2020.07.08
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アイセイ薬局が新卒・中途採用にウェブ説明会・面接を導入
場所を問わない強み生かして採用の幅を広げる

全国に372店舗を展開し、3,513人の従業員(うち薬剤師数は約1,800人)を擁する株式会社アイセイ薬局は、新型コロナウイルス感染防止のために、求職者に対してウェブ上で会社説明会・面接を導入するなど、採用活動のオンライン化を推進しています。薬剤師に求められる‟雰囲気”や‟清潔感”をいかにして把握するかが課題である一方、場所にとらわれずに優秀な人材を確保できる可能性も秘めているウェブ説明会・面接について、同社の薬局事業支援本部 採用・研修部の鈴木裕介さんに話を聞きました。
※店舗数と従業員数は2020年7月1日時点

取材・文/横井かずえ
編集/メディカルサポネット編集部

「門前」から「かかりつけ」へと薬局・薬剤師に求められる役割が大きく変わりつつある中で、アイセイ薬局は地域連携薬局のトップランナーとして走り続けるための人材獲得・育成に力を入れています。薬剤師のキャリアパスにも注力しており、7段階のスキルランクを設定して、ランクに応じたスキルアップや報酬体系を用意しています。

 

オンラインでの取材に応じるアイセイ薬局 薬局事業支援本部 採用・研修部の鈴木裕介さん 

 

こうした中で新型コロナウイルスの感染拡大に伴うリスク防止のため、2020年3月から薬学生に対するオンラインでの会社説明会や、中途採用者に対してビデオ通話プラットフォーム「FACEHUB」を用いたウェブ面接の導入を決定。6月からは新卒者に対するウェブ面接もスタートしました。

 

ウェブ面接導入を検討するにあたり、最初に考えたことは「採用にかかわる一連の工程を全てオンラインに置き換えた場合、どのような影響が想定されるか」ということ。「対面での面接と比較してどの程度、面接自体のクオリティーが下がるのか」が最大の懸念でした。

 

「もしもウェブ面接を行うことで明らかに面接のクオリティーが下がるのであれば、やらない方がよいというネガティブな意見も社内ではありました」

 

面接担当者は求職者の‟雰囲気”や‟清潔感”をどう判断するか

こうしたネガティブな意見も踏まえた上で、仮にウェブ面接を実施した場合に「できること」と「できないこと」を一つずつ洗い出す作業から着手しました。オンラインでは確認できないことの一つとして挙がったのは、求職者の‟雰囲気”や‟清潔感”です。

 

「‟雰囲気”や‟清潔感”などをウェブ上で把握できるかということです。当社は薬局ですので、患者さまに与える印象として‟雰囲気”と‟清潔感”というのは大切なポイントです」

 

想定される課題を丹念に検討した結果、最終的にウェブ面接導入へ踏み切りました。

 

「オンラインのデメリットは確かにあるかもしれません。ですが、オンラインだと大きく面接のクオリティーが低下するかというと、決してそうではないだろうと最終的に判断しました」

 

「求職者」と「社内採用担当者向け」の2種類のマニュアルを作成

いざウェブ面接を導入するにあたり、「求職者向け」と「社内の採用担当者向け」の2種類のマニュアルを作成。マニュアルはできるだけシンプルに、それを見ればシステムを使ってスムーズに面接ができるように工夫しました。さらに、履歴書の送付と適正検査はオンラインで完結するように変更しました。

 

実際にウェブ面接を行ってみた感想は「意外とできる」というもの。面接時間は対面の場合の1.5倍ほどになることが多かったのですが、ウェブ上であってもコミュニケーションを十分に図ることができるという手応えを感じました。

 

「コロナ禍での対面型の面接では、求職者は皆さんマスクを着用しており表情が分かりにくいため、なかなか一人ひとりの顔も覚えることが難しいです。それと比較すればオンライン上での面接だからといって相手の人柄がつかみにくい、ということは感じませんでした」

