2018.08.21
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結果報告~事業所における介護労働実態調査結果~

【平成29年度 介護労働実態調査】

公益財団法人 介護労働安定センターは2017年(平成29年)10月1~31日にかけて、全国の介護保険サービス事業を実施する17,638事業所(無作為抽出)にアンケートを依頼、8,782件を回収しました。その中から、一事業所あたり介護にかかわる労働者3名を上限に、無作為に選出した52,914人に対しアンケート調査を実施しています。有効回答があったのは21,250人でした。メディカルサポネット編集部では、アンケート結果を元に分析しました。

▼目次

  

I.雇用管理の状況

1.職種別の従業員数と男女比

介護保険の指定介護サービス事業に従事する従業員のうち、職種別従業員数について、平成29年9月30日現在の街頭する職種の人数を記した表です。職種により違いが大きいのがわかります。

 

 

2.訪問介護員、介護職員の一年間(平成28年10月1日から平成29年9月30日まで)の採用率・離職率

採用率17.8%(前年度19.4%)、離職率16.2%(前年度16.7%)でした。訪問介護員に比べ、介護職員の採用率・離職率・増加率ともに訪問介護員より高く、介護職員の方が転職をくり返す傾向にあります。また、正規職員と非正規職員では、非正規職員の方が採用率・離職率ともに高い傾向です。

 

 

◎職種・形態別の離職率と採用率は下表のとおりです。 

  

(1)採用率・離職率の経年変化<2職種(介護職員・訪問介護員)計>

平成29年度の採用率は17.8%で、前年度の19.4%より1.6%減少しました。

 

 

(2)一方、平成29年度の離職率は16.2%で、前年度の16.7%より0.5%減少しました。

前年度同様、訪問介護員では正規職員の方が非正規職員より離職率が高くなる一方、介護職員については非正規職員の方が正規職員より高くなっています。

  

 

(3)事業所別にみた離職率<2職種(介護職員・訪問介護員)計>

事業所別にみた離職率の割合では、2職種合計の離職率は16.2%でしたが、事業所別の分布をみると、2職種合計では、「10%未満」の事業所は全体の39.9%を占めていて、離職率が低い事業所が多いといえます。なお、「10%未満」は年々減少傾向でしたが、平成29年度は増加しています。

 

 

(4)離職者の勤続年数

離職者の勤続年数は「1年未満の者」が38.8%(前年度39.9%)、「1年以上3年未満の者」が26.4%(27.3%)で、両者を合計すると65.2%(67.2%)となります。また、「3年以上の者」は34.9%(32.8%)でした。

  

  

3.早期離職防止や定着促進のための方策(複数回答)

「本人の希望に応じた勤務体制にする等の労働条件の改善に取り組んでいる」が67.5%で、前年度の66.4%より1.1%増加しています。

 

  

4.従業員の過不足

(1)過不足の状況

介護サービスに従事する従業員の過不足状況を見ると、不足感(「大いに不足」+「不足」+「やや不足」)は66.6%(前年度62.6%)でした。一方、「適当」と回答された方が33.0%(前年度37.0%)です。

 

 

 

従業員の不足感は年々増加傾向にあります。

職種別の不足感では、「訪問介護」「介護職員」は、最も不足感の低い「生活相談員」と3~4倍の差があります。職種別に不足感に違いが見られます。

 

   

(2)不足している理由(複数回答)

従業員が不足している理由は、「採用が困難である」が88.5%で、前年度の73.1%を15.4%も上回ってます。人材が困難であるため、従業員の不満が高まり、離職につながる法人・企業も少なくありません。「離職率が高い」は18.4%と低いものの、前年度の15.3%より増加しています。

 

  

(3)採用が困難である理由(複数回答)

採用が困難である原因は「同業他社との人材獲得競争が厳しい」が56.9%が最も多く、「他産業に比べて、労働条件等が良くない」の55.9%と拮抗しています。その他、「賃金が低い」「仕事がきつい(身体的・精神的)」などはすぐには改善できず採用が難航するのと同時に、他職員との兼ね合いも考えなければいけないなど、慎重な対応が求められる問題です。

 

  

5.外国人労働者について

(1)外国人労働者の受け入れ状況

介護の仕事をしている外国人労働者は「いない」が91.4%、「いる」は5.4%でした。

「いる」5.4%のうち、外国人労働者を受け入れた経緯は、「日系人」が17.5%で最も高く、

次いで「留学生、就学生」14.1%、「EPAによる受け入れ」(11.2%)の順でした。

「その他」58.6%には、日本人の配偶者が含まれている可能性が高いです。

 

 

 

(2)国籍

「フィリピン」40.1%、「中国」15.3%、「ベトナム」12.2%の順で、アジア圏の方が多い傾向です。 

 

  

(3)外国人労働者を活用する予定

今後の活用予定については、「活用する予定はない」が80.1%、「活用する予定はある」が15.9%でした。

「活用する予定はある」と回答した事業者のうち、技能研修生としての受け入れを考えている割合は51.9%でした。

  

 

(4)外国人労働者を活用する上での課題

外国人労働者を今後活用する上での課題としては、「利用者等との会話等における意思疎通に支障がある」は58.9%、「日本語文章力・読解力の不足等により、介護記録の作成に支障がある」は54.1%、「日本人職員との会話等における意思疎通に支障がある」が46.5%でした。

  

 

