2019.10.21
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第15回「調剤薬局のM&Aについての基礎知識を知る」

【薬局経営者必見】薬局に強い税理士が教える税務対策

 調剤薬局の経営者であれば、金融機関やコンサルティング会社から、いわゆるM&A(Mergers and Acquisitions:合併と買収)の案内をもらった経験があると思います。実際にM&A市場で「調剤薬局」案件の成約は多かったものの、現時点では、買収熱はやや落ち着いたようです。
 
 シリーズ最終回は、非常に重要な案件にもかかわらず、「M&A」を漠然としか理解していない経営者に、ぜひ知っておいて欲しい知識を紹介します。

第15回 薬局に強い税理士が教える税務対策 松本直樹氏

「純資産+3~5年分の利益とは?」

 まずM&Aによる法人または店舗の事業価値として、よく使われるのが、「純資産+3~5年分利益」です。M&Aの専門家は、この計算式は事業価値を正確に計算していないとして、さまざまな計算手法を紹介していますが、経営者にとってそれは非常に難解なので、この計算式をしっかり理解することからスタートすべきです。

 

 そもそも、ご自身の会社の「純資産」を説明できるでしょうか?

 

 純資産とは、決算書の中の「貸借対照表」の右下(負債の部の下)に表示されています。ただし、決算書の純資産は「時価」ではないため、時価で計算しなければいけません。これは、「買い手」であっても「売り手」であっても同じです。

 

 例えば、店舗不動産があれば、時価評価する必要がありますし、経営者家族使用の車や経営者貸付金、借入金の有無も必ず確認しなければいけません。

 

 なお、経営者借入金がある場合、売買代金を返済金にすれば「売り手」の税負担がなくなり、成約しやすくなるケースもあります。

「実質利益は意外と多い?」

 3~5年分の利益と言っても、事業価値を計算する際の「実質利益」は意外と多くなります。

 

 例えば、「売り手」が第三者に完全に譲渡するケースを想定してください。経費の中の経営者一族の役員報酬、給与、法定福利費は「買い手」は負担しませんので、利益に加算します。さらには、経営者一族の個人的な経費(交際費や福利厚生費)、住居関係費、車両費(減価償却費を含む)なども加算すると、意外と増えることが多いです。

 

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