2020.08.21
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大図拓也さん、蒔田麻友子さん、松澤賢治さん(医療・介護分野の経験+テクノロジー)

+αで活躍する医療従事者 vol.6

医療従事者の中には「+α」の技能を生かしながら、医療機関以外の多彩なフィールドで活躍する人も少なくありません。こうした人たちは、どのような経緯で「+α」を学び、仕事に生かしているのでしょうか。今回は、「社会課題をICTと先端技術の力で解決する」をミッションに掲げる株式会社ウェルモで働く医療従事者3人に、キャリアのターニングポイントや医療・介護業界での経験の生かし方などについて伺いました。

取材・文/中澤 仁美(ナレッジリング)
撮影/和知 明(株式会社BrightEN photo)
編集・構成/高山 真由子(看護師・保健師・看護ジャーナリスト)

+αで活躍する医療従事者 vol.4 久保 さやかさん(看護師・保健師+人材育成・組織開発コンサルタント)

  

+αで活躍する医療従事者 vol.6大図和也さん、蒔田麻友子さん、松澤賢治さん(医療・介護分野の経験+テクノロジー)画像1

プロフィール

写真右:大図 拓也(おおず たくや)
理学療法士。総合病院のリハビリテーション科で経験を積んだ後、通所介護事業所の機能訓練指導員(短期集中予防事業担当)として働き、2018年に株式会社ウェルモ入社。地域ケアプラットフォーム事業部所属。
 

写真中:蒔田 麻友子(まきた まゆこ)
看護師。聖路加看護大学(現・聖路加国際大学)看護学部卒業後、岡山大学大学院保健学研究科(博士前期課程)修了。訪問看護師や介護福祉分野のAI研究開発職を経て、2019年に株式会社ウェルモ入社。ケアマネジメントAI事業部所属。

 

写真左:松澤 賢治(まつざわ けんじ)
福祉用具専門相談員。インテリアショップ勤務の後、訪問介護事業所の福祉用具部門で経験を積み、2019年に株式会社ウェルモ入社。地域ケアプラットフォーム事業部所属。

 

◆現場での問題意識を胸に新たなステージへ

 

――まずは、これまで皆さんがどのような現場で活躍されてきたか教えてください。

 

蒔田:卒業後は系列の病院で働くことをイメージして看護大学に入学しましたが、地域看護の実習を経て考え方が変わりました。患者さんは疾患と向き合いながら、ご家族は介護をしながら、何とか折り合いを付けて暮らしている実態を目の当たりにして、「私がサポートしたいのはこういう方たちだ!」と直感したのです。地方の地域医療の実際を見たいという思いもあり、大学卒業後は岡山大学大学院で訪問看護の研究を進めながら、訪問看護ステーションでの勤務も始めました。都市部と地方で在宅医療についての考え方が異なる、地方では方言を使えないことが壁になるなど、さまざまなことを学べたと思っています。その後は東京へ戻り、あらためて訪問看護師として経験を積んでいきました。

  

大図:理学療法士の資格を取得してから総合病院に入職し、リハビリテーション科で急性期から回復期の患者さんを担当していました。中でも印象に残っているのは、交通事故で片足を切断した30歳代の男性との関わりでした。大きな絶望感にとらわれている彼に対して、安易に「気持ちは分かります」とは言えません。「完全には相手を理解できない」という前提を忘れず、誠実な態度で信頼関係を構築していくことの難しさ、やりがいを教えてくれた方でした。その後、回復期リハビリテーションの経験を重ねる中で、「患者さんたちは地域に戻ってからどう生活しているのか」ということに興味がわいてきました。そこで、機能訓練指導員としてデイサービスで働くことにしたのです。

 

松澤:学生時代のボランティアで出会った障がいをお持ちのお子さんが、お気に入りのコップでしか水分補給しないと知ったとき、「モノ」が持つ価値に初めて気付かされました。新卒時はインテリアショップに就職しましたが、近隣の高齢者施設の利用者さんが買い物に訪れる様子を見て、「好きなモノに囲まれる生活がQOLを上げる」ことを実感。そこから住環境を整えることの重要性へと関心が移っていき、福祉用具専門相談員の資格を取得して訪問介護事業所の福祉用具部門で働き始めました。「指示されたモノを持っていく」だけでなく、段差を解消する方法を考えたり、拘縮予防に効果的なクッションを選んだりと、心身や生活の状況を見て最適な提案をすることには大きなやりがいがありました。

