編集部より

病院の現役事務長藤井将志さんが、病院の評価制度について解説します。現在どのような制度を取り入れて運用しているのか、前回記事の人事評価制度失敗事例と合わせてご覧ください。

 

執筆/藤井将志(特定医療法人谷田会 谷田病院 事務部長 藤井将志)

編集/メディカルサポネット編集部

  

  

組織内の良いことに焦点を当てる

前回記事でも書いたのですが、病院職員の評価は難しいものです。

意義のある人事評価制度はどんなものか考えたり、幹部メンバーとディスカッションしたりしているうちに人事評価制度が止まったまま数年が経ってしまいました。その間、人事評価制度としては運用はしてませんが、良い行動を評価するという視点による制度としては「みんパチ」と「ありがとう賞与」があります。

 

当院では、毎月1回の全体研修があります。法定研修や各部署の取り組みなどがコンテンツです。その時に、良いことをした人をみんなの前で拍手して称えること(=みんパチ)をしています。推薦は所属長に限らず誰からでもでき、アンケートフォームでいつでも送ることができます(図表1参照)。どんな些細なことでも良く、患者さんに丁寧に案内していた、この資格取得に頑張った、雨の日に傘をさしてあげた、良い挨拶ができていた、などの内容で推薦されます。みんなの前で拍手され、1000円分のクオカードが提供されます。過去には、赤飯の作り方を教えてくれた患者さん、電子カルテ導入に頑張ってくれたベンダーさん、患者さんへのみかんをくれた職員の家族、などもみんパチにノミネートされました。

  

図表1誰でも推薦できるみんパチフォーム

誰でも推薦できるみんパチフォーム

  

 

ありがとう賞与は、期末賞与の前に、職員ひとりにつき2枚のメッセージカードが支給され、自分以外の職員にありがとうのメッセージを送ることができます(図表2参照)。カードは集められ所属長から渡されますが、人事部門で集計され、期末賞与に1枚あたり1000円加算されます。前述のみんパチもそうですが、お金よりも、賞賛されることや、感謝を伝えられることが、最大の喜びになっているようです。

 

図表2:1人2枚贈れるありがとう賞与

1人2枚贈れるありがとう賞与

     

 

これらの仕組みも人の行動を評価するという点では、人事評価のような要素もあります。しかし、対象は誰が誰に対しても推薦できたり、カードを贈れるので、360度評価のような要素があります。

 

人事評価制度のような硬い仕組みではないので、誰でも気軽に関わることができます。恨み妬みはそこには発生しにくいです。根底にあるのが、褒め讃えたいとか、感謝したいという気持ちであり、それを表す仕組みなので人事評価制度よりポジティブな思考で向き合えるでしょう。人事評価面談の嫌な時間とは正反対な気持ちとなります。

 

みんパチは毎月何件も発表されることを求めており、敷居をとにかく下げています。ちらほらと、いろいろな会議等の会話の中で「これ、みんパチにしない?」といったやり取りが聞かれるようになってきました。

 

期末賞与の配分方法

法人全体の業績が良い時の利益分配について、決算時に当期利益の配分方法を決めています。3分の1は職員に期末賞与として職員に還元し、3分の1は施設の改修など患者さんに還元し、残りの3分の1 は

 

 

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