2020.11.06
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薬局のライフサイクルを知る(1) 永遠に続くビジネスモデルはない

狭間研至の薬局経営3.0~社長が変われば薬局が変わる~
vol.2

狭間研至の薬局経営3.0社長が変われば薬局か変わる

 

編集部より

医師であり調剤薬局の経営者でもある狭間研至さんの連載コラム「薬局経営3.0〜社長が変われば薬局が変わる〜」。第2回は、狭間さんが薬局経営に閉塞感を感じていたころに知ったという言葉「全てのビジネスモデルには寿命がある」を起点に、調剤薬局のビジネスモデルについて考察を深めます。「薬局経営に取り組む勇気と元気のもとになる」ような捉え方の変化を紹介しています。

 

ものの見方が変われば勇気が湧いてくる

 

こんにちは。狭間研至です。前回は「薬局の経営が面白くなくなった?」というお話をさせていただきました。

商売の今後の見通しとしてはもとより、機械化が進む現場で活動してくれている薬剤師のやりがいとしても、ポリファーマシーや在宅医療の充実が叫ばれる医療における貢献度としても限界を感じるようになると、「面白いのかな?」とふと気づいてしまわれた方も多いのではないでしょうか。

かくいう私も、2004年ごろに同じような悩みに直面し、医師としてのキャリアを一旦は中断し外科医の道を離れて薬局経営の現場に来たことに迷いが生じそうになったこともありました。

 

そんな悩みを持っていた2006年に出会ったのが、「全てのビジネスモデルには寿命がある」という言葉でした。

薬局にも詳しくなく、経営の経験も全くなかった私が薬局経営をするとは、あまりにもムリがあると思った私は、手当たり次第に経営やマネジメントの本を読みあさっていました。そんな中の一冊に載っていたのがこの言葉でした。展望が見いだせず、悩みも多い「調剤薬局」というビジネスモデルが「永遠に続く」わけではないという言葉は、新規出店、人材採用が上手くいかず、調剤過誤におびえながら「こんな生活、いつまで続くの!?」と思っていた私にとっては衝撃的の一言でした。

その本をむさぼるように読み進んでいくと、その要点は以下の通りでした。

 

 

1.永遠に続くビジネスモデルはない

どんなビジネスモデルにもある寿命を読み解く第一歩は、始まってから想定市場が満たされるまでその市場の広がりはS字カーブを描くと知ることです。

サービスが開始されてから、想定市場の1/5が満たされるまでの期間を導入期と呼びます。この年数が割り出せれば、成長期、成熟期は等間隔に来るというのです。ちなみに、成熟期のあとには衰退期が訪れ、そのビジネスモデルは市場から消えていきます。私が半ば絶望しかけた「調剤薬局」というビジネスモデルもこのサイクルに沿って動いているはずだと思いました。

 

2.ビジネスモデルの成長の指標を知る

いろいろな業界には、その成長を示すデータがあるはずなので、それをS字カーブに当てはめてみようと書いてありました。

「調剤薬局」というビジネスモデルは、医師の処方箋発行料を大幅に引き上げた1974年がスタートの年だとされています。その後の推移としては、公益社団法人日本薬剤師会が集計している「医薬分業率」のデータがあります。日本は医師法22条に処方箋発行の義務がありますが、8項目の但し書きがあるために強制分業ではなく任意分業です。2005年ごろに当時、大阪府薬剤師会の会長だった児玉孝先生と対談させていただいた時に、日本の分業率の到達点は75%ぐらいだとおっしゃっていたので、75%を想定市場が満たされる状態としました。だとすると、1/5すなわち15%程度の分業率になるのが、1991年でしたので、スタートの1974年から17年が導入期、1991年から2008年が成長期、2008年から2025年が成熟期という51年が1サイクルのビジネスモデルだということが導き出せました。

 

3.これら各段階の特徴を知ってビジネスをしないと失敗する

このように分類した、導入期、成長期、成熟期という3つの段階において、ビジネスのやり方や考え方は変える必要があります。

その際に、各段階においてのキーワード、導入期は危険性と不採算性、成長期はアクセル全開、そして、成熟期は淘汰ということを念頭においてビジネスに取り組まなければなりません。「調剤薬局」の場合には、1991年までは分業率も低く、医師も薬剤師も患者さんも慣れていませんでしたから、まさに危険性や不採算性があったのだと思います。ただそのときに、いろいろと工夫していく中で成功パターンが生まれます。

それが、完全な門前型調剤薬局というあり方だったのだと思います。1991年からは成長期に入りますが、アクセル全開! 一気に店舗展開が組織的に行われるようになり市場は拡大していきます。私が薬局業界に関わるようになったのは、2001年ごろからで2004年からは正式に社長になったのですが、成長期後半なので業界としてはアクセル全開の時期から少しスピードダウンが始まっていた時期だと分かりました。

ただ、場所取り合戦のような出店競争に勝ち、薬を渡すまでの仕事に専念するという業務には展望が見えなくなってきていたのは、成長期後半だからだと思った時には当時感じていたジレンマの理由が猛烈に腹に落ちました。さらに、2008年からは淘汰がキーワードの成熟期に入りますので、薬局を閉めざるを得なかったり、今まではほとんど耳にしなかった買収や売却の話を小耳に挟むようになってきているのも当然かと妙に納得したものです。

 

 

今、2020年ですが、私のこのオカルトのような読みが当たっているとするならば、2008年から始まった17年間の成熟期の残り5年といういわば最終段階です。薬局の経営やマネジメントに閉塞感があるとすれば、それは当然のことなのです。そういった考えで見れば、業界や自社の見え方は大きく変わります。その見方が変わることが、薬局経営に取り組む勇気と元気のもとになると思います。

 

次回は、薬局の世代間移行ということについてお話したいと思います。お楽しみに。

 

※次回は12月上旬に公開予定です

 

プロフィール

 

狭間研至(はざま・けんじ) 
ファルメディコ株式会社 代表取締役社長/医師、医学博士、一般社団法人 日本外科学会 認定登録医。
1969(昭和44)年、大阪府生まれ。95(平成7)年、大阪大学医学部卒業。大阪大学医学部付属病院、大阪府立病院(現 大阪急性期・総合医療センター)、宝塚市立病院で外科・呼吸器外科診療に従事。2000(平成12)年、大阪大学大学院医学系研究科臓器制御外科にて異種移植をテーマとした研究および臨床業務に携わる。同修了後の04(平成16)年から現職。現在は、地域医療の現場で医師として診療も行うとともに、一般社団法人 薬剤師あゆみの会・一般社団法人 日本在宅薬学会の理事長として薬剤師生涯教育や薬学教育にも携わっている。

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