  

+αで活躍する医療従事者 vol.6大図和也さん、蒔田麻友子さん、松澤賢治さん(医療・介護分野の経験+テクノロジー)画像2

インテリアショップ・訪問介護事業所での現場経験やコミュニケーションスキルが、現職で生かされていると話す松澤さん

  

――それぞれの現場を離れ、ウェルモへの転職を決意した背景には、どんな思いがありましたか。

 

大図:デイサービスで機能訓練を行う時間は、利用者さん1人当たり15~20分程度。自分が関わらない普段の生活の中で、いかに有意義に過ごしてもらうかが高齢者の人生を左右すると感じました。そのためには的確なケアマネジメントが必要になるわけですが、ケアマネジャーの多くは介護業界の出身で、医療的な知識を要するところでの判断が難しいケースもあります。だからこそ、最適なサービスや事業所を選択できるような情報提供により、マッチングを支援することが大切だと考えたのです。当社はまさにそれに取り組んでいるということを知り、入社を決意しました。

 

松澤:介護現場での気付きが転職のきっかけになったのは私も同じです。中でも疑問に感じていたのがアナログな仕事の進め方。担当者会議の記録やアセスメント情報など、多くの書類が手書きで作成されていました。それを事業所に持ち帰って別の書類に転記したり、PCに打ち込んだり……。こうした効率の悪さが人手不足につながっている部分もあるはずです。介護現場のICT化を促進したいという思いが、当社を選んだ理由の一つです。

  

蒔田:私は「現場にいながら現場の問題を取り上げて解決する」ことに限界を感じ、サービスを直接提供する以外のかたちで役に立てることはないかと考えていました。そうしたとき、当時勤めていた会社から「訪問看護ステーションから本社へ移って研究をしてみてはどうか」という打診を受け、挑戦することにしました。その後、AIに関わったことがきっかけで、より業界の質向上に貢献できるのではとAIに可能性を感じ、当社への転職を決めました。

 

+αで活躍する医療従事者 vol.6大図和也さん、蒔田麻友子さん、松澤賢治さん(医療・介護分野の経験+テクノロジー)画像3テレワークが増え、直接のコミュニケーション機会が減っている中、オフィスでの何気ない会話から開発のヒントが生まれる

 

◆培ってきた専門性を最大限に発揮するために

 

――ウェルモで担当している業務において、医療・介護の現場経験が役立つことはあるでしょうか。

 

蒔田:私はケアマネジメントAI事業部に所属し、AIコンテンツの定義やデータ整理、実証実験の運営などに加えて、機能開発における他社との交渉やチームマネジメントも担当しています。今携わっている「ケアプランアシスタント」というプロダクトは、介護や看護、リハビリテーション職の知見を学習して、ケアプラン作成を支援するAIシステムです。2020年度中にリリース予定となっており、今からユーザーさんの反応を楽しみにしています。

 

この開発過程でケアマネジャーの方々と話す機会も多かったですが、自分が看護師であること、訪問看護の経験をしていることが大いに役立ったと思います。在宅の現場のリアルな話ができますし、「ウェルモは現場の肌感覚も理解してシステムを作っている」と、会社そのものへの信頼感につながる場面もありました。

 

松澤:私と大図さんは、地域ケアプラットフォーム事業部で地域コミュニケーターとして働いています。ケアマネジャー、介護事業者、行政の3者をフラットにつなげ、これまで把握することが難しかった地域ケア情報を「見える化」する「ミルモネット」というサービスの展開が今の主な業務です。

 

その中で介護事業所を訪問する機会が多いのですが、「雨の日の訪問って、自転車だと大変ですよね」「担当者会議のとき、正座だとしんどくないですか」など、「介護あるある」のような話で盛り上がることもしばしば。そうしたコミュニケーションを通して各事業所が抱える困りごとを理解し、利用者さんへのより良いサービス提供や、働きやすい環境作りにつなげられているのではないかと思っています。

 

大図:私は自治体の担当者さんと話すことが多いですが、やはり現場での経験は生きていると思います。自分が過去に感じていた問題意識などを、具体的なエピソードを交えて伝えられるので、共感を得やすいようです。また、ミルモネットに加えてケアプランアシスタントの企画にも関わってきましたが、理学療法士としての知識や経験があるからこそ提案できることも少なくありませんでした。

 

