2023.09.11
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重複投薬・相互作用等防止加算を増やすには?算定が進まない理由や対策を解説

利益を取りこぼさない 薬局マネジメント経営~Vol.3

利益を取りこぼさない 薬局マネジメント経営

   

編集部より

調剤報酬改定のたびにマネジメントの工夫が必要となる薬局や調剤併設ドラッグストア。「物」から「人」へのシフトが鮮明になり、地域の医療情報集積とコミュニケーションを担う役割も求められています。地域社会や患者さんのニーズを満たす新しい試みを続けていくためにも、薬局は安定した経営を続けていくことが必要と言えるでしょう。

  

この連載では、大手薬局グループのエリアマネジャー補佐 篠原奨規(しのはら しょうき)さんが、薬局で実際は行っているのに請求できていない報酬の把握や、見落とされがちな業務の工夫など、利益を取りこぼさないようにする薬局マネジメントについて解説します。

  

第3回は、薬剤師が疑義照会をすることで算定できる「重複投薬・相互作用等防止加算」について説明します。加算算定するための要点や、これが地域医療に貢献する薬局が評価される「地域支援体制加算」の実績要件になっていること、実際に算定するためにはどうすればいいかなども後半で解説します。

行うことによって患者さんの健康向上に役立つ重複投薬・相互作用等防止にぜひ取り組んでみてください。

 

執筆/篠原奨規 管理薬剤師 薬局グループ エリアマネジャー補佐

編集/メディカルサポネット編集部

   

      
女性薬剤師がスマートフォンを手に電話をしている写真

      

薬剤師が疑義照会をすることで算定できる「重複投薬・相互作用等防止加算」。利益確保のためには、適切に算定したいところですが、実際にはなかなか取り組めずに困っている方もいるかもしれません。この記事では、重複投薬・相互作用等防止加算を正しく算定するために、算定要件や点数について図表を用いてわかりやすく解説します。さらに、加算の算定を推進するために知っておきたい、算定が進まない理由や具体的な対策をお伝えします。

      

1. 重複投薬・相互作用等防止加算とは

たくさんの薬のシートが並んでいる様子

   

まずは、重複投薬・相互作用等防止加算の概要について確認しておきましょう。また、薬局の算定状況について現状をお伝えします。

    

重複投薬・相互作用等防止加算の概要

「重複投薬・相互作用等防止加算」とは、調剤業務の1つである「疑義照会」を評価するための加算です。患者さんから受け取った処方せんに対して疑義照会を行い、処方内容に変更があった場合に算定できます。

疑義照会について、薬剤師法第24条では「薬剤師は、処方せん中に疑わしい点があるときは、その処方せんを交付した医師、歯科医師又は獣医師に問い合わせて、その疑わしい点を確かめた後でなければ、これによって調剤してはならない。」と定められており、薬剤師にとって避けられない業務と言えます。また、2015年に厚生労働省が策定した「患者のための薬局ビジョン」では、対物業務から対人業務へと、薬局薬剤師の働き方の変化が求められています。このような背景において、対人業務である疑義照会を評価する「重複投薬・相互作用等防止加算」は、国の目指す薬剤師に近づくために積極的に取り組んでいきたい加算の1つと言えるでしょう。

重複投薬・相互作用等防止加算の算定状況

2022年に薬局を対象に行われた日本保険薬局の調査によると、受付10,000件当たりの算定回数は、「重複投薬・相互作用等防止加算(残薬以外)」が35.01件、「重複投薬・相互作用等防止加算(残薬)」が41. 19件でした。前年比が、それぞれ95.8%、93.6%であり、薬局全体の傾向として算定件数が減少していることがわかります。

重複投薬・相互作用等防止加算の算定を増やす経営上のメリット

「重複投薬・相互作用等防止加算」の算定を増やすと、利益アップにつながります。重複投薬・相互作用等防止加算では疑義照会の内容によって30点もしくは40点を算定できます。1件あたりの利益はそれほど大きくはないものの、継続して算定に着手すると安定した利益につながるでしょう。

また、「重複投薬・相互作用等防止加算」は地域医療に貢献する薬局が評価される「地域支援体制加算」の実績要件になっており、処方せん受付1万回あたり、40回の実績が必要です。調剤基本料に加算される地域支援体制加算は、受け付けた全ての処方せんに対して加算されるため、大幅な利益アップが見込めます。

  

2. 重複投薬・相互作用等防止加算の算定要件 

ノートパソコンを開きながら筆記する医師  

「重複投薬・相互作用等防止加算」は、薬歴情報や患者さんからの情報を基に、処方医に対して処方内容の確認を行い、処方変更が行われたときに処方せん受付1回につき算定できます。

疑義照会の内容によって算定できる項目が異なり、重複投薬や相互作用など残薬調整以外について疑義照会を行った場合は、重複投薬・相互作用等防止加算(残薬以外)40点を、残薬調整について疑義照会を行った場合、重複投薬・相互作用等防止加算(残薬)30点を算定できます(2023年調剤報酬点数表より)。

   

残薬調整に係るもの以外に対して疑義照会する内容としては、以下のものがあげられます。

併用薬との重複投薬(薬理作用が類似する場合も含む)

併用薬、飲食物等との相互作用

そのほか薬学的観点から必要と認める事項

    

加算を算定する場合には、疑義照会を行った内容の要点や変更内容を薬歴に記載する必要があります。同時に複数の処方せんを受け付け、複数の処方せんに対して疑義照会を行い処方変更があった場合や、1枚の処方せんに対して複数の項目が変更となった場合であっても、1回に限り算定できます。

調剤管理料を算定していない場合は算定できない点に注意が必要です。

   

また、以下の指導料や加算との併算定はできません。

在宅患者訪問薬剤管理指導料

在宅患者緊急訪問薬剤管理指導料

在宅患者緊急時等共同指導料

居宅療養管理指導費又は介護予防居宅療養管理指導費

   

重複投薬・相互作用等防止加算の算定における要点を以下にまとめました。

        

重複投薬・相互作用等防止加算(残薬以外) 重複投薬・相互作用等防止加算(残薬)
算定要件

薬歴情報や患者さんからの情報を基に、処方医に対して処方内容の確認を行い、処方変更が行われた場合に算定

•疑義照会を行った内容の要点や変更内容を薬歴に記載

算定できない事例

•調剤管理料を算定していない場合

•在宅患者訪問薬剤管理指導料、在宅患者緊急訪問薬剤管理指導料、在宅患者緊急時等共同指導料、居宅療養管理指導費又は介護予防居宅療養管理指導費を算定している場合

疑義照会内容

•併用薬との重複投薬(薬理作用が類似する場合も含む)

•併用薬、飲食物等との相互作用

•そのほか薬学的観点から必要と認める事項

残薬調整
算定点数 40点 30点
注意事項

•複数の項目が変更となった場合であっても、重複しての算定は不可

•同時に複数の処方せんを受け付け、複数の処方せんに対して疑義照会を行い処方変更があった場合であっても、1回に限り算定

保険調剤の理解のために(令和5年度)」「調剤報酬点数表(令和5年4月1日施行) 」に基づき、筆者が作成

3. 重複投薬・相互作用等防止加算の算定が進まない理由

手を顎に当て、悩んでいる様子の女性薬剤師  

「重複投薬・相互作用等防止加算」の算定が進まない理由は、薬局によってさまざまです。なかでも想定される主な理由を3つ解説します。

   

   

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