2018.12.28
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◆第3回 すべては愛情ありき 其の一

野村克也の人生強化塾

従業員を使って事業を営んでいる、あるい、企業のなかで多くの部下を抱える立場にある人にとって重要なタスクは、「成果」と「利益」を出すことでしょう。

でも、その使命を果たすために、部下を必要以上に叱ったりおだてたりしていてもうまくいきません。なぜなら、そこにはある「大切なもの」が欠けている場合も多いからです。

過去に数多くのプロ野球チームを率いてきた野村克也さんは、人を育てる際にもっとも必要なキーワードは「愛情」だと言います。

構成/岩川悟(slipstream)、清家茂樹(ESS) イラスト/小西真樹

 

 

わたしは、「叱る」と「褒める」は結果的に同じことだと思っている。それは、どちらも根っこに愛情があるからだ。目の前にいる選手に成長してもらいたい、一流になってもらいたいという思いがあるから叱るし、褒める。「叱る」と「褒める」は正反対の行為ではあるが、その裏側にある思いは同じなのである。

 

気をつけなければならないのは、指導者が自分の立場や感情を優先することだ。

 

そこに、愛情は一切ない。自己の感情が先行すると、「叱る」は「怒る」になる。「褒める」は「おだてる」になる。本当の愛情は、厳しいだけでも、やさしいだけでもないのである。

 

人を教え導くには、愛情がなければならない。愛情なくして信頼関係は生まれないし、信頼がなければ思いが相手に届くこともなく、組織そのものが成り立つこともない。誰もが生まれながらに持っている理性や知性を尊重し、努力することの大切さに気づかせ、自分から学ぶようにさせること。それが、わたしの考える教育方針である。技術について一から手取り足取り教えるのは、けっして愛情ではない。

 

「情」を以て「知」を引き出し、「意」へと導く――。

 

その流れができてこそ、師弟、あるいは上司と部下、先輩と後輩、教える側と教えられる側の理想的な関係が築かれていくのである。

 

まとめ

「人間は感情の動物」と呼ばれるように、部下が大きなミスを犯した場合などには、感情任せに怒りをぶつけたくなるものです。でも、人の上に立つ人間であれば、一度、そこで自分に問いかけるべきかもしれません。

 

そこに、ちゃんとした「愛情」はあるか―

 

人間は、他人からなんらかの施しを受けた場合にお返しをしなければならないと感じる「返報性の原理」という心理を持っています。愛情を持って接すれば、その愛情に部下は応えてくれ、心強い存在へと成長してくれるはずです。

 

※今コラムは、野村克也著『野村四録 指導の書 リーダーの条件』(セブン&アイ出版)をアレンジしたものです

  

    

プロフィール

野村克也(のむら・かつや)


1935年、京都府に生まれる。京都府立峰山高等学校を卒業し、1954年にテスト生として南海ホークスに入団。3年目の1956年からレギュラーに定着すると、現役生活27年にわたり球界を代表する捕手として活躍。歴代2位の通算657本塁打、戦後初の三冠王などその強打で数々の記録を打ち立て、MVP5回、首位打者1回、本塁打王9回、打点王7回など、タイトルを多数獲得。また、1970年の南海でのプレイングマネージャー就任以降、延べ4球団で監督を歴任。ヤクルトでは「ID野球」で黄金期を築き、楽天では球団初のクライマックスシリーズ出場を果たすなど輝かしい功績を残した。現在は野球評論家として活躍中。

【書籍紹介】

野村四録 指導の書 リーダーの条件

(リンク先)http://urx.red/Pczt

 

 メディカルサポネット編集部

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