2024.02.15
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【目的別】薬局運営において導入したい調剤機器・アプリは?導入するメリットや注意点

利益を取りこぼさない 薬局マネジメント経営~Vol.8

    

編集部より

調剤報酬改定のたびにマネジメントの工夫が必要となる薬局や調剤併設ドラッグストア。「物」から「人」へのシフトが鮮明になり、地域の医療情報集積とコミュニケーションを担う役割も求められています。地域社会や患者さんのニーズを満たす新しい試みを続けていくためにも、薬局は安定した経営を続けていくことが必要と言えるでしょう。

 

この連載では、大手薬局グループのエリアマネジャー補佐 篠原奨規(しのはら しょうき)さんが、薬局で実際は行っているのに請求できていない報酬の把握や、見落とされがちな業務の工夫など、利益を取りこぼさないようにする薬局マネジメントについて解説します。

 

 第8回は、「【目的別】薬局運営において導入したい調剤機器・アプリは?導入するメリットや注意点」です。本記事では、業務効率化に役立ったり、対人業務をサポートする調剤機器やアプリなどを用途ごとに具体名を挙げて解説します

 

執筆/篠原奨規 管理薬剤師 薬局グループ エリアマネジャー補佐

編集/メディカルサポネット編集部

   

      
パソコンの前で腕組みをする薬剤師

      

近年、調剤業務をサポートするさまざまな調剤機器が開発され、導入による業務効率化や生産性向上が期待されています。多くの薬局で調剤機器の導入が進み、令和2年9月時点で約7~9割の薬局で分包機や薬袋プリンターが使用されている状況にあります。しかし、これから新たに機器を導入するとなると、どのようなものを選ぶべきか悩むかもしれません。本記事では、調剤機器やアプリを導入するメリットや注意点とともに、導入したい調剤機器やアプリについて、目的別に具体名を挙げて紹介します。

       

1. 業務効率化に役立つ「調剤機器」とは

機械の上をカプセルが運ばれている様子

    

調剤機器とは、薬剤師が行う調剤業務(PTPシートのピッキング・散剤や水剤の調製・一包化調剤・鑑査業務など)をサポートする機器のことです。これまで人の手で行っていた調剤業務に調剤機器を導入することで、業務の効率化・生産性向上につながります。具体例として、ピッキングシステムや自動錠剤分包機、監査支援システムなどがあげられます。

 

調剤機器の導入を国が推奨する背景

厚生労働省が作成した資料「医療安全を前提とした対物業務の効率化について」によると、現状の薬局薬剤師は処方せんへの対応といった対物業務が多い一方で、対人業務が不十分であることが課題とされています。そこで対人業務の時間を確保に向けた、調剤機器の積極的活用が求められています。調剤機器の活用によって対物業務を効率化し、調剤後のフォローやポリファーマシーへの対応、健康サポートなどの対人業務を充実させることが今後の医療の質向上につながるでしょう。また近年では電子お薬手帳をはじめとする調剤アプリも普及しており、対人業務を充実させるために積極的な活用が求められています。

 

図表1:国が示す薬局薬剤師の目指すべき業務配分(イメージ)

国が示す薬局薬剤師の目指すべき業務配分のイメージ図

出典:厚生労働省「医療安全を前提とした対物業務の効率化について

 

2. 薬局に調剤機器・アプリを導入するメリット

電卓を持ってOKポーズをする白衣を着た女性

 

調剤機器や支援アプリを薬局に導入すると、どのようなメリットがあるのでしょうか。

 

薬剤師が対人業務を行う時間を確保できる

先にもお伝えしたとおり、薬局薬剤師は対物業務に時間を費やしており対人業務を行う時間を確保しにくい状況です。厚生労働省の資料「薬剤師の需給動向把握事業における調査結果概要」によると、薬局薬剤師1人あたりの行う1日の業務のうち、対物業務に以下の時間を費やしていることが分かります。

  • 処方せん入力作業:52分9秒
  • 計数調剤:1時間11分38秒
  • 計数調剤(水剤・散剤など):27分15秒
  • 一包化:49分1秒

 

業務の効率化に向けて調剤機器をうまく活用することで、上記をはじめとする対物業務にかかる時間を短縮できます。例えば、大手調剤薬局チェーンである日本調剤株式会社の報告によると、一包化業務において調剤と鑑査に通常11分5秒かかっていたところ、自動錠剤分包機と錠剤鑑査支援システムを導入した結果、4分45秒に短縮できたという報告があります。対物業務にかかる時間を減らすことで、薬剤師が対人業務を行う時間を確保しやすくなるでしょう。

  

効率化・対人業務の充実による利益アップ

調剤機器の導入によって業務効率化が進めば、従業員の残業時間が減り人件費の削減につながるため利益アップにつながります。また対物業務の効率化により捻出された時間を使って対人業務を強化し、加算算定が増加すれば売上・利益アップが期待できます。

  

調剤過誤の防止に役立つ

誤った薬を渡してしまったり、薬剤調製を間違えてしまったりするなど、調剤の間違いによって生じる調剤過誤はできるだけ避けたいところです。調剤過誤が起きてしまうと、トラブルの原因になったり、ときには患者さんの健康被害につながったりする可能性もあるでしょう。その点、ピッキングシステムや鑑査システムなどの調剤機器を活用すれば、ヒューマンエラーの発生リスクを減らすことができ、調剤の正確性が向上します。

 

3. 調剤機器導入時に懸念されるデメリットと注意点

タブレットを持って悩んでいる女性薬剤師     

調剤機器は価格が数万円と手軽に購入できるものから、数千万円と高額なものまでさまざまです。調剤機器を一括購入すると多くの資金を失うことになり、かえって経営が不安定になる可能性があります。またレンタル契約の場合でも、毎月の固定費が発生するため利益を出しにくくなるでしょう。

そのため調剤機器導入にあたっては、費用に見合う効果を得られるのか検証しておく必要があります。まずは薬局でどのような課題を抱えているかを把握しましょう。課題を解決するためにどのような調剤機器が有効なのか、費用対効果は十分かをメーカーに確認したうえで導入を検討し、十分な効果が得られると判断できるようなら導入を進めるとよいでしょう。

次の章からは目的別に、役立つ調剤機器を具体的に紹介します。

  

4. 調剤業務支援を目的とする調剤機器

乳鉢と乳棒を使って調剤をしている薬剤師   

まず、薬剤師が行う調剤業務を効率化するために効果的な調剤機器を紹介します。

 

 

 

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