2020.04.08
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vol.4 ギャップを解消して
看護職員の早期退職を防ぐには?

5分で読めるポイント解説 看護師労働実態調査

新しい環境で働き始める際、誰もが期待と同時に「現場に馴染めるだろうか」「仕事についていけるだろうか」などの不安を抱えています。とくに中途新入職員は前職での経験があり、やりたいことが明確な場合が多いので、理想や不安の内容が新卒看護職員よりも具体的と言えるでしょう。そのため入職前に正確な情報提供がなされていないと、入職後に理想と現実のギャップが生じ、早期退職を選択してしまう可能性があります。
中途新入職員の早期退職を防ぐには、どのような施策が必要なのでしょうか。

マイナビが独自に看護師の労働実態を調査し、結果をまとめた「看護師白書2019年度版」と、早期退職者への聞き取り調査の結果をもとに、看護職員の定着について考えていきます。
   
編集・構成/メディカルサポネット編集部

 

入職前に不安に思ったこと/入職してから戸惑ったこと

下記は「看護師白書2019年度版」における、職場環境に関する調査結果です。

現在の就業先に入職する前に不安に思ったこと、入職してから戸惑ったこと・困ったことを尋ねました。

 

 

入職する前に不安に思う要素として、「良好な人間関係を築くことができるだろうか」「労働条件・勤務環境が想定どおりだろうか」「自身の知識・能力・経験と、相当する仕事との間にギャップはないだろうかといった内容の項目が上位を占めています。

 

 

入職してから戸惑ったこと・困ったことでは、入職前の不安要素として多く挙げられていた「人間関係」に関することよりも、「職場環境、労働条件、仕事内容において想定していたものと違っていた」という戸惑いが多く見受けられます。

求職者側も入職前に不安に思うポイントと、実際に入職してみて戸惑いを感じるポイントに差異があるようです。 

この理想と現実とのギャップが大きいほど、新入職員は不満を感じるようになり、早期退職につながりやすいと言えます。

 

 

ポイントはギャップの解消

下記は「マイナビ看護師」の転職支援サービスを通じて転職したものの、残念ながら早期退職(入職してから90日以内の離職)に至った事例を対象に、退職理由についてキャリアアドバイザーが聞き取り調査を行い、まとめた分析結果です。

 

 

早期退職の理由として「聞いていた話と違う」20.5%が最も多く挙げられています。聞き取り調査に寄せられた実例には次のようなものがありました。

■職場が就業開始の30分前に来ることが当たり前という雰囲気で、面接で聞いていたよりも早く出勤しなくてはいけなかった。
■面接時に患者の受け持ち人数は8名程度と聞いていたが、実際は20名近く受け持つことになった。
■面接時に1日の平均訪問件数を聞いていたが、訪問看護経験者ということもあり、他職員よりも多く訪問することになった。
■本社での採用面接時に聞いていた情報と、入職後に配属先の職員から聞いた情報が違った。

 

入職前には不安に思う要素として上位に挙がらなかった職場での慣習や仕事の進め方において、情報提供の不備や、採用側との認識の違いが生じています。主な原因として、次のようなことが考えられます。

 

・求職者側が情報を求めなかったポイントだったため、情報提供が不足。仕事内容や進め方よりも、労働条件のすり合わせに重点を置いてしまった

・採用側が現場の状況を把握していないために、求職者に正確な情報が伝わっていなかった

・個々のスキルと、業務の割り振りにギャップがあった

 

早期退職を防ぐには、「募集時」「面接時」「入職後」3つのフェーズで、これらのギャップを解消していくことがカギとなります。

 

成功事例から見る早期退職防止策

人材定着率の高い法人・企業が実践している早期退職防止に効果のあった事例を、各フェーズごとに紹介していきます。

【募集時】

■就業イメージを持ってもらえるように、病院の特徴や職員の人数・年齢層などをホームページで公開している。また普段の雰囲気を知ってもらえるように、配属先ごとの情報(職員の人数や年齢層、仕事内容、1日の流れなど)や写真を掲載している。

■残業時間や在院日数、重症度・介護度、職員の人数体制などを数値化して、具体的に業務イメージが湧くような資料を用意し、面接や病院説明会で使用できるようにしている。また、病院ホームページ上にも掲載している。

 

▲求人情報や施設ホームページに写真やデータを掲載することで、より具体的な就業イメージを伝えられます。募集段階からミスマッチを防いでいくことが大切です。

【面接時】

■面接前に人材紹介会社と打ち合せをし、応募者の転職軸や響くポイント、懸念点などを確認して面接に入るようにしている。応募者と同じような境遇の職員がいる場合は、事前に現場に連絡して見学時に声がけする旨を伝えるようにしている。

■面接では前職での仕事内容を具体的に(看護方針、記録方法、看護師の雇用形態別人数体制、平均残業時間など)ヒアリングし、その上で病院の説明をしながら、前職との差を病院と応募者双方が理解できるようにしている。

■終業後10分間の事務作業など、現場で慣習となっている業務を把握することで、求職者に正確な情報を伝えるようにする。

 

▲各法人・企業によって仕事の進め方はさまざまです。個々のスキルや考え方を具体的に確認するとともに、応募者と同職種の職員が面接に同席することで、より現職(前職)とのギャップを減らすことができるでしょう。

また、似た境遇の職員と話をする機会を設けることで、リアルな就業イメージを感じてもらうことができます。たとえば、子育てと仕事の両立を重視している方に対しては、境遇の似た職員に1日の流れの詳細や、周りの協力体制を話してもらうなどの対策が考えられます。

【入職後】

■中途新入職員にも新卒同様に看護師スキルチェックシートを用いて、現状のスキルや知識を確認している。「中途入職者=即戦力」ではなく、一人ひとりのレベルに合わせた教育を行っている。

■看護部だけでなく、部署ごとの手順やルールをマニュアル化している。

 

▲採用側は中途新入職員に即戦力化を求めています。しかし、たとえ経験のある仕事でも、職場環境が変われば馴染むのに時間がかかります。まずは中途新入職員のスキルや考え方を把握し、一人ひとりのスキルに応じた業務配分や研修期間を設けましょう。

 

まとめ

求職者も入職前に不安に思うポイントと、入職してからギャップを感じるポイントは異なります。

早期退職を防止するためには、新入職員の不安の推移を理解し、求められた情報だけを提供するのではなく、より実態に近い業務に関する情報の提供を能動的に行っていくことが重要です。

 

 

↓全調査結果は、こちらよりダウンロードできます(会員登録無料)↓

 

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