編集部より

看護師の定着は、看護管理業務において重要な課題です。著者の看護師西川さんが勤務していた病棟では就職3年以内の離職率は80%であり、かなり高い状況でした。その後、3つの施策を実施した結果、就職3年以内の離職率が20%まで減少したとのこと。実際に取り組んだ施策について詳しく紹介します。

 

執筆/西川 正太(看護師、医療ライター)

編集/メディカルサポネット編集部

          

 

笑顔で向き合う2人の女性看護師

 

筆者が勤務していた病棟では、ある時期新卒看護師3年以内の離職率が高く、80%という状況でした。離職者が増えると人手不足となり、患者さんに安全なケアを提供できません。そこで、危機感を覚えた病院側が重点的に離職対策を進めたところ、大幅に改善しました。本記事では実際に新卒看護師3年以内の離職率が80%という高さから20%まで改善した3つの施策を解説します。

 

1.新卒看護師3年以内の離職率の現状

笑顔で振り向く女性看護師

        

医療現場ではよく「看護師が足りない」「看護師は離職率が高い」といわれます。では実際のところはどうなのでしょうか。

 

□看護師の離職率は高い水準で推移しています。厚生労働省が公開している「令和2年度 新規学卒就職者の離職状況」によると、新卒から就職3年以内の離職率は、医療・福祉分野では38.6%でした。対して、全産業の離職率は31.2%で、全18の産業のうち医療・福祉分野の離職率は上位5位です。このデータは、医療・福祉分野に従事する全般の結果であり、看護師だけのものではありませんが、ほかの産業と比較して医療・福祉業界に属する看護師の離職率は、高い水準と推測でき、看護師が定着しにくいという病院の声も理由があるといえるのではないでしょうか。

 

看護師の有効求人倍率は2.2倍

図表1:職業別有効求人倍率(看護師、准看護師)

職業別有効求人倍率

出典:看護師等(看護職員)の確保を巡る状況|厚生労働省

  

厚生労働省が公開している第195回職業安定分科会の資料「看護師等(看護職員)の確保を巡る状況」では、「2022年度の看護師・准看護師の有効求人倍率は2.2倍」とされています。

 

上図にあるように、2018年度以降、看護師・准看護師の有効求人倍率は2.0倍以上で推移しています。その他の職業が1.0倍前後で推移しているため、看護業界は有効求人倍率が高く、需要に対して供給が落いつかず、人手不足状態であるといえます。

 

2.なぜ新卒看護師3年以内の定着率が低いのか

書類の書き方を説明する女性看護師

      

病院での自分の経験や、公表されているデータを鑑みると、新卒看護師3年以内の定着率が低い理由として、以下の4つが考えられます。

  

1. 業務負担の増加

2. キャリアアップについて考え始める

3. 結婚・出産などのライフステージの変化

4. 人間関係の悩み

  

それぞれの要因について具体的にみていきましょう。

 

1.業務負担の増加

日本医療労働組合連合会が公開した資料「2022 年看護職員の労働実態調査」によると、「1年前と比較した仕事量が大幅に増えた・若干増えたと感じた看護師は58%」とされています。患者さんの高齢化や重症化などへの対応により、仕事量が増えたと感じている看護師が半数以上という状況にあります。

 

多くの病院では、新卒看護師は3年以内で、リーダーとして病棟全体の管理業務に携わることがあります。また、自分より後に入職した新人を対象にプリセプターとなって後輩の育成を担うこともあるでしょう。

しかし、看護師は自身の業務で手一杯になりやすいものです。新卒3年以内で、ようやく職場に慣れたころにリーダーやプリセプターの業務が加わると、業務負担を感じやすくなるかもしれません。

 

筆者が勤務していた病院でも、リーダー業務を始めたばかりの看護師は精神的にも負担を感じているようでした。というのも、リーダーになると、自身で判断しなければならない機会が増えるからです。リーダーになる前は、先輩に逐一、相談や報告ができるため、安心して仕事ができます。しかし、リーダーの役割を担うとなれば、独り立ちして対応せねばならず、責任が重くなります。実際に「守られる安心感がなくて不安」「わからないこともあるのに急にひとりになったから怖い」などの声がありました。

先に紹介した資料によると、看護職員全体で「仕事を辞めたい」と考える看護師が約8割とされています。多くの業務負担があるなかでも安心して仕事ができる環境にすることも看護師定着を進めるうえで大切な取り組みといえるでしょう。

  

2. キャリアアップについて考え始める

 

 

会員登録されている方のみ続きをお読みいただけます。

この記事を評価する

  • このエントリーをはてなブックマークに追加

TOP