2022.10.07
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選ばれる病院になるための広報活動
〜地域に根ざしたコミュニティ・ホスピタルとして〜

攻めの中小病院経営 ~事務部門が動かすヒト・モノ・情報~vol.7

  

 

編集部より

新型コロナウイルス感染症の影響を受け、経営・人材確保・収益化など、病院はさまざまな課題に直面していることがこれまで以上に浮き彫りとなりました。それらの課題解決のための取り組みが、必ずしも改善に結びつくとは限らず苦戦する病院もあるようです。本コラムでは、熊本県甲佐町にある谷田(やつだ)病院で事務部長を務める藤井将志さんに、病院において大きな役割を担う事務部門のリアルな実践方法について解説いただきます。第7回のテーマは「病院の広報活動」です。いまや、SNSで病院のリアルを発信することが当たり前になりつつある昨今。みなさんの病院ではどのようツールを使って発信されているでしょうか?病院広報の実施は、患者さんへの周知につながることはもちろん、採用活動の後押しになったり、地域住民に病院を理解してもらったりと、さまざまなメリットがあるようです。しかし、病院広報はSNSだけにとどまりません。藤井さんが実践する具体的な病院広報活動を通して、自院でできることを探してみませんか?

 

 

コロナ禍で加速したSNS・動画PR

どうすれば患者さんに来てもらえるか?」「どのようにして医療者を集めるか?」は、病院経営において最も重要なテーマの1つです。さらに、少子高齢化の影響による競争激化は避けられず、医療機関にとって集患と採用につながる広報活動の必要性はいっそう高まっています。

   

しかし、そうはいっても広報に対して経営資源である「ヒト・モノ・カネ」を十分に投資できる病医院は少ないのが現実です。特に経営改善が必要な医療機関は赤字であり、短期で成果が出るとは限らない広報活動には手がまわらない、という意見もあると思います。

   

従来の病院は、屋外看板や交通広告、チラシやタウン誌などのオフラインメディアで認知度向上を図るのが主流でしたが、幅広い世代にインターネットが普及した昨今では、ホームページやYouTubeなどのSNSを活用した独自の広報活動が可能になりました。SNSを始めるのに料金はかからないため、潤沢な予算を持つ大企業でなくとも自分たちで情報発信ができる時代になったのです。それを使わない手はありません。

 

当院では、総務課にIT広報担当を配置し、SNSの運用に取り組んでいます。Facebook、Twitter、Instagram に加えて、2020年に公式YouTubeチャンネル「やつだチャンネル」を開設。YouTuberを目指すスタッフが病院・部署紹介から、医療情報、地域活動まで、さまざまなジャンルの動画をアップしています。登録者数は620人(2022年9月20日現在)とまだまだ発展途上ですが、中には11万回以上もの再生回数を記録している動画もあり、コロナ禍の入館制限で面会や見学がままならない中、院内の取り組みや雰囲気を外部に伝える貴重なツールになっています。

   

また、YouTubeは視聴者の年齢、性別、視聴時間などを分析し、データ化することが可能です。データをもとに動画を改善することができるので、ノウハウを蓄積することもできますし、広告やメンバーシップなどによる収益化を目指す道もあります。一朝一夕で伸びるものではありませんが、将来の収益化も見据えてコツコツと育てていきたいと思っています。

 

 

youtube「やつだチャンネル」のトップページ

 

  

広報のミッションは、ファンを増やすこと 

特定の診療科や疾患に特化した都心の病医院では、集患に際してSEO対策やデータ分析によるマーケティング活動が有効です。一方、地域の課題を解決できるコミュニティ・ホスピタルを目指す当院では、地域の人々に身近に感じてもらい、ファンになってもらうことを広報活動の目的にしています。ここではその具体例をいくつかご紹介します。

  

1) 地元スポーツチームとのコラボレーション

2018年から熊本市を拠点とする女子バレーボールチーム「フォレストリーヴス熊本」をサポートし、キャプテンを務める選手を通所リハの介護職として雇用しています。

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