2018.11.17
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皮膚悪性リンパ腫の治療法は?

メディカルサポネット 編集部からのコメント

すでに進行期の菌状息肉症,セザリー症候群は、進行期に沿って、ステロイド外用と紫外線療法を基本としつつ、レチノイド、インターフェロンγを併用します。限局的な腫瘤性病変については電子線照射、生物学的製剤、同種造血幹細胞移植などの化学治療、生物学的療法などに移行する他、新しい治療法も検証されています。

 

 菌状息肉症やセザリー症候群における治療法の選択肢が近年増えてきました。各病期,病変においてどのような治療法を選択したらよいか教えて下さい。国際医療福祉大学・菅谷 誠先生にご教示をお願いします。

【質問者】

佐藤貴浩 防衛医科大学校皮膚科教授


【回答】

【stage ⅡAまではステロイド外用,紫外線療法が基本。最近は生物学的製剤が注目されている】

近年,皮膚悪性リンパ腫の代表である菌状息肉症,セザリー症候群における治療法の選択肢が増えましたが,その多くは紫外線療法に抵抗性の進行期に対する治療です。紅斑期,扁平浸潤期,つまり病期でいうとstage ⅡAまでは,ステロイド外用,紫外線療法といった皮膚をターゲットにした治療が基本であることは変わっていません。

紫外線療法に抵抗性の病変が出てきた場合,ビタミンA誘導体やインターフェロンγを紫外線と併用します。レチノイドX受容体選択的レチノイドであるベキサロテンは,2016年に皮膚T細胞リンパ腫に対して本邦で承認されました。脂質代謝異常,甲状腺機能低下症がほぼ必発ですが,これまで代替薬として使用されていたエトレチナートよりも効果が強い印象があります。

限局的な腫瘤性病変については,電子線照射も有効です。以前は24~30Gyの線量が多かったですが,緩和的照射として8~12Gy程度の線量で十分であるという報告が出てきています。利便性や再照射のしやすさからも普及しはじめています。

最近は,皮膚リンパ腫に対する生物学的製剤が注目されています。抗CCR4抗体であるモガムリズマブは,2014年から再発または難治性のCCR4陽性の皮膚T細胞リンパ腫に使用できるようになりました。週1回投与で8週連続投与の用法が認可されていましたが,8回投与後にいったん中止せざるを得ず,その後の悪化が問題になっていました。本年8月から,最初の5回まで週1回投与,その後は2週に1回投与の継続が可能となりました。また,腫瘍細胞のCCR4発現を確認する必要がなくなりました。これは,菌状息肉症やセザリー症候群の大多数の症例でCCR4が陽性であるからであり,それ以外のT細胞リンパ腫に使用する際には注意が必要です。

ブレンツキシマブ・ベドチンは抗CD30抗体に微小管を破壊するモノメチルアウリスタチンEを組み合わせた抗体薬物複合体です。CD30陽性の菌状息肉症または原発性皮膚未分化大細胞リンパ腫の症例において,ブレンツキシマブ・ベドチンがメトトレキサートもしくはベキサロテンよりも有効であったという報告がなされており,今後,菌状息肉症・セザリー症候群に対して認可される可能性があります。

移植可能な年齢であれば,同種造血幹細胞移植を検討します。ただし,移植関連死,移植後の再発,移植片対宿主病(graft versus host disease:GVHD)などの負の側面もあるため,適応症例の選び方や前治療については,これから解明すべき課題です。緩徐な経過をたどる症例も多く,生命予後がよい一方,完全寛解は難しいことが多いので,患者に寄り添う姿勢が大切です。

【回答者】

堀 信一 IGTクリニック院長

執筆:

佐藤貴浩 (防衛医科大学校皮膚科教授)

菅谷 誠 (国際医療福祉大学医学部皮膚科主任教授)

       

 出典:Web医事新報

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