2023.07.13
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現役病院事務長が語る 医療機関におけるDXの問題点と成功事例

     

編集部より

医療機関でも、業務の電子化(医療DX)が進行しています。病院のデジタルトランスフォーメーションに対応しようとした際、病院やクリニックでは何が原因で失敗しやすく、どうやってそれを乗り越えて導入に成功しているのか。実際に「使いやすさや費用対効果に悩みながら医療DXを進めている」という、谷田病院事務長の藤井将志さんが解説します。

 

執筆/藤井将志(特定医療法人谷田会 谷田病院 事務部長 藤井将志)

編集/メディカルサポネット編集部

  

   

1.医療現場におけるDXとは何か

本稿では、まず、医療現場におけるDXに関する状況を考えてみます。よくDXと叫ばれていますが、何を持ってDXとするか、一般的な定義はいろいろあるでしょうが、当院でディスカッションをする時は以下の2つに分けて考えるようにしています。

  

①プロセスのDX化

業務プロセスの一部がDXにより簡素化されたり、そもそもプロセスが不要になったり、よりミスが減ったりするようなこと。例えば、紙で回していた伺い書をデジタルのワークフローにする、勤務表をAIで自動で作る、電話のコミュニケーションをチャットにする、などです。

    

②医療のDX化

収集されたデータをもとに、AIにより医療の質向上や看護や介護プロセスの質の向上につながること。例えば、AIを利用した画像診断の支援や、排尿や排泄、転倒の予測、アウトカムに基づく医療者の評価、などです。

  

≪表:医療現場のDXまとめ≫ 

  

①のDXも革新的なことではありますが、最終的には、②のDXこそが医療や看護、介護の質の向上につながる画期的なことだと考えています。

①や②を求めて、医療現場でDX化を推進しようとすると、様々な壁にぶち当たります。最も大きな間違いが、DXを掲げながら医療者に「入力」の手間をかけてしまうことです。

プロセスを簡素化しようとして導入しているにもかかわらず、簡素化されていないケース。医療データが必要だからという理由で、看護師が電子カルテに入力しないといけない項目が増えるケース。などを犯してしまうことです。

当院の場合、経営ビジョンに掲げているのが「患者さんに寄り添う」ことです。DXを推進することで、患者さんに寄り添う時間が少なくなってしまっては本末転倒です。

   

医療現場の細かい作業まで知らない経営幹部やIT部門が主導してシステムを導入してしまう。一部の医療機関だけをモデルケースとし、製品やシステムを開発してしまう。そうすると、本当にリアルな現場で使いモノにならない”名ばかりDX”が起こってしまいます。

   

≪ポストイットが貼られているディスプレイ≫

  

この写真は当院のスタッフステーションにあるディスプレイです。その日のスタッフの出勤状況や患者さんについての情報が可視化されたものです。

よく見ると

 

   

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