+αで活躍する医療従事者 vol.6大図和也さん、蒔田麻友子さん、松澤賢治さん(医療・介護分野の経験+テクノロジー)画像4

所属部署が違っても、医療従事者同士でディスカッションや情報交換をすることも

 

――社内には医療・介護職の経験がない方も多いと思います。バックグラウンドが違うスタッフ同士で協働するためのポイントを教えてください。

  

松澤:様々な業界の出身者と働くことは刺激的で、新たな気付きにもつながります。一方で、介護業界のことを未経験者に説明する難しさを実感することもありました。例えば、「おむつを替える」「入浴を介助する」といった生活に即した部分は想像してもらいやすいですが、介護保険制度や請求の仕組み、担当者会議のことなどは分かりづらいようです。そうした点を明確に伝えるためにも、いわゆるコミュニケーション能力は欠かせないと感じています。

  

大図:確かに、医療・介護業界の経験者同士なら互いの職場をイメージしやすく、「共通言語」があるためスムーズにコミュニケーションできますが、そうでない場合は前提となる認識のズレがないかを逐一確認しながら前へ進む努力が大切ですね。私自身も当社で働き始めたころは、それぞれの介護現場でやっていることや雰囲気などを、エンジニアに一から説明することに苦労した経験があります。

  

蒔田:社内で勉強会を開いて、介護保険制度の概要などをレクチャーしたこともありましたね。一緒にプロジェクトを進める上では、相手の受け止め方を踏まえて発信することも重要だと思います。同じゴールをめざしていても職種によって物事の進め方が違うことは多く、そもそも単語の解釈すら異なるケースも珍しくありませんから。

 

+αで活躍する医療従事者 vol.6大図和也さん、蒔田麻友子さん、松澤賢治さん(医療・介護分野の経験+テクノロジー)画像5

現在はスタッフのマネジメント業務にもたずさわり、仕事の視野を広げている蒔田さん

自分らしいやり方で医療・介護分野に貢献しよう

 

――最後に、「+α」をめざす医療職の皆さんにメッセージをお願いします。

 

松澤:医療や介護の現場で働いている人でも、それ以外の業界の人と関わるシーンは意外に多いもの。医療機器や福祉用具のメーカーは、その一つの例だといえます。これまで重ねてきた現場経験を生かせる業界は少なくないので、自分の可能性を広げるチャンスを見逃さず、より俯瞰的な視点で医療・介護業界を見られるといいのかな、と思います。

 

蒔田:私は、看護師としてスタンダードなキャリアパスとは違う道を歩んできました。人と違う選択をして、未知の世界へ挑戦できたのは、「自分の専門性をこう生かしたい!」という思いを大切にしてきたからです。看護学校で学んでいたり、病院で働いていたりすると、「看護師は医療現場で働くことしかできない」と思い込みがちです。しかし、一歩引いて眺めてみれば、それ以外にも患者さんの役に立てる方法が見えてくるかもしれません。

 

大図:現場で目の前の患者さんに集中し、その人のために働くということも、もちろん素敵なことです。ただ、「誰のために何をしたいのか」を考える続けることを忘れないでほしいなと思います。その中で自分が本当にやりたいことが他に見えてきたのなら、その思いを大切にできる場所を探してみるのも悪くないのではないでしょうか。

 

+αで活躍する医療従事者 vol.6大図和也さん、蒔田麻友子さん、松澤賢治さん(医療・介護分野の経験+テクノロジー)画像6

松澤さん(左)、蒔田さん(中)、大図さん(右)それぞれが目指す未来は介護・福祉領域を明るくしてくれるはずだ

 

株式会社ウェルモ

株式会社ウェルモ

 

■住所:〒100-0011 東京都千代田区内幸町1-1-6 NTT日比谷ビル4F

■URL:https://welmo.co.jp/ 

■代表取締役CEO:鹿野 佑介

「社会課題をICTと先端技術の力で解決する」ことをミッションに掲げる、介護・福祉領域のITベンチャー。人事領域のITコンサルタントや東証一部上場企業人事部で働いていた代表の鹿野が、8か月間にわたり仙台から東京・福岡まで計400法人を超える介護事業所にてボランティアやインタビューを実施し、現場の働きがいに課題意識を持ったことがきっかけで2013年に創業。ケアプラン作成支援AIの「ケアプランアシスタント」、介護の地域資源情報を集約するプラットフォーム「ミルモネット」、児童発達支援・放課後等デイサービス「UNICO(ユニコ)」の事業などを展開している。

 

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