2018.11.15
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【他科への手紙】救急科→全科

メディカルサポネット 編集部からのコメント

診療科目に関係なく診療し、特に重症な場合に救命救急処置、集中治療を行うことを専門にする救急科専門医。救急領域ではpoint of care ultrasound(POCUS)という概念が急速に浸透しています。必要な所見の有無のみを判断するため、短時間で、誰でも、いつでも、どこでも、そして繰り返し施行可能となります。POCUSという概念を理解し共通認識の下、目の前の患者の診療に活かし、今後さらなる各診療科との緊密な連携が期待できます。

 

各科の先生方には普段より救急業務へのご協力ありがとうございます。最近、救急領域ではpoint of care ultrasound(POCUS)という概念が急速に浸透しつつあることをご存知でしょうか。

 

超音波検査(エコー)と言えば検査室の中で技師さんが十分な時間をかけ、じっくりと各臓器を系統的に観察し、様々な計測を行うというイメージが強いと思います。一方でPOCUSとは医師が患者のそば、ベッドサイドで病歴や身体所見をもとに焦点を絞って、診断や治療に直結する所見のみを得るエコーのことを言います。詳細な計測を省き、必要な所見の有無のみを判断するため、短時間で(多くは5分以内)、誰でも(研修医を含む)、いつでも(24時間、365日)、どこでも(外来、病棟、集中治療室、手術室、在宅など)、そして繰り返し施行可能であるというメリットがあります。

 

その適応は解剖学的に眼球、肺、心臓、肝胆膵、腸管、泌尿生殖器、血管、神経、筋骨格、皮膚軟部組織と頭から足先まで全身におよびます。また呼吸困難やショックで来院された患者にはエコーが聴診器の代わりとなって診断、治療に大きく貢献してくれます。

 

そのように活用できる範囲は多岐にわたるエコーですが、たとえば広く普及しているものとしてFAST(focused assessment with sonography for trauma)があります。内科の先生方には馴染みがない言葉かもしれませんが、研修医の先生のカルテの中に「FAST陰性」などの記載を見て、疑問に思われた方もいると思います。もともとは外傷診療における胸腹腔内出血の有無を検索するものでしたが、そこから転じて胸腹水や内因性疾患(腹部大動脈瘤や異所性妊娠など)による出血の有無を検索する際に用いることがあります。

 

循環器領域ではFoCUS(focused cardiac ultra sound)という基礎的な心エコーが欧米を中心に広がりました。FoCUSは心囊液貯留の有無、目視での左室収縮能や血管内ボリューム評価など、ぱっと見てすぐ判断できることを重要視しています。循環器内科の先生方の中には「こんなものはエコーではない!」とお叱りになられる方もおられるかとは存じますが、敬遠されがちな心エコーに非専門医が頑張って取り組んでいるのだな、と温かい目で見ていただけたら幸いでございます。

 

このようにPOCUSという概念をご理解頂くとともに共通認識の下、目の前の患者の診療に活かしつつ、今後さらなる各診療科との緊密な連携を図っていきたいと考えております。

 

またPOCUSは各専門医の先生方の非専門領域での活用において習得も容易であり、非常に有用と思われますので、御一考頂ければと思います。

  

結び

救急診療におけるPOCUSという概念をご理解頂くとともに、日々の臨床にこの簡便で有用なエコーをぜひご活用下さい。

  執筆:

      瀬良 誠 (福井県立病院救命救急センター医長)

 

 出典:Web医事新報

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