2024.03.14
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医薬品の過剰な在庫や廃棄を防ぐには?考えられる原因と具体的な対応策を紹介

利益を取りこぼさない 薬局マネジメント経営~Vol.9

    

編集部より

調剤報酬改定のたびにマネジメントの工夫が必要となる薬局や調剤併設ドラッグストア。「物」から「人」へのシフトが鮮明になり、地域の医療情報集積とコミュニケーションを担う役割も求められています。地域社会や患者さんのニーズを満たす新しい試みを続けていくためにも、薬局は安定した経営を続けていくことが必要と言えるでしょう。

 

この連載では、大手薬局グループのエリアマネジャー補佐 篠原奨規(しのはら しょうき)さんが、薬局で実際は行っているのに請求できていない報酬の把握や、見落とされがちな業務の工夫など、利益を取りこぼさないようにする薬局マネジメントについて解説します。

 

 第9回は、「医薬品の過剰な在庫や廃棄を防ぐには?考えられる原因と具体的な対応策を紹介」です。本記事では、薬局の過剰在庫や廃棄の考え方、原因から具体的なその対策まで解説します。

 

執筆/篠原奨規 管理薬剤師 薬局グループ エリアマネジャー補佐

編集/メディカルサポネット編集部

   

      
医薬品が陳列された薬局の棚

      

 

経営を安定させるうえで、会社の資源の1つである「モノ」の適切な管理がとても重要です。薬局経営において、特に重視したいのが「医療用医薬品」の在庫管理です。「医療用医薬品」は医師が発行する処方せんによって調剤量が決められており、薬局で調剤量を調整することができないため、在庫管理に苦戦している方もいらっしゃるかもしれません。

しかし適切に対策できれば、在庫管理において問題となりやすい「過剰在庫」「過剰廃棄」を防ぐことができます。本記事では、薬局で発生する「過剰在庫」「過剰廃棄」を防ぐために知っておきたい、その原因と対策についてお伝えします。

       

1. 調剤薬局における「過剰在庫」「過剰廃棄」とは?薬局業界の廃棄額平均も紹介

薬を補充している女性スタッフ

    

  

「過剰在庫」とは、需要を上回る量の在庫を保有している状態のことです。特に調剤薬局では、処方せん調剤に使用する医療用医薬品が、調剤量に対して過剰に保有されている状態が続くと、経営に影響を及ぼします。加えて、同時に注意したいのが、使用期限切れ・破損や汚損などを原因として在庫を処分する「廃棄」の発生です。

 

厚生労働省の資料「後発医薬品の使用促進策の影響及び実施状況調査報告書(案)<概要>」によると、1つの薬局における2022年度の3か月間の合計廃棄額は、平均31,426円でした。自局の廃棄金額が業界平均を超えているようなら、過剰廃棄の状態にあると考えられるでしょう。

 

 

図表1:医薬品の在庫金額・購入金額・廃棄額に関する施設調査(保険薬局)

保険薬局における医薬品の在庫金額・購入金額・廃棄額の平均値

出典: 後発医薬品の使用促進策の影響及び実施状況調査報告書(案)<概要>|厚生労働省

 

2. 医薬品の過剰在庫・過剰廃棄によるデメリット

たくさんの薬のPTPシート

 

 

そもそも過剰在庫や過剰廃棄が続くと、薬局経営にどのようなデメリットがあるのでしょうか。

 

管理コストが増加し、業務効率は下がる

在庫が過剰にあると、保管スペースの確保やメンテナンスにかかる人手が必要になり、管理コストが高くついてしまいます。また調剤室が狭い薬局では、過剰在庫によって作業スペースや通路を圧迫したり、保管スペースがなくなってしまったりすることもあるでしょう。このような状態に陥ると、業務効率が大きく低下してしまいます。無駄なコストを削減し、効率よく調剤業務を行うためには、在庫を適正量にしておくことが大切です。

  

保有する資金が少なくなりキャッシュフローが悪化する

過剰在庫を抱えるほどの医薬品購入は仕入れとして不適切であり、また貴重な資金を無駄に使うことにもなります。仕入れ費の増大は会社のキャッシュフロー(経営におけるお金の流れ)の悪化につながります。特に処方せん調剤は基本的に保険調剤であり、支払基金へ請求した調剤報酬が薬局へ入金されるまでにタイムラグがあるため、経営安定のための資金繰りはとても大切です。キャッシュフローが悪化してしまうと、医薬品の仕入れ費や人件費、そのほかの運営費の支払いができずに倒産してしまう恐れもあります。

  

廃棄によってコストの回収ができず利益が減少する

廃棄は本来売上や利益になるはずだった在庫を処分する行為であり、購入費用や在庫管理にかかっていたコストが無駄になってしまいます。過剰在庫は過剰廃棄につながり、コストを回収できず大きな利益減少を及ぼす可能性があります。

  

3. 過剰在庫・過剰廃棄となってしまう考えられる原因

ボールペンでチェックリストにチェックを入れている     

 

調剤薬局において、医薬品の過剰在庫や廃棄が起きるのは、なぜでしょうか。代表的な要因について解説します。

 

使用量に対して発注量が多い

普段の調剤業務で使用する量に比べて発注量が多すぎると、過剰在庫・過剰廃棄につながります。予定される使用量を予測せずに発注していたり、不足や欠品を恐れて薬剤師が意図的に多く発注していたりすることがあるかもしれません。また錠剤やカプセルの医薬品には、100錠包装・1000錠包装など複数の包装単位があり、適正量を検討せずに発注してしまうと、過剰在庫になる恐れがあります。なかには包装単位を誤ってしまい、想定しているより多く発注してしまっているケースもあるでしょう。

  

不動在庫の管理ができていない

 

 

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