2023.03.27
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働き方改革とは?基本の考え方と看護・介護・薬局に関わることを解説

多様な働き方でライフワークバランスの充実を!

働き方改革とは?基本の考え方と看護・介護・薬局に関わることを解説

 

編集部より

2019年4月以降、「働き方改革」に関する法律が順次施行され、さらにコロナ禍による働き方の変化も加わっている現在、大企業だけでなく中小企業、事務所においても「働き方」が重要な経営課題となっています。

今回は、国が進める働き方改革の基本的な考え方と、看護・介護・薬局業界への影響について解説します。

働き方改革とは多様で柔軟な働き方を選択できるようにするための改革のこと

働き方改革とは、政府が掲げる「1億総活躍社会」の実現に向けて、働く人がそれぞれの事情に応じた多様な働き方を選択できる社会を実現するための取り組みのことです。2018年に、8本の労働関連法を改正する「働き方改革を推進するための関係法律の整備に関する法律(働き方改革関連法)」が成立し、2019年4月から順次施行されました。

 

働き方改革は、「生産年齢人口の減少」「働くスタイルの多様化」といった状況に対応するためには、投資やイノベーションによる生産性の向上とともに、就業機会の拡大や働き手が能力を十分に発揮できる環境を作ることが必要だとの考えから導入されたものです。国全体での取り組みであり、「1億総活躍社会実現に向けた最大のチャレンジ」と位置付けられています。

 

労働力不足解消の対応策と働き方改革の2つの柱+高齢者就労促進とは

働き方改革とは?基本の考え方と看護・介護・薬局に関わることを解説

 

少子高齢化の進行により、日本の生産年齢人口(15~64歳:生産活動にいる人口層のこと)は1995年をピークに減少しており、労働力の不足が深刻な社会問題となっています。この問題への対応策としては、「働き手を増やす」「出生率を伸ばす」「労働生産性を高める」の3つを進めることが必要と考えられます。

 

多様で柔軟な働き方が認められ、正社員と非正規社員のあいだに不合理な待遇格差がなくなれば、多くの人が働きやすくなり、子育てとの両立もしやすくなるはず。そこで働き方改革では、労働時間法制の見直しによる多様なワーク・ライフ・バランスの実現と雇用形態に関わらない公正な待遇の確保を二本柱とし、ほかにも「賃金引き上げと労働生産性の向上」「高齢者の就業促進」などを重要な要素として、働く意欲のある高齢者を含む多くの人が働きやすい社会の実現を目指しています。

 

働き方改革における具体的な法令の変更点

働き方改革に関連し、さまざまな法改正が行われました。変更された点のうち、主なものは下記のとおりです。

 

時間外労働の上限規制の導入

時間外労働の上限規制の導入とは、臨時的な特別な事情がある場合を除き、時間外労働の上限が月45時間・年360時間とするもの。

なお、臨時的な特別な事情があって労使が合意する場合でも、「年720時間以内、複数月平均80時間以内、月100時間未満(休日労働を含む)」を超えることはできません。

 

勤務間インターバル制度の導入促進

「勤務間インターバル制度」とは、1日の勤務終了後、翌日の出社までのあいだに一定時間以上の休息時間を設ける制度のこと。その導入が、企業の努力義務となりました。

 

年5日の年次有給休暇の取得

1人1年あたり、5日間の年次有給休暇の取得を企業に義務付けました。年次有給休暇とは、賃金を受け取ることができる休暇日のこと。有給休暇制度を設定するだけではなく、従業員が年5日の有給休暇を必ず取らなければいけなくなったということです。

 

月60時間超の残業の割増賃金率引き上げ

月60時間を超える残業の割増賃金率の引き上げ(25%→50%)が、中小企業で働く人にも適用されました。

 

労働時間の客観的な把握

管理職や裁量労働制適用者を含め、働く人の労働時間の状況を客観的に把握することを企業に義務付けました。これは、始業・就業時間の記録をタイムカードやICカードで行ったり、労働日数・労働時間数などを労働台帳に記入したりすることを指すものです。

 

フレックスタイム制の清算期間延長

フレックスタイム制とは、労働時間の調整が可能な働き方のことで、その清算期間が、1ヵ月から3ヵ月に延長されました。

 

