2023.05.11
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オリィ研究所吉藤さんの挑戦 分身ロボットでカフェ出勤! 障害者雇用を超え自宅から活躍できる社会へ

  

編集部より

東京・日本橋にある「分身ロボットカフェDAWN ver.β」。ここでは一般にはアバターともいわれる多くの「分身ロボット」がスタッフとして勤務していますが、それらを遠隔操作しているのは全身が動かせない難病患者を含む外出困難者の皆さんです。同カフェの運営、そして分身ロボットなどのプロダクト開発を手がけてきた株式会社オリィ研究所の代表取締役所長 吉藤健太朗(吉藤オリィ)さんにインタビューし、事業に込めた思いや、より多様な人材が活躍できる社会のあり方について伺いました。

 

取材・文/中澤 仁美(ナレッジリング)

撮影/和知 明(株式会社BrightEN photo)

編集/メディカルサポネット編集部

   

目次

  • 1.  社会に出るための「もう一つの体」を求めて
  • 2.  OriHimeだから実現できる新時代の働き方
  • 3.  「半年早く知っていれば」の悲劇をなくしたい
  • 4.  寝たきりの先にある人生を共につくりたい

   

   

社会に出るための「もう一つの体」を求めて

誰からも必要とされていないと感じるつらさや苦しみを、コミュニケーションテクノロジーで解消したい――。オリィ研究所は、そうした思いから立ち上げた組織です。そもそも私自身が「孤独のつらさ」と向き合ってきた当事者の一人でした。小学校から中学校にかけての3年半、自宅療養のため不登校になり、ほとんど通学することができず、布団の中で天井を眺めて過ごす日々。話せる友達も果たせる役割もほとんどなく、家族に迷惑をかけ続けてしまうやるせなさに追い込まれていきました。幸いにも中学3 年生で学校に復帰できましたが、私よりもさらに長期間、闘病などで孤独と闘っている方が大勢いるという事を、高校時代に知ることになります。

  

そこで、「孤独の解消」をテーマにした研究開発を始めたのです。当初は車椅子というモビリティーに注目していましたが、いくら優れた移動手段があっても病院や自宅から出られない方はいるでしょう。また、高専では人工知能に注目し、相棒ロボットを目指して開発をした時期もあったのですが、AIの話し相手がいれば当時の孤独感が解消できていたかとかつて不登校だった自身と自問自答すると、どこか違う気がしました。そして試行錯誤の末にたどり着いた答えが、「社会に出るためのもう一つの体をつくる」こと。人と人をつなぐ福祉デバイスの開発を進め、2010年に誕生したのが遠隔人型分身コミュニケーションロボットOriHime(オリヒメ)でした。

   

OriHimeはカメラとマイクを搭載した小型ロボット(高さ23cm)で、スマートフォンやタブレットなどを介して人間が操作。頭部を自在に動かせる上、相づちや首振りといったリアクションもボタン一つで可能なので、豊かに感情を表現できる特徴があります。何よりも重視したのは、使用者の「存在そのもの」を伝達できること。ビデオ通話のように話せればよいというのではなく、「その人がそこにいると感じられる」ことをめざし、機能やデザインを精査していきました。

  

「使用者の顔が表に出ないデザイン」を採用したことにも理由があります。例えば、オンラインゲームをプレイするときは

   

   

   

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