2019.12.26
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第8回メディカルフォーラム
「職員が長く イキイキ働ける職場づくり」開催レポート
結果より”関係の質”を高めよう

組織力アップトレーナー直伝の「グッドサイクル」を生むポイントとは?

第8回メディカルフォーラム(マイナビ主催)が11月22日、JR新宿ミライナタワーで開催され、「職員の離職でお困りの方必見!職員が長く イキイキ働ける職場づくり」と題して、株式会社メディフローラの上村久子さんが講演しました。上村さんは職員の離職を食い止めるだけでなく、職場の魅力をアップさせ、一人ひとりが前向きな気持ちで働けるようにするための組織作りのポイントを解説。好評を博した講演の模様をレポートします。

取材・文/中澤 仁美(ナレッジリング)
編集・構成/メディカルサポネット編集部

「ずっと働きたい!」と思わせる職場を目指して

看護師・保健師・心理相談員の資格を持つ上村久子さんは、総合病院での臨床経験から医療現場における人事制度のあり方に疑問を抱き、大学院に進学して人事組織論を研究しました。大学院修了後は、医療系コンサルティング会社で医療機関の経営改善に従事。組織文化を変えて組織活性化につなげる研修プログラムを提供したところ、その劇的な効果が評判を呼びました。現在は株式会社メディフローラ代表を務め、病院・介護系に特化したチームビルディングを専門とする「組織力アップトレーナー」として活躍されています。

 

今回のイベントのテーマは「職員が長く イキイキ働ける職場づくり」です。「職員を採用しても次々と辞めていく」「職員間の連携がうまくいっていない」といった問題を抱える組織は珍しくありません。

しかし、組織改革が必要だとしても、どこから手を着けてよいのか分からないことが多いのではないでしょうか。職員から「ずっと働きたい!」と思われるような組織作りについて、組織のあり方に責任を持つ経営担当者や現場リーダーへ向けて、小手先のテクニックにとどまらないポイントをお伝えします。

 

働くことが「たのしい」とは?

「職員が働いていて『たのしい』と思える職場作り」をミッションとする上村さんですが、ある医療機関のコンサルティングを担当したとき、先方の担当者から怒られてしまった経験があるそうです。「患者さんの命を預かる現場で、『たのしい』とは何事ですか!」と。この方は、職員がおちゃらけて、緊張感がなく働いているようなイメージで捉えたのかもしれませんが、上村さんが言う「たのしい」は全く意味が違います。

 

「『楽しい』ではなく『愉しい』だと考えてください。漢字の由来から考えると、『愉』の偏(へん)はりっしんべんですから『心』、旁(つくり)は身体に無数ある『ツボ』を意味するそうです。つまり、心のツボを押すことで心地良さを感じている様が『愉しい』なのです。仕事は辛いこともたくさんあります。しかし、それを乗り越えた時に達成感ややりがい、生きがいを感じますね。ツボ押しが痛みから始まり心地良さに変化するように、仕事における『たのしい』は受け身だけではなく能動的に求めていくものをより大切にすることが職場における組織改革に大切だと私は考えています」(上村さん)

 

「能動的に求めていく”愉しい”という姿勢は組織改革に欠かせない」と話す上村久子さん(中央)

「能動的に求めていく”愉しい”という姿勢は組織改革に欠かせない」と話す上村久子さん(中央) 

 

組織のあり方を変えるとき、介入の対象となるのはほとんどの場合で「リーダー」だと上村さんは言います。リーダーに課題がなく、その部下にだけ課題があるということはまず考えられないのだとか。

 

「基本的に、人は他人が言った通りに動かされません。しかし、人に動いてもらうことが仕事です。厳しい表現になりますが、『うちの部下は使えない』などとこぼすリーダーがいたら、それは『自分には人を育て、動かす能力がない』と自白しているに等しいのです」(上村さん)

 

このことを踏まえて、上村さんが示した「組織を変革するために必要な要素」は次の3点です。

 

(1)リーダーが変革の必要性を認識している

(2)リーダー自身が自分を変える必要があると思っている

(3)リーダーが人の大切さに気づいている

  

組織のあり方にリーダーの与える影響がいかに大きいか、あらためて銘記したいものです。

 

組織の成長を考えるフレームワークを持とう!

