2023.06.12
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医師の働き方改革とは?制度や対策、課題について詳しく解説

何がどう変わる?取り組むべきこととは?

医師の働き方改革とは?制度や対策、課題について詳しく解説

 

 

編集部より

すべての働く人々における時間外労働の上限規制などを定めた、一連の働き方改革関連法は2019年4月から適用されていますが、業務内容が特殊である医師については5年間の猶予期間が設けられていました。

その猶予期間が終わる2024年3月末が迫る中、医療機関は働き方改革関連法に対応した医師の働き方改革が急務となっています。

この記事では、医師の働き方改革が求められた背景と医師の働き方の現状のほか、働き方改革関連法に対応するための対策について解説。医師の働き方改革が進みづらい背景についても説明します。

 

編集/メディカルサポネット編集部

 

目次

  • 1.  医師の働き方改革とは医師の働き方を適正化する取り組みのこと
  • 2.  医師の働き方改革が推進される背景
  • 3.  医師の働き方の現状
  • 4.  医師の働き方改革に必要な対策とは
  • 5.  医師の働き方改革を実現する組織改革は、メディカルサポネットに相談を

 

医師の働き方改革とは医師の働き方を適正化する取り組みのこと

医師の働き方改革とは、2024年4月から一連の働き方改革関連法が医師にも順次適用されるのを受けて進められている、医師の働き方の適性化に向けた取り組みのことです。その内容は、2021年5月に公布された「良質かつ適切な医療を効率的に提供する体制の確保を推進するための医療法等の一部を改正する法律」にもとづいており、「勤務医の時間外労働の年間上限は原則960時間とする」「連続勤務時間の制限、長時間勤務医師の面接指導などで、勤務医の健康確保を目指す」など、医師の労働時間に関する取り決めを中心としています。

まずは、2024年4月から適用される、医師の時間外労働の規制基準を見てみましょう。

 

20244月から適用される医師の時間外労働の上限規制と健康確保措置

2024年4月から適用される医師の時間外労働の上限規制と健康確保措置

 

時間外労働の年間上限時間は、原則としてA水準となります。ただし、その医療機関が所在する地域の医療提供体制を確保するため(B水準)、または医療機関が医師の派遣を通じてその地域の医療体制を確保するため(連携B水準)、または技能の習得・向上を集中的に行わせるため(C-1水準、C-2水準)に年960時間をやむをえず超えてしまう場合は、都道府県が各医療機関の労務管理体制を確認して医療機関の指定を行うことで、上限を年間1,860時間とできる仕組みです。

 

これに伴い、医師の健康を確保するために、時間外労働時間が月100時間以上になると見込まれる医師への面接指導が義務とされ、休息時間の確保が義務または努力義務とされています。

 

 

医師の働き方改革が推進される背景

医師の働き方改革が進められる背景には、医療が医師の長時間労働によって支えられている現状があります。医師は長時間労働が常態化しており、休日の確保も困難なのが現状です。問題となっている医師の労働環境の実態を見てみましょう。

 

長時間労働が常態化

医師の長時間労働は常態化しており、深刻な状況にあります。厚生労働省の「令和元年 医師の勤務実態調査」によると、先程ご紹介した時間外労働時間上限規制のA水準(休日含め年間960時間)を超えた割合は37.8%に上り、回答者の上位10%は年間時間外労働時間1,824時間を超えていました。

 

出典:厚生労働省「令和元年 医師の勤務実態調査

 

休日の確保が困難

厚生労働省が作成した資料「医師の働き方改革について」(2019年6月)によると、2017年に実施された厚労省の委託調査では、最長の連続勤務時間が32時間以上となった割合は約6割に上り、勤務間のインターバル時間が9時間未満だった割合は4割強。いずれも、高い水準であることがわかりました。

このような長時間勤務・休日の確保が困難な状況下では、医師のフィジカル・メンタル両面での負担が大きく、医師の退職による医師不足やケアレスミス、医療事故等の発生が危惧されます。

 

 

医師の働き方の現状

医師の長時間労働が常態化している背景には、「救急搬送を含め診療時間外に診療が必要な患者や、所定の勤務時間内に対応しきれない長時間の手術、外来の患者数の多さ」、「医師はそれらに応えなくてはいけないとする応召義務の存在」、「タスク・シフティング(業務の移管)が十分に進んでいない現場の勤務環境」、「求めに応じ質の高い医療を提供したいという個々の医師の職業意識の高さ」、「患者側の都合により診療時間外での患者説明に対応せざるをえない、診療時間外の看取り時でも主治医がいることが求められる」など、多様な状況があります。

その結果、特に20~30代の若い医師が長時間労働を余儀なくされているのが実情です。医師の働き方改革は、そんな現状を変え、持続可能な医療を維持するために必要不可欠なものといえます。

  

医師の働き方改革については、こちらの記事もご覧ください。

医師の働き方改革は医療の質を上げるチャンス ーーー2024年4月の施行を前に本質を理解する

 

医師の働き方改革を進めるには、多くの壁が存在します。ここでは、それらの解決すべき課題について見ていきましょう。

 

