2024.05.30
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現役病院事務長が語る
医療・看護必要度が病院経営を左右するキー指標に

    

編集部より

病院の事務長藤井将志さんが、2024年に行われる診療報酬改定のうち、重症度、医療・看護必要度の7:1入院料に着目して解説します。手入力がなくなりレセプトデータだけの判断になった際に、経営にはどのような影響が出るのか?実務者目線の辛口解説です。

  

執筆/藤井将志(特定医療法人谷田会 谷田病院 事務部長 藤井将志)

編集/メディカルサポネット編集部

  

1. 必要度が病院経営のキー指標に

重症度、医療・看護必要度(以下、「必要度」という。)が、病院収益の柱である入院料を決めるためのキーとなる指標です。2024年度改定ではその傾向がより強くなり、必要度を満たすかどうかが病院経営の生死を分ける!といっても過言ではないでしょう。

 

今回、最も影響を受けたのは急性期一般入院料1という、いわゆる急性期の7:1入院料です。7:1の病床数が多すぎるので、それを減らすことが、この10年近くの診療報酬改定の方向性でした、じわりじわり減ってきていたのですが、前回の2022年度改定を受けて、この病床数が増えてしまったのです。黙っていないのが、財布を牛耳る財務省です。減るはずであったものが、増えてしまったのですから、約束が違うというわけで、厚労省にプレッシャーがかかります。そんな中での改定で、どんな要件変更があったのでしょうか。

 

必要度はA項目、B項目、C項目の3つから成り立っています。ざっくりいうと、A項目は医療の必要度、B項目は患者さんの状態からくる看護師の手間、C項目は手術を評価したものです。このうちB項目については急性期一般入院料1の評価から外れました。これまでA得点2点以上かつB得点が3点以上、A得点3点以上、C得点が1点以上であれば必要度を満たしていたのですが、A得点3点以上、C得点が1点以上の患者が20%以上(割合①)でかつ、A得点が2点以上、C得点が1点以上の患者が27%以上(割合②)と変更になります。これは何を意味するかというと、B項目は必要度の評価項目として優先度が下がったことになります。

 

もともと、必要度は「重症度・看護必要度」であり、看護の手間を評価するにはB項目が適切と思えるでしょう。しかし、平成26年度改定のときに「重症度、医療・看護必要度」となり“医療”が導入されているのか、を測る指標の色合いが濃くなっていきます。そして、とうとう今回はB項目が評価対象から除外されてしまったのです。今回は入院料1のみですが、今後、他の入院料の評価からも外れる可能性はゼロではないでしょう。

  

図表1:重症度、医療・看護必要度の改定内容

図表1:重症度、医療・看護必要度の改定内容

出典:厚生労働省

 

2.必要度にさじ加減が効かなくなる

このB項目外しと合わせて重要な潮流が、必要度ⅠからⅡへのシフトです。必要度Ⅰというのは、A〜B項目のほとんどを看護師が手入力しています。必要度ⅡはA、C項目はレセプトデータから抽出され、B項目のみ看護師の手入力データを用います。その必要度Ⅱの対象病院は徐々に増え、急性期一般入院料で必要度Ⅰでも可能とされている病院は一部しか残っておらず、その縛りは改定のたびに強くなっています。つまり、必要度Ⅱにすることが潮流であり、ゆくゆくは一本化されるでしょう。そして、B項目が除外されることが流れに加わると、必要度はレセプトデータから抽出された項目のみで判断されることになります。

 

このことが何を意味するのかというと、ある程度さじ加減ができる“手入力”がなくなってしまうわけです。必要度がギリギリの場合、本当に評価が正しかったのか見直して、再評価する、つまり、もう少し上がる患者がいなかったのか確認する、と言った号令がかけられます。しかし、レセプトデータで評価されるようになった場合、このさじ加減がかなり難しくなります。レセプトデータは日々の電子カルテのオーダーデータが蓄積されたもので、後から数字が足りないから見直そうとすると、オーダーをやり直すことになります。患者さんが退院していたら、退院後にオーダーの見直しをする、なんてことはできないでしょう。場合によっては、会計も変わってしまいます。今までは必要度ⅡでもB項目だけはさじ加減ができましたが、B項目が評価外になると、全てレセプトデータだけから判断することになるわけです。

 

 

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