2022.09.29
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【開催レポート】看護職のメンタルヘルスをどう守る?

東京都看護協会三職能合同交流会


看護師のメンタルヘルスをどうする?東京都看護協会三職能合同交流会


編集部より

長引くコロナ禍において、身体的・精神的な疲労が蓄積する一方である、看護職のメンタルヘルスをどのように守るかについて関心が高まっています。こうした問題に対する解決策を探るために、東京都看護協会は8月11日「看護職へのメンタルヘルスケア」をテーマに三職能合同交流会を開催しました。交流会では病院や訪問看護ステーション、保健所などそれぞれの立場からどのようにメンタルヘルスケアに取り組んでいるかが報告されたほか、精神看護専門看護師による講演などが行われました。

 

取材・文/横井 かずえ

編集/メディカルサポネット編集部

 

ケアの満足度を高めることが看護師のメンタルを守る

 

帝京大学医療技術学部看護学科准教授 寺岡征太郎氏

帝京大学医療技術学部看護学科准教授 寺岡征太郎氏

 

帝京大学医療技術学部看護学科准教授の寺岡征太郎氏は、看護職を取り巻くメンタルヘルスの課題やメンタルヘルスを支えるセルフケア、レジリエンスの考え方などについて話しました。

 

寺岡氏は長引くコロナ禍で、疲労の蓄積神経過敏状態過覚醒の状態が続いていることなどから「休めずに頑張り続けることによって、看護師のエネルギーの枯渇が心配される」と指摘しました。さらに、東京都看護協会が実施した調査結果を引用し「コロナに直接対応している看護師だけではなく、一般病棟のスタッフなども含めてエネルギーの枯渇が心配されています」と警鐘を鳴らしました。

 

「看護師のメンタルヘルスに最も大きな影響を及ぼしているのは、この2年半ずっと、看護師としてのアイデンティティが揺さぶられる体験をしているということです。コロナで辛いという人の話をよくよく聞くと、『やりたい看護ができなくなった』『コロナでキャリア計画が頓挫してしまった』という悩みに行きつくことがよくあります。つまり、コロナ禍における看護師のメンタルヘルスを考える中で重要なのは、アイデンティティをどのように取り戻すかなのです」(寺岡氏)

 

アイデンティティを取り戻す方法のひとつとしては「いかにして仕事やケアの満足度を高めるかが重要です。こういう時期だからこそ『できない看護』から、『トライしていく看護』を増やし、ケアの満足度を高めることがストレスの低減につながるのです」とも話しました。

 

一例としてACPに取り組んできた病棟の取り組みを取り上げました。この病棟ではコロナをきっかけにそれまでの「入院か在宅か」という二元論から、オンラインで家族とつながる機会を増やすなど患者の選択肢を増やすことに方向転換し、それによってACPを充実させることに成功しました。

 

「直接的にメンタルヘルスをケアするだけではなく、倫理的看護実践の経験を増やしてできる看護を増やすことが、看護師の自信を取り戻すことにつながり、結果としてメンタルヘルスケアとなるのです」(寺岡氏)

 

さらに厚生労働省が推奨するメンタルヘルス・ケアの4つの柱の中では、セルフケアが最も重要であると指摘し、「メンタルヘルスはサポートされるイメージがありますが、サポートされるのを待つのではなく、自分から自分のことをケアする方が確実ですし、早いし、予防にもつながります。他者からの支援を待つ間にどんどんメンタルヘルスの不調は進むので、いかに自分の変化に気づいてケアできるかが重要です」と訴えました。

 

ケアの方法としては特別なことができなくても、普段よりも30分だけ早く就寝したり、眠れなくても体を横たえるなど小さなことでも効果があるとし、「小さな目標を立ててほどほどの達成感を得られる活動をセルフケアの中に盛り込んでいくことが大切です」と話しました。

   

看護師を追い詰める『~ねばならない思考』からの解放

国家公務員共済組合連合会立川病院看護師長 小林いつか氏

国家公務員共済組合連合会立川病院看護師長 小林いつか氏

 

「病院における看護職のメンタルヘルスケアについて」では、精神看護専門看護師として患者だけではなく看護師のメンタルヘルス支援にも取り組む国家公務員共済組合連合会立川病院看護師長の小林いつか氏が講演しました。

 

小林氏は看護師が抱えるストレスの原因として「人間関係」「ワークライフバランスの乱れ」「疲労の蓄積」「実力不足」を挙げました。その上で、看護師をさらに追い詰めるものとして「ねばならない」という思考のクセであるとも指摘。「メンタルヘルスが不安定な看護師や病的な反応に至ってしまった看護師には、特にこの『~ねばならない思考』が多い印象を受けています」と話しました。

 

「『ねばならない』という考え方がとにかく頑張らなければならないというふうにすり替わり、疲れていても無理に自分を奮い立たせてしまう人もいます。それによって達成感ややりがいを感じにくくなり、自己肯定感も低くなってしまうのです」(小林氏)

 

そして、看護師のメンタルヘルスケアについて小林氏は、組織横断的な活動として以下の3本柱で支援を行っていると話しました。

・セルフケア

・ラインケア

 

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