編集部より

近年、医療機関のサイバー攻撃や事故が多発しており、その対応を含めた医療情報システムの安全管理に関するガイドラインの改訂が去年行われました。また、地震など災害時にも、バックアップの有無やシステムへのアクセス可能か不可能かが患者さんの生死を分けることがあります。

病院で情報システム担当・院内SEをしながら自部署の採用も担当する医療情報技師、診療情報管理士小坂佑士さんが、実際の経験を踏まえた中小病院の事例を中心に、病院のシステム管理職がこれだけは持っていたいスキルと特性について解説します。 

文中では具体的な知識・適性の例や資格名を挙げていますので、参考にしてください。

 

執筆/小坂佑士 医療法人社団久英会 情報システム担当

 (医療情報技師、診療情報管理士、医療経営士3級、応用情報技術者)

編集/メディカルサポネット編集部

   

目次

   

 病院のシステム担当者は職員が使用するパソコンなどの端末から、オンプレミスで設置しているサーバ、ネットワークのスイッチやLAN配線の運用管理を行います。停電や災害・セキュリティ事故の発生時も内外に向けた対応を求められます。

  

各種システムの導入や更新、それらの予算策定、近年ではサイバーリスク保険も守備範囲となってきています。ひとりで全てを対応するわけではありませんが、対応する分野は広いです。

 「当事者」としてのお話にも通じるのですが、「当事者」意識は実際に使用される状況を考えた気遣いができるかできないかに現れると思います。先のことを気にして人の役に立とうと思えるか、必要な時にすぐ取り掛かれるように準備をしておけるか。これは相手のことや周囲のことを考えられるかということです。

セキュリティ事故のニュースを見たときに、自分がどう思うか。どうやってその対応を行って着地させたか、どういう方法を用いたのか。自分の引き出しを増やそうと調べたり、話を聞きに行ったり、したいと思うのか。対応できるようになりたいと思うのか。適性や個性はそのようなところに出てくると思います。

 今回はそのような知識やそれらを得ていくためのヒントをご紹介します。

 

図表1:病院のシステム管理職が取っておくといい資格のラダー

病院のシステム管理職が取っておくといい資格のラダー

      

スキル編 1.医療法、診療報酬、施設基準の知識

 システム担当者として採用されたならば、最初はパソコンやプリンタが動かないといった簡単な対応から入るでしょう。そのうち電子カルテの操作方法から、帳票の中身や表示内容を変えてほしいという要望に対応することがあります。ここで、そのまま言われた通りやっては良くないときがあります。医療法などの法律で決められた項目や記載事項があるためです。

 

そのため、ある程度の医療法や施設基準などの知識を知っておく必要があります。例えば、診療報酬点数早見表に様式や記載していなければならない項目が書かれています。

ですから、このようなときに根拠となる法律・様式などが、どこに書いてあるのか、何を調べたらよいか、大まかにでも把握をしておく必要があります。そのためにも医療事務診療情報管理士の学習を通して、様式や加算などの成り立ちや条件を少しずつでも知ることは病院のシステム担当者の業務としても必要なことだと言えます。診療報酬も2年ごとに変わるし、個人情報保護法もいつまでも同じではありません。気づかないうちに義務化になっていることがあるかもしれません。日ごろからの情報収集が大切ですが、楽しんで継続できるように習慣づけたいです。

 

【面接時の確認例】

・システムだけでなく医療の知識を得るためにやっていることはありますか。

 【医療関係の雑誌を読む、資格の勉強等の姿勢を確認したい】

    

スキル編 2.電話回線、電気・電子、建築の知識

インターネットを使用するためには光回線や電話回線の契約を結びます。一般家庭とは異なり、病院は鉄筋コンクリート造で複数階の建物が一般的です。ビルとまでは行きませんが3~4階でエレベーターもあります。そのため、建物に縦の配管があります。これがEPS(Electric Pipe Space / Shaft)と呼ばれます。一般的には1階にMDF(Main Distributing Frame:主配線盤)があり、その中にPBX(構内電話交換機)や光回線のONU(回線終端装置)が設置されています。そこを基点に上階のEPS内にIDF(Intermediate Distribution Frame:中間配線盤)があり、内部にはその階のL2スイッチ(フロアスイッチと呼ばれることもある)が設置されLANのネットワークを施設全体へ張り巡らせています。

   

これらの設備を管理するために設備担当者が配置されていればよいですが、中小規模病院だと配置されていることは少なく感じます。そのため、システム担当者はこのような設備についても対応する必要が出てきます。BCP作成や計画停電の際に自施設がどのようになっているか確認をしておきましょう。近年は大雨で水害を受ける地域も増えていることから、サーバ室やMDFなどの電気設備は設置位置を上部に移動するなどの対応をしておきたいです。

また、サーバ室は施設の非常用電源に接続しておきたいです。災害時に対応できるか設備点検のため計画停電を行う機会は増えています。そのたびにサーバ停止を行うのはシステム担当者としても負担になります。そのため停電中も非常用電源の発電機に燃料を継ぎ足して動作させ続けておきたいです。停電時にはUPS(無停電電源装置)の動作確認や不要な機器の撤去を行う機会でもあります。

 

 古い建物になると、LANなどのネットワーク設備を使用することを考慮していない構造になっているため、EPSが無い場合もあります。そんな時にも管理職なら、何とか対応しなければいけません。自施設のネットワーク配線経路や建物の構造を把握し、有事に対応できるように準備をしたいです。

   

【面接時の確認例】

・毎年停電を行うが、システム担当者としてどのような準備や当日の行動が必要ですか。

 

IDFやMDFの位置IDFやMDFの位置

  

狭いMDFに設置されたPBXや機器の例狭いMDFに設置されたPBXや機器の例

      

適性編 1.「当事者」として考える

自分のことだけをしていればよいという考えでは、組織はうまく運営し、成長し続けることは難しいと感じています。どうしても、誰のものでもない仕事や新しい物事がでてくると、誰かが手を上げて動かないといけないです。いわゆる「ファーストペンギン」の考えです。

 

ですが、誰もがいつでも「ファーストペンギン」になれるわけではありませんし、やってみると以降は「あの人がやってくれる」と思われてしまう、という経験をされた人も多いでしょう。こういうときにどうすればよいかと話をすると、

 

 

会員登録されている方のみ続きをお読みいただけます。

この記事を評価する

  • このエントリーをはてなブックマークに追加

TOP