2018.10.20
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痒疹の分類と治療のコツは?

メディカルサポネット 編集部からのコメント

日本皮膚科学会から発行された「慢性痒疹診療ガイドライン」では痒疹は急性痒疹、亜急性痒疹、慢性痒疹へ分類されています。慢性痒疹はさらに、結節性痒疹、多形慢性痒疹に分類されます。しかし、現在、この分類法は改訂案が検討されています。治療に関しては、急性期(滲出や急性炎症の要素が目立つ時期)の病変にはステロイド外用に効果が期待できます。

 

日常診療で苦労している痒疹の分類と治療のコツを教えて下さい。防衛医科大学校・佐藤貴浩先生にご教示をよろしくお願いします。

【質問者】

橋爪秀夫 市立島田市民病院皮膚科/副院長

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【回答】

【急性期のステロイド外用に効果あり】

2012年に日本皮膚科学会から発行された「慢性痒疹診療ガイドライン」における分類では,痒疹を個疹の経過からわけています。急性痒疹は滲出傾向のある丘疹や漿液性丘疹で,個々の病変は1〜2週間で消退に向かうものです。虫刺されをイメージして頂ければよいと思います。慢性痒疹は個疹が数カ月にわたって持続するもので,その代表は結節性痒疹です。不規則な表皮肥厚がみられ,真皮にも大なり小なり線維増殖性の変化を伴います。

 

しかし,これら以外の痒疹も臨床の現場では非常に多く,亜急性痒疹として包括しています。かつてlichen urticatusやprurigo simplex subacutaなどと言われてきたものです。やっかいなのは多形慢性痒疹です。これは高齢者の腰部,臀部に好発し,蕁麻疹様丘疹から充実性の真皮性丘疹になっていきます。痒疹としては例外的に集簇,苔癬化を起こします。この病型・病名は海外では認知されていません。病変は慢性痒疹に相当しないのですが,慢性経過をたどることから便宜上,慢性痒疹に分類されています。しかし,これらの分類法にはいまだ問題が多く残されており,現在改訂案が検討されています。

 

治療は大きな問題です。もちろん原因的治療が理想的です。しかし,原因が見つからないことが多いですし,慢性腎不全や糖尿病となると速やかに治癒させるというわけにもいきません。痒疹は概してステロイド外用に反応しにくいですが,急性期の病変,すなわち滲出や急性炎症の要素が目立つ時期の病変には効果が期待できます。一方,完成した結節性痒疹などはステロイド外用に抵抗します。それでも病変が限られていれば,ステロイド貼付薬や局注でなんとか治療できる場合はあります。

 

ステロイドは外用期間がどうしても長くなったり,やむをえずランクを上げてしまいがちなのが問題です。副作用の観点からこのような状況は避けたいので,設備があればナローバンドUVBやエキシマライトなどの紫外線療法に切り替えます。また,結節性痒疹には活性化ビタミンD3軟膏が奏効することがあります。その場合,急にステロイドから切り替えず,徐々に行ったほうが無難です。頑固な結節に液体窒素療法なども可能です。タクロリムス軟膏も選択肢のひとつです。また最近では,結節性痒疹においてステロイド外用よりもヘパリノイドクリームを厚く塗擦するほうが効果が上がる例が報告されているので,ぜひ試みてみたい方法です。

 

【回答者】

佐藤貴浩 防衛医科大学校皮膚科学講座教授

 

執筆:

橋爪秀夫 市立島田市民病院皮膚科/副院長

佐藤貴浩 防衛医科大学校皮膚科学講座教授

  

 出典:Web医事新報

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