2018.12.07
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第5回「お金が残る財務戦略を教えます!」

薬局に強い税理士が教える税務対策

調剤薬局の顧問を務める税理士の松本直樹さんに、薬局経営における税務対策をわかりやすく解説していただきます。第5回は「お金が残る財務戦略」がテーマです。「資産」と「負債」のバランスのとり方で、会社に残る金額が変わってきます。

 

日々健闘されている経営者には酷な指摘ですが、経営者の多くが売上アップや節税に意識が向きすぎて、会社にお金を残すアクションをおこなっていません。結果的に「こんなに頑張っているのにどうして会社にお金が足りなくなるの?」との嘆きにつながりかねません。

 

そこで今回は、ずばり「会社にお金を残すにはどうすれば良いのか?」をご説明いたします。

  

「調剤薬局の資金繰りは他業界より余裕がある?」

まず調剤薬局の典型的なバランスシートを考えてみましょう。

 

現金預金以外の「資産」にはなにが該当するでしょうか? 薬品在庫、社会保険や国民健康保険などの基金請求分、薬局店舗保証金などがあたります。

 

逆に「負債」の代表は、薬品卸に対する買掛金です。実は、調剤薬局業界は、薬品卸に対する支払サイトが長い場合が多いので、本来、他業界より資金繰りは楽なはずです。よって、調剤薬局で業績は悪くない(利益は計上できている)のに、資金繰りが苦しいとなると、事態は深刻です。

 

「お金が残らない仕組みになっていませんか?」

利益が計上できたのに、資金繰りが苦しくなる経営者には、パターンが存在します。それは、節税を好むことと、借入金を嫌がること(金払いが良い?)の2点です。

 

しばしば見受けられる例をあげてみましょう。例えば年間利益が800万円見込みの調剤薬局法人で試算します。税引前利益800万円なら年間の法人税は約196万円です。会社に残るお金は800万円-196万円=604万円です。

 

この経営者が「節税」のため10年満期の養老保険(年間保険料600万円とします)に加入するとどうなるでしょうか。

 

年間保険料のうち50%は損金ですので、税引前利益は800万円-300万円=500万円となり、年間税額は約121万円まで減ります。196万円-121万円=75万円節税できました。しかし、会社に残るお金は800万円-600万円-121万円=79万円です。

 

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