「利用者等との会話等における意思疎通に支障がある」を課題とするのは、施設系(入所型)が66.6%、「日本語文章力・読解力の不足等により、介護記録の作成に支障がある」を課題とするのも、施設系(入所型)が69.0%で、どちらも全体を上回っています。

「日本人職員との会話等における意思疎通に支障がある」を課題とするのは、施設系(入所型)が55.2%、施設系(通所型)が47.6%で、共に全体を上回る数値でした。

6.過去3年間に介護を理由に退職した従業員の有無

(1)介護を理由に退職した退職

「現在、介護している」のは12.3%です。45歳以上から、「現在、介護している」が10%以上の割合を占めています。また、35歳以上から「ここ数年のうちに、可能性がある」が20%以上の割合を占めています。

 

  

過去3年間に介護を理由とする退職については、「介護を理由に退職した従業員はいない」は63.7%(前年度65.0%)、「介護を理由に退職をした従業員がいた」は25.4%(前年度23.4%)でした。半数以上が介護以外の理由から退職していることがわかります。

  

 

 

(2)従業員の抱える介護の問題の把握

「把握している」が73.0%(前年度72.2%)、「把握していない」が23.9%(前年度24.3%)でした。

  

  

(3)両立支援のための取組み

両立支援への取組みについては「介護休業や介護休暇を就業規則に定めている」が66.1%と最も多く、若干ですが増加傾向が見られました。施設系(入所型)では、「介護休業や介護休暇の内容や利用手続に関して、従業員全員に周知している」が47.2%と他に比べて高い傾向です。従業員数が多い職場では、周知の徹底が取り組まれています。

  

  

  

II.訪問介護員、介護職員に対する教育・研修の状況

人材育成の取り組みのための方策を複数回答で選ぶ調査では、「教育・研修計画を立てている」を選ぶ施設が55.4%(前年度56.0%)で最多でした。わずかですが減少を続けています。以下、「採用時の教育・研修を充実させている」の32.7%(前年度34.0%)、「教育・研修の責任者(兼任を含む)もしくは担当部署を決めている」の32.5%(前年度33.5%)、「職員に後輩の育成経験を持たせている」31.1%(前年度34.1%)と続きます。自治体や自社内で教育・研修を行っているところは多いものの、「地域の同業他社との協力、ノウハウを共有しての育成に取り組んでいる」は5.8%(前年度6.7%)と低い結果が見られました。

  

 

 

III.運営上の課題

1.介護サービスを運営する上での問題点(複数回答)

「良質な人材の確保が難しい」が55.2%で最多(前年度55.3%)、次いで、「今の介護報酬では人材確保・定着のために十分な賃金を払えない」が48.9%(前年度50.9%)でした。


 

2.介護職員処遇改善加算に伴う経営面での対応状況(複数回答)

「一時金の支給」が61.9%(前年度63.4%)、「諸手当の導入・引き上げ」58.4%(前年度54.6%)、「基本給の引き上げ」39.9%(前年度36.5%)と報酬面の対応を行っている職場が多く見受けられます。また、すぐに給与として反映できない法人・企業は、教育や正規職員への登用、昇進・昇格の明確化などの福利厚生の対応を行っている職場もあります。

 

   

IV.労働者の個別状況(個別調査結果)

8,782事業所で介護労働に従事する者78,576人の状況です。

※事業所管理者(施設長)は除かれています。

 

1.平均年齢

全体の平均年齢は47.4歳(前年度46.8歳)ですが、資格別では、訪問介護員の54.0歳(前年度53.3歳)が最高齢で、看護職員50.3歳(前年度49.6歳)、介護支援専門員49.9歳(前年度49.1歳)、サービス提供運営者48.4歳(前年度48.1歳)が続きます。

  

 

2.保有資格(複数回答)

介護福祉士40.2%(前年度39.5%)、介護職員初任者研修36.9%(前年度39.6%)が突出してます。

  

 

3.賃金・賞与

(1)労働者の所定内賃金と賞与

労働者の所定内賃金(月給)は平均で227,275円(前年度224,848円)でした。訪問介護員、介護職員どちらも前年に比べて増加しています。

 

  

労働者全体の平均額は572,079円でした。訪問介護員と介護職員では、賞与に約1.5倍の差があります。

  

 

 

(2)管理者の所定内賃金と賞与

管理者の所定内賃金(月給の者)は平均で356,679円(前年度360,753円)でした。労働者と管理者では、前年よりも労働者は増加していますが、管理者はわずかではありますが減少しています。

 

 

管理者の賞与(月給の者)は平均で709,230円でした。

 

 

  

V.法人・事業所の概況

1.法人格(経営主体)

民間企業が56.0%(前年度56.0%)を占めます。施設系(入所型)は「社会福祉法人」が最も高く、訪問系と施設系(通所型)は「民間企業」が多いです。

 

   

2.介護サービス以外の事業の実施

介護サービス以外の事業を実施しているのは54.4%(前年度55.0%)でした。内訳は、訪問系58.1%、施設系(入所型)48.3%、施設系(通所型)54.8%です。

  

 

3.実施している介護サービスの種類(複数回答)

「居宅介護支援」39.4%(前年度37.2%)、「訪問介護」38.2%(前年度37.1%)、「通所介護」27.5%(前年度27.2%)でした。

 

 

【出典】

公益財団法人介護労働安定センター ―平成29年度 介護労働実態調査結果について―

公益財団法人介護労働安定センター ―平成28年度 介護労働実態調査結果について―

 

メディカルサポネット編集部

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