 

ウェブ面接ではマスクを着用しないため表情が見られるメリットも(写真はイメージです) 

 

デメリットは立ち振る舞いが分からないこと 一方で求職者の緊張が和らぐことも

その一方で、面接担当者によっては会話のタイムラグが気になったり、導入前に懸念していたような「雰囲気」のつかみにくさを感じたりする方もいました。

 

「どのようなタイミングで言葉を発していいのか、など会話のスピード感がつかみにくいという声もありました」

 

また、「求職者の立ち振る舞いがわからない」という課題もありました。通常の面接であれば、就職者がドアを開けて入室し、着席して話し始め、面接が終わってから退室するまでの一連の立ち振る舞いを見ることができます。オンラインで会話がスタートしてそのまま画面上で終了するウェブ面接では、そういった立ち振る舞いをチェックすることができないというデメリットも見つかりました。

 

メリットとしては、求職者の緊張が和らぎやすいという点が挙げられます。

 

「対面型の面接では応接室などで行うため、なかなか緊張を解くのが難しい。最後まで緊張したままで、うまく話せないまま終わってしまうことも珍しくありません。しかし、オンライン上での面接であれば求職者はご自宅、ご自身の空間にいるため最初は緊張しているものの、緊張を解くのが容易です。そのため、求職者の自分自身の想いを聞き出しやすくなるという点ではプラスに働きました」

 

オンラインなら場所を問わず気軽に参加 採用の強力なツールに

さらに、移動時間が削減され、居住地を問わず参加できる点も大きなメリットです。実際に九州などの遠方からも「オンラインなら参加できる」と参加者が集まり、採用の幅が広がりました。

 

「従来であれば、遠方だからと参加をためらっていた求職者でも気軽に参加してもらうことができるのは大きな強みです。時間や場所に制約されることなく、多くの求職者に当社の魅力を知ってもらうためには、ウェブ説明会・面接は強力なツールの一つになると思います」

 

実際にウェブ説明会・面接を行ってみて、「思っていたよりもスムーズに導入することができ、弊害は少なかった」というのが率直な感想です。

 

「通信面のトラブルで途中から電話に切り替えるなどちょっとしたトラブルはありましたが、個人的には大きな問題とは感じませんでした」

 

課題はオンラインでの「就業体験プログラム」の充実

今後の展望については、まずは既に実施しているウェブ説明会・面接が採用担当者、求職者双方にとってどのような影響があったのか、メリット・デメリットを検証することが必要です。

 

さらに、現在スタートしている薬学生に就業体験の機会を提供する「お仕事・研修体験」は、対面型でセミナールームなどでこれまで実施していたプログラムをそのままオンラインに移行していますが、オンラインの特性を生かした新たなプログラムを充実させていくことも課題です。

 

「オンラインならではの強みとして、場所を問わず多くの求職者に気軽に参加してもらえることがあると分かりました。今後はそうした強みを生かし、多くの薬学生に興味を持ってもらえるオンラインでの『お仕事・研修体験プログラム』を工夫し、当社の魅力を今まで以上に知ってもらいたいと考えています」

 

オンラインの強みは場所を問わずに求職者と交流できること(写真はイメージです) 

 

アイセイ薬局ロゴマーク

株式会社アイセイ薬局

株式会社アイセイ薬局は現在、全国で373店舗(2020年6月1日現在)の調剤薬局を運営している。1984年の創業以来、開業医との医薬連携を大切にした地域医療への貢献を行い、薬局店舗の9割を「クリニックとのマンツーマン型」と「医療モール型」が占めているのが特徴。2019年から新規事業として、薬剤師の意見をもとにした商品を展開するプライベートブランド「KuSu(クス)」を立ち上げ、2020年6月1日にKuSuオンラインストアを開設した。また、グループ企業として「はなまる」ブランドで高齢者介護施設を運営する株式会社愛誠会などを展開している。



 

 

 

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