高度プロフェッショナル制度の導入

高度プロフェッショナル制度とは、専門的知識等を有し、職務の範囲が明確で一定の年収要件を満たす労働者を対象に、労使委員会の決議と本人の同意を前提として、企業が働く人の健康を守る措置を行うこと。労働基準法に定められた労働時間や休憩、休日、深夜割増賃金に関する規定を適用しない制度が導入されました。

 

産業医・産業保健機能の強化

労働者の健康相談の強化など、産業医・産業保健機能を強化。過労死やメンタルヘルス不調者が出ない労働環境が期待されます。

 

不合理な待遇差の禁止

同一企業において、正社員と非正規社員のあいだで、基本給や賞与といったあらゆる待遇に、不合理な待遇差を設けることが禁止されました。通勤交通費の支給の有無や、基本給・賞与の格差も対象です。

 

労働者に対する待遇に関する説明義務の強化

事業主には、非正規社員から正社員との待遇差の内容や理由について説明を求められた際、説明を行う義務が課せられました。

 

行政による事業主への助言・指導等や裁判外紛争解決手続(行政ADR)の規定の整備

有期雇用労働者についても、行政が事業主に対し報告を求め、または助言、指導、もしくは勧告をすることができる法根拠が整備されました。

 

看護・介護・薬局には関係あるの?

先に紹介した改正法令は、中小企業は2023年4月施行の「月60時間超の残業の割増賃金率引き上げ」以外は、5年間の適用猶予がある医師や自動車運転業等を除いて、すでに施行されています。そのため、看護・介護・薬局業界の多くが区分けされる中小企業・施設にとっても、働き方改革は決して他人事ではありません。

もし、まだ働き方改革に対応した体制づくりが進んでいないなら、対応は急務といえるでしょう。なお、中小企業の条件は下記のとおりです。

 

<業種ごとの中小企業の条件>

・小売業:資本金額または出資金の総額が5,000万円以下、もしくは常時使用する労働者数が50人以下の企業

・サービス業:資本金額または出資金の総額が5,000万円以下、もしくは常時使用する労働者数が100人以下の企業

・卸売業:資本金額または出資金の総額が1億円以下、もしくは常時使用する労働者数が100人以下の企業

・その他の業種:資本金額または出資金の総額3億円以下、もしくは常時使用する労働者数が300人以下の企業

 

看護・介護・薬局の働き方改革の施策

働き方改革に応じた環境を整備するために、看護、介護、薬局業界で進んでいる具体的な施策を紹介します。

 

ICTの導入

ICTの導入とは、音声入力アプリや電子カルテ、業務用SNSなど、ICT(情報通信技術)を導入することで、業務の効率化や生産性向上を期待するもの。初期費用はかかりますが、事務作業の大幅カットにつながります。

 

時間外労働の改善

時間外労働とは、看護や介護の分野で問題となっている労働時間外に行われる前残業や研修、申し送りのことです。2023年4月から、中小企業も月60時間を超える残業の割増賃金率の引き上げが適用されるので、時間外労働の見直しは重要です。

 

業務負担の軽減

一人ひとりの業務負担の軽減は、時間外労働の改善や多様な働き方の実現につながります。介護ではユニットケアや分業の導入、看護では医療ロボットやAIの活用、電子カルテ・タイムカードの導入など、さまざまな方法があります。

 

多様な働き方を受け入れる

短時間正社員制、フレックスタイム制、時差出勤、夜勤免除など、多様な勤務形態を作り、現場が受け入れていくことは、働き手の確保にもつながります。

 

働き方改革に合わせた組織づくりを

働き方改革と歩調を合わせて多様で柔軟な働き方ができる環境を整備することは、働き手の確保や従業員の仕事へのモチベーションの向上、生産性のアップなどにつながります。働き方改革に対応した体制づくりが十分でない場合は、優先度の高い課題としてすぐに取り組むのがおすすめです。

 

メディカルサポネットでは、医療機関や調剤薬局、介護事業者様向けの人材紹介サービスのほか、人材育成や従業員の定着率向上、業務効率化等のサポートも行っております。働き方改革に合わせた組織づくりにお悩みなら、ぜひご相談ください。

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