医師それぞれが持つ労働環境に対する意識の差

長時間労働が当たり前となっているベテラン医師と、効率的に働きたい若手医師のあいだには、労働環境に対する意識に差があります。

ここで起きるのが、集団同調性バイアスの問題です。「指導医が夜遅くまで働いているのに研修医が先に帰るのは失礼だ」といった空気がまん延していると、働き方改革は困難に。年齢や経験にかかわらず、労働環境を改善する意識を持つことが求められます。

 

適切な業務シェアの難しさ

医療現場では、チーム医療が取り入れられています。役割分担が進んでいるはずですが、責任領域や専門性の問題、引継ぎをする時間が惜しいなどの理由から、ほかのスタッフに業務の適切なバトンパスができていないことも多いようです。これでは、チーム医療に必要な業務の連携・補完ができないので、タスクシフトやタスクシェアをしっかりと進める必要があります。

 

幅広く煩雑な大量の業務

医師の業務は患者の診察・治療のほか、診断書などの事務作業、研修医の指導、臨床研修など幅広く、その量も膨大です。そんな中、ただ時間外労働時間の上限を設定しても、時間内に業務を完了するのは難しいものでしょう。救急現場での情報共有を特定の場所への紙の貼付に統一したり、病棟や通常診療のデジタル化による業務の効率化や、BPR(ビジネスプロセス・リエンジニアリング)による業務プロセスの改革など、医師の業務を時間内で完結させるための組織としての努力、アイディアが求められます。

 

インターバルがない勤務体制

医療機関では慢性的な医師の人手不足やずさんな勤怠管理、時間外労働の設定の曖昧さを原因に、インターバルなしでの勤務が常態化しているケースが多く見られます。これでは、連続勤務時間の上限を超過するだけでなく、医師の心身の健康にも悪影響です。

働き方改革を進めるには、看護師のような交代制といった勤務体制の整備が求められます。

 

予測不能な緊急時の対応

新型コロナウイルス感染症のまん延といった予測不能の事態への対応は、平常時からガイドラインを設定しておくことが重要です。ガイドラインがないと場当たり的な対応となり、結果的に医師の長時間労働と疲弊を招いてしまいます。

働き方改革を進める上では、平常時だけでなく、緊急時の体制もあらかじめ検討しておくことが求められます。

 

 

医師の働き方改革に必要な対策とは?

上記のような課題を乗り越えて働き方改革を進めるために、医療機関が取り組むべきことや検討すべきことは多岐にわたります。中でも、まず必要とされるのは下記の5つです。

 

医師の出退勤時間の把握

医療機関として医師の出退勤時間を把握していない場合、まずは当直を含め、医師の出退勤時間を把握することから始めましょう。勤怠管理システムの導入は、単に労働時間の管理だけでなく、データを分析することでオーバーワークの抑制にもつながります。

 

医師の出退勤時間の把握

医療機関として医師の出退勤時間を把握していない場合、まずは当直を含め、医師の出退勤時間を把握することから始めましょう。勤怠管理システムの導入は、単に労働時間の管理だけでなく、データを分析することでオーバーワークの抑制にもつながります。

 

36協定の見直し

医師の労働時間の上限は、現状では36(サブロク)協定の合意内容となりますが、2024年4月からは、法律上の上限としてA~C基準が加わります。

まず現在の段階で、医師と36協定を締結しているか、その内容が適切かをチェックし、36協定で定められた時間外労働時間が守られているかを把握。守られていない場合は、その原因特定と解決策を検討し、実施することが大切です。

 

産業保健総合支援センターの活用

全国47都道府県に設置された産業保健総合支援センターでは、専門スタッフが医療期間の人事労務担当者向けに、メンタルヘルス対策をはじめとする産業保健に関する相談、研修、情報提供などの支援を無料で行っています。対策の進め方のアドバイスや成功事例も得られますので、活用してみるといいでしょう。

 

女性医師への支援

女性医師は、出産や育児、介護などに対して職場のシステムが整っていないことによって、長期的なキャリア形成が難しいケースが多く見られます。勤務時間や休日取得制度の見直し、業務効率化による負担の軽減などを進め、多様な働き方を可能にしていくことが大切になります。

 

タスク・シフティングの導入

タスク・シフティングとは、医師が担当している業務のうち、看護師・薬剤師らが対応可能なものを分担することで、医師の業務を軽減する取り組みです。

例えば、カルテの入力や検査手順の説明、入院の説明などは、分担が可能な業務。看護師・薬剤師・事務職にもできるだけ振り分け、AIなどのICT技術による業務の代替えも取り入れつつ、タスク・シフティングを進めるのも一案といえそうです。

 

 

医師の働き方改革を実現する組織改革は、メディカルサポネットに相談を

医師の働き方改革を進めるには、医師本人の意識改革、組織の意識改革、業務体制の見直し、業務効率化と、多様な取り組みが欠かせません。

メディカルサポネットは、業務効率化に役立つ情報や実例を多数発信。システム導入などのアドバイスも行っています。業務効率化をお考えなら、ぜひメディカルサポネットをご利用ください。

 

 
 

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