2018.12.05
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◆第2回 部下の信頼を得るために 其の二

野村克也の人生強化塾

リーダーが自分だけの幸せを追い求め、出世欲に支配されてしまったら、その組織の信頼関係は確実に破綻していきます。その反対に、「部下に花を持たせる」という心を持ったリーダーがいたら、きっと組織に好循環が生まれるでしょう。

現役時代は捕手として45歳までマスクを被り続けた野村克也さんは、たくさんの投手が投げるボールを受け、そこで生まれた関係のなかでさまざまなことを経験しました。そして、こう語ります。

構成/岩川悟(slipstream)、清家茂樹(ESS) イラスト/小西真樹

 

 

打たれたのを投手のせいにする捕手は、仲間からの信頼を得られない。なにより、そんなことではそれ以上自分自身の成長も望めないだろう。

 

捕手のなかには、打たれたら投手が悪い、抑えたら自分のリードがよかったなどと思いがちで、それが言動に出てしまう選手もいる。それでは、投手はへそを曲げてしまうに決まっている。それを見ている他の選手も、その捕手には尊敬の念を持てないはずだ。

 

現場で試合を組み立てる捕手が、仲間から信頼されないようなチームがまとまるわけがなく、チームとしての力も発揮できないだろう。

 

これは上司と部下の関係にも似ている。上司が部下の成功を自分のことのようによろこべず、功を横取りするような人だったら、その組織はバラバラになる。リーダーというのは、部下の成長に情熱を傾け、功を譲るくらいの精神を持つべきである。

 

負けや失敗の責任を「自分は悪くない」と他人や環境に転嫁したり、「コンディションが悪かった」と弁解したり、「仕方ない」とあきらめてしまったりすれば、すべてはそれまで。逆に、負けや失敗を自分の責任として受け入れれば、二度と失敗は繰り返さないと強く思うだろうし、そうしないために創意工夫もする。

 

その姿勢こそが、部下からの信頼を獲得し、組織としての力を強くしていくのである。

 

まとめ

「打たれたら自分の責任」と投手を守れる捕手こそ優れた捕手であると、野村克也さんはかねてより持論を展開してきました。

 

捕手は「グラウンドの監督」とも言われることを思えば、リーダーとしての役割を求められます。勝てば投手に功を譲り、負ければ責任は自分で負う。これはまさしく、上司と部下の関係にもあてはまります。

 

部下が成果を出せば功はその部下のもの、失敗したらリーダーが責任を負う。そういう積み重ねによって部下から感謝され、結果的に自らも成長できるのです。なによりも、「仕事の手柄」以上に、かけがえのない「信頼関係」を手に入れることができることでしょう。

 

※今コラムは、野村克也著『野村四録 指導の書 リーダーの条件』(セブン&アイ出版)をアレンジしたものです

  

   

プロフィール

野村克也(のむら・かつや)


1935年、京都府に生まれる。京都府立峰山高等学校を卒業し、1954年にテスト生として南海ホークスに入団。3年目の1956年からレギュラーに定着すると、現役生活27年にわたり球界を代表する捕手として活躍。歴代2位の通算657本塁打、戦後初の三冠王などその強打で数々の記録を打ち立て、MVP5回、首位打者1回、本塁打王9回、打点王7回など、タイトルを多数獲得。また、1970年の南海でのプレイングマネージャー就任以降、延べ4球団で監督を歴任。ヤクルトでは「ID野球」で黄金期を築き、楽天では球団初のクライマックスシリーズ出場を果たすなど輝かしい功績を残した。現在は野球評論家として活躍中。

【書籍紹介】

野村四録 指導の書 リーダーの条件

(リンク先)http://urx.red/Pczt

 

 メディカルサポネット編集部

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