谷田病院で実際に活用されている、病院が「シニア正職員」へ移行する職員と締結する同意書サンプルをDLできます。

現役病院事務長が語る定年制度の見直し、どうしてますか?

    

編集部より

病院の事務長、藤井将志さんが、実務者の視点から病院経営について時に辛口解説する今シリーズ。

今回は「定年制度の見直し」についてご紹介いたします。

 

藤井さんが事務長を務める谷田病院では、定年後に嘱託職員となる際に賃金が下がる「60歳定年制」を維持していましたが、60歳以上でもそれまでと同等のパフォーマンスを発揮できる人材が存在することから、定年制度の見直しを再検討したそうです。

意見を集めた結果、働ける人には「シニア正職員」という新しい枠を設け、勤務制限がない限り給与を維持することを決定したとのことです。

働く人が不足している地方での喫緊の課題に向き合い、新たな制度を創出するまでの経緯や成果、そして今後の展望についてもぜひご注目ください。

 

執筆/藤井将志(特定医療法人谷田会 谷田病院 事務部長 藤井将志)

編集/メディカルサポネット編集部

  

  

1. 定年見直しの検討経緯

働く人がいない—— 人口1万人、生産年齢人口は約5000人しかいない、谷田病院のある田舎町では喫緊の課題です。

これまで、就業規則で60歳定年で希望者の再雇用は認めており、最高齢の職員は79歳の用度職員でした。

規則上、定年後は“嘱託職員”となり、賃金が下がり、賞与も支給されなくなる運用でした。

 

過去にも、定年の見直しについて検討したことがあります。60歳で勤務継続をどうするか、ひとまず線引きができることはメリットもあります。

このタイミングであまりパフォーマンスが高くない人材を適正に評価する機会にもなります。

年齢や身体の状況を理由に、この業務はやりたくない、などの意見を言う人も少なからずいます。

しかし、そのことが、制限なく仕事ができる人への不平等にもなってしまいます。こうしたこともあり、これまで定年の延長については慎重な判断をしてきました。

 

その一方で、60歳になってもバリバリ働ける人がいるのも確かです。逆にこうした人材からは、給料が下がることに不満が出たり、定年をきっかけに転職するという事例も散見されるようになりました。

所属長からすると、土日も夜勤も制限なく働ける人材が抜けることは大きな痛手で、何とかならないか声が上がるようになりました。

前述のメリットを考慮しても、働ける人材が抜けるデメリットが大きいと判断、制度の見直しを再度検討しました。

 

院内から意見を集めてみると、定年後も給与が維持されることへの要望はあるものの、やはり、勤務制限がかかるのに今まで通りの給与というのも納得がいかない、という意見は根強くありました。

 

・土日はシフトに入りたくない

・夜勤は月1回しかしたくない

・入浴介助はしたくない

・注射や運転業務はしたくない

 

定年になると、こうした希望を聞きつつ、働ける範囲で働いてもらっていましたが、給与が維持されるとなると、話しは変わります。

 

2. “シニア正職員”新設と運用方針

協議のうえ、最終的には、こうした勤務に関する制限がないうちは嘱託職員ではなく、正職員と同等の“シニア正職員”という枠を新設することにしました。

勤務制限がかからないことを同意してもらい、もし将来的に制限する場合は、嘱託への切り替えも相談させてもらいます。

こうすることで、給料が維持されるならまだ頑張る!と思っている人材に活躍してもらえるようになります。

実際にこの制度をスタートすることを表明したことで、退職や転職を思いとどまってくれた人が何人かいます。

 

また、この制度が明確になると、そもそも60歳までに業務に制限がかかることを考え直すきっかけにもなるようです。

その時点で制限がかかっていてはシニア正職員になる道が途絶えてしまいます。

コスト的にみても、フルで仕事ができない人を一人区分の人件費で抱えるのはマイナスですが、しっかりと働ける人であればマイナスではありません

当院のやり方を知っている人材でもあるので、新入職員に比べても即戦力でしょう。

 

ここで新たに、課題となったのが、これまでに定年を迎えた人たちです。

その時は制度がなかったから仕方ないと割り切ってもらうこともできましたが、

 

 

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