「チームビルディングの過程で嵐の起こらない組織はない」と上村さんは言います。必ず人を原因として問題が起こり、それを人が乗り越えることで組織としての成長が達成されます。組織を構成するのが人である以上、人を疎かにする組織に成長はありません。

 

「問題が起こることは避けられないとしても、それをどう解決に導いていくか。そのための道筋を事前に考えておくことはできます。その基盤となるのは『人間関係の量と質』です。普段からリーダーと部下がどのようなコミュニケーションをしていて、どのくらい分かり合えているのかが問われます。人間同士、価値観を一つにすることはできないと思いますが、分かり合うことはできるはずです。こうした人間関係を職場で当たり前にしておくことが、組織の成長の基盤となります」

 

また、人の成長を考えるとき、その人の問題意識のありかや、問題への対処の仕方により、成長の度合いが違ってくると上村さんは指摘します。問題の重要度の高低、緊急度の高低でマトリクス を作ったとき、「重要度・高/緊急度・高」のところばかり注目している人は成長しにくく、「重要度・高/緊急度・低」のところに目配りしている人は中長期的な成長が見込めるということです。

 
メディカルサポネット メディカルフォーラム フレームワーク 画像

 

「『重要度・高/緊急度・高』ばかり注目している人は場当たり的な対応に終始していることが多いのです。緊急度がそこまで高くなる前の段階で重要な問題――例えば、組織の理念を部下に浸透させたり、人を大切にすることを体現する(業務に追われて話を聴かない等を行わない)るなど――に少しでも取り組めている人は、広い視野で戦略的に仕事に取り組めているといえるでしょう。特にリーダーの方は、そうした思考の癖を持つようにしてほしいです」

 

「リーダーには、日頃から重要な問題を意識していただきたい」と呼び掛ける上村さん

 「リーダーには、日頃から重要な問題を意識していただきたい」と呼び掛ける上村さん

  

組織が成功していく循環をどう作っていく?

リーダーが部下を動かそうとするとき、危機感をあおったり恐怖を与えたりすることで何とかしようとする話をしばしば耳にします。しかし、そのように人を動かしても、よい結果に結び付くことはないと上村さんは戒めます。

 

その上で、上村さんは「ダニエルキムの成功循環モデル 」を紹介してくれました。このモデルはマネジメント領域でよく取り上げられるもので、「関係の質」「思考の質」「行動の質」「結果の質」に注目し、それぞれをどのように循環させれば良い結果につながるかを示したものです。

   メディカルサポネット メディカルフォーラム ダニエルキムの成功循環モデル 画像

  

「グッドサイクルでは『関係→思考→行動→結果』と循環させていき、関係の質に重きを置くため、お互いに尊重しながら対話を行うことでよい気づきやアイデアが生まれ、助け合いが伴う行動をとることができ、良い結果に結び付くとともに、さらに関係性が高まっていきます」

 

この循環が少し狂うことで、がらりと様相が変わってきます。

「バッドサイクルでは『結果→関係→思考→行動』と循環させてしまい、結果の質に重きを置くため、批判や押し付けが発生し、それを恐れて失敗を回避したり、消極的な姿勢になったりするため、果敢な行動がとれずに悪い結果に至ります」

 

グッドサイクルが循環している組織は、お互いに甘くなあなあで付き合っている「仲良し組織」ではないことに注意が必要です。リーダーとしては、このグッドサイクルを意識して、相手のことを慮りながら相手に必要なことを示してやることが大切です。

 

「相手を慮ると、その人は想像以上に動いてくれることを経験するはずです。そうした行動を引き出せるリーダーが、いわゆる優秀なリーダーなのだと思います。組織を変えるために重要なのは、自分が率先して行動すること、そして相手の行動を引き出すことです。簡単なことではありませんが、良いように動くことで良いように組織が変化していった事例をいくつも見ています。動かなければ組織は変化しようがありません。皆さんはどこかで『行動しない理由』を探してしまってはいないでしょうか。リーダーが変われば組織が変わる。このことを常に意識してくださいね」

 

プロフィール

上村 久子(うえむら ひさこ)


株式会社メディフローラ代表取締役。東京医科歯科大学にて看護師・保健師免許を取得後、医療現場における人事制度の在り方に疑問を抱き、総合病院での勤務の傍ら慶應義塾大学大学院において花田光世教授のもと、人事組織論を研究。大学院在籍中に組織文化へ働きかける研修を開発。

その後、医療系コンサルティング会社にて急性期病院を対象に診療内容を中心とした経営改善に従事しつつ、社内初の組織活性化研修の立ち上げを行う。2010年には心理相談員の免許を取得。2013年フリーランスとなる。大学院時代にはじめて研修を行った時から10年近く経とうとする現在でも、培った組織文化は継続している。

 

 

 

メディカルサポネット編集部

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