2019.06.25
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第11回「今話題の新事業承継税制とは?」

薬局に強い税理士が教える税務対策

「事業承継税制」なる税制特例を聞いたことがあると思います。日本では、経営者の高齢化が進行しており、多くの法人で跡継ぎがいないことを理由に、廃業が急増すると予想されています。運良く「跡継ぎ」がいるとしても、自社株式の高い相続税負担がスムーズな事業承継を妨げているとの指摘から生まれたのが「事業承継税制」です。当初は使い勝手が悪く、何度も改正されてきました。2018年4月から適用が始まった「新事業承継税制」(特例措置)は、まさに決定版とも言える制度です。今回は、この「新事業承継税制」(特例措置)のポイントを解説します。

    

「特例措置と一般措置の重要ポイント」

 事業承継税制は、新制度の「特例措置」と従来措置である「一般措置」の2種類あり、従来措置は廃止されたわけではありません。まず、この税制は納税猶予、つまり税の繰り延べであることをしっかり理解してください。納税猶予される税目は、贈与税と相続税です。つまり大株主である創業者等が、後継者に株を贈与した場合の贈与税や、相続発生した場合の相続税を猶予する制度です。

 

 さて、肝心の納税猶予される対象株数ですが、「一般措置」(従来措置)は、総株式数の3分の2までで、猶予される納税割合は贈与税100%、相続税80%でした。株を後継者に贈与しても、いつかは相続が発生するので、その場合には結局3分の2の80%で、約53%しか猶予されないことになります。ところが、「特例措置」(新制度)では、対象株数は全株式、猶予納税割合も贈与税、相続税どちらも100%になりました。つまり後継者にとって株の引き継ぎによる税は、全額繰り延べになります。

  

「雇用確保要件の緩和も追加」

 税のみを見ると魅力的な事業承継税制ですが、あくまでも税の繰り延べであり免除ではありません。経営者として不安な要件が「雇用確保要件」です。従来措置では、制度適用後5年間は、平均8割の雇用維持が必要でした。「特例措置」(新制度)では、8割を割り込んだとしても、「やむを得ない理由」がある場合は、その理由を記載した報告書を都道府県に提出して確認を受ければ、納税猶予を継続できることになりました。

  

 「特例措置の適用期限は?」

 さて、良いことばかりのような新事業承継税制(特例措置)ですが、実は少々面倒な要件と適用期限があります。

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