2020.06.10
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【識者の眼】「新型コロナウイルス対策の感染拡大場面として『3密』の誕生秘話と『密接』への注目を」和田耕治

メディカルサポネット 編集部からのコメント

「3密」(密閉・密集・密接)によって新型コロナウイルスの感染が拡大する、という理解は私たちの常識となりつつあり、日常生活や組織運営において「3密」が発生しない環境作りが進められています。そもそも、この「3密」の概念はどのように形成されたのでしょうか? 国際医療福祉大学医学部公衆衛生学教授の和田耕治氏が解説します。

 

厚生労働省のクラスター対策班の成果の一つとも言える、「3密」の概念ができるまでと追加のポイントとして「密接」について紹介します。

 

2020年3月9日の専門家会議の見解にて「これまで感染が確認された場に共通するのは、①換気の悪い密閉空間、②人が密集していた、③近距離での会話や発声が行われた、という3つの条件が同時に重なった場です」と最初に示されました。これは、それまでに確認された、屋形船、ライブハウス、懇親会などの詳細な情報から類推された場です。

 

これらの情報をもとにした、首相官邸のある方の発案と聞いていますが、この場は「3つの密」だということで、(1)換気の悪い密閉空間、(2)多数が集まる密集場所、(3)間近で会話や発声をする密接場面、という形に昇華され、首相官邸からポスターが示されました(https://www.kantei.go.jp/jp/content/000061868.pdf)。

 

3密の概念の形成にあたっては、地域の保健所などからの詳細な現場の情報やクラスターのつながりなどを提供いただいたことの成果だと考えています。特に、「どこで」感染したかを詳細に聞いていたのはあまり諸外国にはない特徴ともいえるようです。また、厚生労働省においてクラスター班として研究者も交えて、全国からの情報をもとに分析ができ、さらには早期に警戒を出せました。また、3密という場所を避けて下さったのは市民や事業者の皆様の協力によるものです。

 

なお、3密については、3Cs(Three Cs=closed spaces, crowded places and close-contact settings)として世界に発信されています。

 

追加のポイントとしては、3密の中でも特に密接場面である、発声をする場所や、さらには運動などをして呼吸が増す場面、飲酒をする場(合わせて3密プラスαとも呼んでいます)は特にリスクが高くなります。改めて、こうした場に注目して対策を行うと効果的です。

 

2密や1密は容認されるのか、といった問いもなされています。密を減らしていただくのは良いと思いますが、新しい生活様式が導入されている中で過剰になりすぎないようにもしたいものです。3密を避けたことによる感染拡大防止の効果については、さらなる検証が必要と考えています。

 

和田耕治(国際医療福祉大学医学部公衆衛生学教授)[新型コロナウイルス感染症]

 

 

出典:Web医事新報 

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