2022.06.29
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社労士が解説!看護師の多様な働き方を実現させる労務マネジメント
~副業・兼業を認める新時代の働き方改革~

Vol.2 看護管理者が気をつけるべき副業・兼業の労務管理

社労士が解説!看護師の多様な働き方を実現させる労務マネジメント ~副業・兼業を認める新時代の働き方改革~

 

編集部より

看護界において、副業・兼業を認める新たな働き方が始まろうとしています。日本看護協会は2022年2月に開催した看護サミットの中で「スピード感を持って整えていく」とし、今後急速に準備が進むことが予想されます。これまで副業・兼業を禁止してきた医療機関が多いことから、経営者や管理者は労務管理を整えていかなければなりません。副業・兼業について経営側のメリットを理解した上で、看護師1人1人がさまざまなフィールドで活躍できる土台を作っておくことが、職員の定着・医療機関の質の向上にもつながると言えるでしょう。スムーズな導入のために、病院・介護施設の労務管理に詳しい社労士の吉川史子さんに、看護師の副業・兼業を認める新たな働き方の導入に向けた労務管理のあり方・準備すべきことなどについて3回にわたり解説いただきます。

 

執筆/吉川 史子(社会保険労務士、ナーシングケア社会保険労務士事務所 所長)

協力/榎本 幸子(社会保険労務士、社会保険労務士法人葵経営 かながわオフィス所長)

編集/メディカルサポネット編集部

 

届出用紙の記載内容が重要―Step2:副業・兼業の内容を確認する

前回は看護業界が副業・兼業を認める方向へ舵を切った事情と、経営者・看護管理者が副業・兼業を認めるための就業規則の規定、届出方法の一例を挙げました。導入は極めて簡単ですが、難しいと思われるのは実際に届出がなされてからです。改めて前回の「副業・兼業に関する届出」の例を見てみましょう。

 

看護師の副業・兼業 就業規則 規定例 

 

「雇用」とは、労働基準法第9条に定める「事業に使用される者で賃金を支払われる者(労働者)」として契約を締結している場合をいい、以下のケースはすべて「雇用」にあてはまります。

 

・仕事の依頼や業務遂行の指示等に対して拒否できない
・経営者・看護管理者の具体的な指揮命令を受けている
・勤務場所・勤務時間が指定され管理されている
・経営者・看護管理者の指揮や監督の下に一定時間労働を提供したことに対する対価として賃金が支払われている

 

 

一方「非雇用」は、看護師の場合は以下のケースが挙げられます。

 

・起業
・共同経営
・アドバイザー ・NPO法人
・一般社団法人・社会福祉法人・医療法人等の理事

  

要は「雇用」と異なり、経営者・看護管理者等からの指揮命令や勤務時間・場所の限定がないと解される場合です。

 

「非雇用」の欄は業務内容を記載する欄もありますが、これは看護師が個人事業主として副業・兼業をする場合、屋号等もない場合には業務内容を知らせてもらい、就業規則の副業・兼業の制限に抵触するかどうかを確認する意味があります。

 

「雇用」か「非雇用」かにより、現在の勤務先と副業・兼業先との労働時間の通算が必要かどうかも明確になります。副業・兼業を上手く機能させるためには労働時間の管理が不可欠です。これは後ほど詳しく触れます。

 

次から、届出用紙の記載内容について具体的に解説していきます。

 

何をチェックする?届出用紙の記載内容

1.事業所名称・所在地、事業内容・業務内容

副業・兼業先と労働契約を締結している場合、共同経営や法人理事等の場合は、その事業所名称・所在地、事業内容・業務内容を確認しなければなりません。「非雇用」の説明でも触れたように、業務内容が副業・兼業の制限に抵触するかを見極める必要があります。特に事業内容・業務内容によっては「競業により法人の利益を害する場合」に該当するケースも大いにあるでしょう。法人の機密の漏えいにも直結します。

 

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