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2021.11.24
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【斉藤正行】介護職の賃上げに向けた要望書で我々が本当に伝えたかったこと

メディカルサポネット 編集部からのコメント

岸田首相が就任当時より重点施策の一つとして掲げていた、介護職らの賃上げへの具体案が明らかになりつつある中、11月12日に全国介護事業者連盟(介事連)の斉藤正行理事が政府へ要望書を提出しました。今後の社会保障改革を見据えつつ、持続可能な介護保険制度の実現に向け、介護現場の視点から業界としての意見・提言を具現化することによって、政府に施策の推進を強く働き掛けていくことを目指し設立された介事連。これまでも事業者のポジションのみを守るだけの主張ではなく、「事業者の立場でありながらも、時には自ら身を切ることも必要という認識に立って、幅広い視点からの活動を今後も常に行っていくつもり」だと要望書について語っています。

  

2021.07.02 政策提言活動の基盤構築を目指し、介護業界の大同団結を(協会・団体インタビューvol.1 一般社団法人全国介護事業者連盟)

 

《 全国介護事業者連盟 斉藤正行理事長 》

 

今月12日、我々は岸田文雄政権が打ち出している介護職の賃上げをめぐり、政府へ要望書を提出してきました。

 

その内容が報じられたことを受けて、皆様から多くのご意見・ご指摘を頂いているところです。配信された記事が非常に短かったため、我々の意図するところが必ずしも十分に伝わっていない面もあるかと感じ、改めて発信することに致しました。

 

 

■ 全職員に柔軟に配分すべき、という趣旨

 

反響が大きかった点は大きく2つ。今後の賃上げに向けて、事業者の裁量権の拡大を前提とした制度設計とするよう求めたことと、介護保険の被保険者年齢を現行の40歳以上から30歳以上へ引き下げる議論をするよう促したことです。

 

まず事業者の裁量権の拡大についてですが、これは経営層の懐を温めるための提言では決してありません。様々な職種の協働によって現場が成り立っていることを踏まえ、賃上げの対象を介護職員のみに限定したり、細かい配分ルールで束縛したりするのをやめて欲しい、という趣旨で盛り込んでいます。事業者が個々の実情に応じて、不公平感が生じないよう全職員の処遇をバランス良く改善できる、柔軟で使い勝手の良い仕組みにすべきと求めました。要望書の中では、法人の役員・理事らの収入に原資を回すことを明確に禁じるよう主張しています。これは必ず設けるべきルールではないでしょうか。

 

 

■ 月9000円増の財源ではない

 

次に被保険者年齢の引き下げについてです。

 

新たな経済対策を準備している政府は現在、介護職の給与を来年2月から月額9000円ほど引き上げる案を固めていますが、我々はこの財源の確保策として提案したわけではありません。月額9000円アップの財源は、昨年の新型コロナ対策予算の余剰金・繰越金で工面すると既に政府より伝えられています。

 

ぜひ要望書の本文をお読み頂きたいのですが、我々の提案はもっと長期的な視点に基づくものです。来年度以降も継続的に介護従事者(介護職のみならず幅広く)の処遇を改善していくために、更には2024年度以降に予想される介護報酬のマイナス改定にも対応していくために、より長期的な原資として、被保険者年齢の引き下げも「議論していって欲しい」と求めました。介護業界の方だけでなく全産業の方から幅広く保険料を頂くことになりますので、個々の負担は相当薄く済むと認識しています。

 

 

■ 皆で広く薄く負担していく道へ

 

もちろん、そうであったとしても30代の方にとっては負担増となりますから、幅広く納得を得るのが難しいことも理解しています。

 

我々の提案のベースにあるのは、今後の日本の人口動態です。更なる高齢化の進展と現役世代の急激な減少。高齢者の暮らしや尊厳を守っていく方法は、広く薄く負担を増やしていく以外にはなかなか見出だせないのではないでしょうか。

 

これを避け続けていると、介護報酬を削減しよう、あるいは利用者負担を引き上げよう、という動きが一層強まりかねません。結果、経営的に追い詰められる事業所が更に多くなったり、サービスを受けられない高齢者が一段と増えたりする事態を招くでしょう。制度の支え手を増やしていくということは、ご利用者やご家族、介護事業者、介護職にとって恩恵となる非常に有り難いことだと考えています。

 

 

■ "事業者本位"の提案では決してない

 

重ねて強調しておきますが、我々はあくまで、被保険者年齢の引き下げの「議論をして欲しい」と要望しているのみです。30代の方の保険料を他より軽くしたり、所得に応じて毎月の負担額を変えたりすることも含め、できる限り多くの人が公平感を感じられる方策を検討していくべき、という立場であることを明確にさせて頂きたい。

 

「若者や職員にだけ負担を押し付けるもの」「事業者のメリットだけを考えている」というご批判もありましたが、そんなことはあり得ません。被保険者年齢を引き下げれば当然、職員の保険料を折半で支払っている事業者の負担も同時に増えますので、経営的には一段と厳しくなります。私心より日本社会の将来のために必要な議論をしていく、ということを我々は信念としてきました。

 

 

■ 負担と恩恵のバランスを丁寧に論じたい

 

政府は現在、全ての人が支え合う"全世代型社会保障"の構築に向けた検討を進めています。未来に向けてより良い制度を作っていくためには、現役世代や若者にも超高齢社会の課題を"我が事"として捉えて頂くことが欠かせません。被保険者年齢を引き下げるべきか否かという今回の議論も、そうしたことのきっかけの1つになれば良いと思っています。

 

介護保険をはじめ社会保障の財源を長期的にどう確保していくのか? これは大変重要で国民的に議論すべきことです。多世代それぞれの負担と恩恵のバランスをひとつひとつ丁寧に考えていくことが、何より重要ではないでしょうか。

 

我々は介護事業者の団体ですが、「現場の視点で持続可能な介護保険制度の改革を目指す」ことを活動目的としてきました。法人種別や事業規模、サービス種別などに偏ることなく、可能な限り公平な視点で現場の意見を政府へ伝えていきたいと思っていますし、地域、ご利用者とご家族、職員のことをしっかりと考えている事業者の立場こそを代弁したいと思っています。

 

今回の要望も、これまでもこれからも、単に事業者のポジションのみを守るだけの主張は決してしません。事業者の立場でありながらも、時には自ら身を切ることも必要という認識に立って、幅広い視点からの活動を今後も常に行っていくつもりです。

 

 

2021.07.02 政策提言活動の基盤構築を目指し、介護業界の大同団結を(協会・団体インタビューvol.1 一般社団法人全国介護事業者連盟)

 

 

 

出典:JOINT

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