま取り組みを進めています。しかし、病院という特殊な環境で療養している患者さんの満足度を向上させることは難しいものです。この記事では、「患者満足度調査」の結果や患者満足度の向上につながった取り組みを紹介します。

 

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1.患者満足度の調査とは

机を囲み話し合う医師や看護師

        

患者満足度とは、医療の質を測る重要な指標のひとつであり、その指標を知るために行うのが患者満足度調査です。

患者さん中心の医療が求められるなか、患者さんから選ばれる施設として医療の質を維持するためには患者満足度の調査が欠かせません。医療を提供する側にとって、患者満足度調査は主に以下の3つを目的に実施されます。

  • 医療の質を向上させる手段
  • 医療を管理する手段
  • 医療を評価する手段

 

患者満足度は病院の経営維持に大きく影響するものであるため、現状の把握が重要です。また、患者満足度は医療継続にもかかわるものであり、患者さんが病院に不満を持ち続けると、治療の中断やコンプライアンスの低下だけではなく、クレームに発展する恐れがあります。患者さんの病院に対する評価を把握する機会として、患者満足度調査を定期的に実施することが大切です。

   

2.患者さんはどのようなことに不満を抱いているのか?

病院の待合室でスマートフォンを使用して頭を抱える男性患者

      

では実際に、患者さんはどのようなことに不満を抱えているのでしょうか。ここでは「入院患者さん」「外来患者さん」の2つのケースにわけて紹介します。

  

1. 外来患者さんの不満

厚生労働省の資料「令和2年(2020)受療行動調査」の結果によると、病院施設に対する外来患者さんの満足度は「満足している」が64.5%(前回調査より5.2%増)、「不満」が3.8%(同0.5%減)でした。

 

過去と比較すると、「不満」と感じる外来患者さんの割合は減っている傾向にあります。特定機能病院や大病院、中病院といった規模や機能性を問わず、多くの外来患者さんが、病院のケアやサービス提供に満足していることがわかります。

 

その一方で、一部の外来患者さんは以下のような項目に不満を感じています。

   

図表1:外来患者さんが病院施設に不満を感じた項目と割合

出典:令和2年(2020)受療行動調査(概数)の概況

  

調査結果によると、「待ち時間」が不満と感じる割合の大部分を占めています。実際に、外来に通う患者さんからは「なぜこんなに待ち時間が長いのか」「待ち時間がまったく改善されない」「予約して来たのに1時間以上待っている」などの声が聞かれます。

 

このような外来患者さんの不満を改善できれば、患者満足度の向上に期待できるでしょう。

 

2. 入院患者さんの不満

同資料によると、入院患者さんの満足度は「満足している」が68.9%(前回調査に比べて1.1%増)、「不満」が4.9%(同0.6%増)でした。

 

近年、入院患者さんの不満と感じる割合は改善傾向にあったものの、前回調査の平成29年と比べると0.6%増加しています。入院患者さんが「不満」であると回答した項目を紹介します。

  

図表2:入院患者さんが病院施設に不満を感じた項目と割合

出典:令和2年(2020)受療行動調査(概数)の概況

  

入院患者さんの13.6%(前回調査に比べて1.3%改善)が「食事の内容」への不満を感じています。実際に「味が薄い」「美味しくない」「食べた気がしない」などの声があります。

 

しかし、栄養管理上、病態によって食事の内容は異なります。高血圧の方には減塩食、飲み込む機能が低下している方にはムース食などを提供しなければなりません。こうした病院の対応は、患者さんの状態が悪化しないようにするためには欠かせないものである一方で、入院患者さんの不満につながっているようです。こうした不満を少しでも解消するためには、「病気を悪化させないようにするため」「誤嚥しないようにするため」など、提供される食事について、患者さん個々に合わせた目的がある点を説明することが重要です。

 

さらに、病室や浴室、トイレなどをきれいに清掃したり、患者さんの個人情報を話すときはプライバシーに配慮したりできると、入院患者さんが不満と感じるきっかけを軽減できるかもしれません。

     

3.病棟での患者満足度の向上を目指した3つの取り組み

女児とその母親に笑顔で話しかける男性医師と看護師

      

筆者が在籍していた病院では、患者サービス委員会のメンバーを中心に接遇の研修やマナーの研修を開催するなど患者満足度の向上に取り組んでいました。

 

しかし、現場で看護ケアをしながら、患者さんの不満の声やクレームを聞く機会があり、もっと早く解決すべきではないかという意見により、病棟で重点的な取り組みを開始しました。続いて、実際に筆者が在籍していた病院で行った取り組みについてくわしく紹介します。

 

   

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