2020.08.06
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病院&薬局薬剤師が語る漫画「アンサングシンデレラ」の魅力
オンラインイベントの盛り上がりをレポート!

ドラマ化でも注目される人気漫画『アンサングシンデレラ 病院薬剤師 葵みどり』(荒井ママレ作、医療原案/富野浩充、コアミックス刊)の名シーンをもとに、病院&薬局薬剤師が語るイベント「アンサングを病院×薬局薬剤師で語る会 ver.1」が2020年7月5日(日)、オンラインで開催されました。SNSを巻き込んで盛り上がりを見せた本イベント。同作の医療原案を担当する病院薬剤師、富野浩充さんをはじめとする病院薬剤師と薬局薬剤師ら特別パネリストが繰り広げたトークを中心に、内容を抜粋してお届けします。

取材・文/中澤 仁美(ナレッジリング)
編集・構成/メディカルサポネット編集部

■漫画から浮かび上がる薬剤師の「リアル」

 本イベントを主催したのは、みどりや薬局(静岡県島田市)を経営する清水雅之さんと、株式会社バンブーの代表取締役を務め、薬剤師ライターとしてメディカルサポネットで「この薬局がすごい!」を連載中の竹中孝行さん。特別パネリストとして、『アンサングシンデレラ 病院薬剤師 葵みどり』(コアミックス刊、1〜5巻発売中)の医療原案を担当する富野浩充さん、病院薬剤師の木村浩一さん、薬局薬剤師の児島悠史さんを招き、「このシーンは実際にあり得る?」「それぞれの現場ではどう?」といった本音を語り合いました。

 

「ぜひ、漫画を手元に置いてご参加ください!」という竹中さんの言葉からスタートした本イベント。事前申込みをした250人以上の薬剤師がオンラインで集い、チャット機能やTwitter(♯アンサングを語る会)で感想や質問を投げかけるなどインタラクティブな時間となりました。

 

 Profile

  

清水雅之さん【主催】

 

みどりや薬局店主(薬剤師)。ドーピング違反の予防について学べるカードゲーム「ドーピングガーディアン」を開発。


竹中孝行さん【主催】

 

株式会社バンブー代表取締役(薬剤師)。一般社団法人薬局支援協会の代表理事として「みんなで選ぶ薬局アワード」を開催。薬剤師ライターとして、メディカルサポネットで「この薬局がすごい!」を連載中。


富野浩充さん【特別パネリスト】

 

漫画「アンサングシンデレラ 病院薬剤師 葵みどり」(コアミックス刊)の医療原案を担当。焼津市立総合病院薬剤科に勤務する現役薬剤師。

木村浩一さん【特別パネリスト】

 

病院薬剤師としてICUなどで勤務する傍ら、iPhone向けアプリ「薬Quiz」を開発。


児島悠史さん【特別パネリスト】

 

調剤薬局勤務。Fizz-DI代表、株式会社sing取締役。著書に『薬局ですぐに役立つ 薬の比較と使い分け100』(羊土社)など。


 

■職場によって大違い?薬剤師の年収を比較

大学時代の友人たち(薬剤師)と飲み会をする主人公のみどり。仕事について語るうちに年収の話題になるが、総合病院に勤めるみどりの発言に友人たちは驚く。

 

アンサングシンデレラ 病院薬剤師 葵みどり」(2巻7ページ)©荒井ママレ/コアミックス

 

みどりの推定年収は380万円。「病院勤務の薬剤師の実態に照らせば、年収400万円以下というのは現実的にあり得るラインではないでしょうか。病院ならではの当直手当も医師に比べるとずいぶん低い……という実態を描いています」(医療原案・富野さん)。かつて調剤薬局勤務だった木村さんも、病院に転職して年収が100万円ほどダウンした経験があるそうです。

 

一方、みどりの友人たちの推定年収は、調剤薬局勤務で440万円、調剤薬局併設ドラッグストア勤務で480万円、製薬会社勤務(MR)で590万円。調剤薬局勤務の児島さんは、「地域差は大きいものの、薬局の相場も的外れではないと思います。ところが世間からは、『薬剤師はもっとたくさんお給料をもらっている!』と思われがちなんですよね……」と話していました。こうした現実も、今後は漫画やドラマを通して一般の人に浸透していくのかもしれません。

 

■理想と現実の狭間で揺れる「薬薬連携」

オーバードーズで搬送されてきた患者の退院後のことを考え、調剤薬局との連携を検討するみどりたち。しかし、話し合いのなかで、「院外の薬局」の事情を自分たちが理解していないことに思い至る。

アンサングシンデレラ 病院薬剤師 葵みどり」(4巻78ページ)©荒井ママレ/コアミックス

 

漫画の中では、みどりの働きかけもあり、少しずつ地域の薬局とのつながりが生まれていきます。病院勤務の木村さんが「目指すところは一つなのにうまくいかないのは、情報不足と方向性の不一致が原因。漫画にあるように、異なる立場や職種のスタッフでカンファレンスを行い、1人の患者さんについて考えることが大切では?」と話すと、他のパネリストからも賛同の声が集まりました。児島さんは薬局薬剤師の立場から、「『担当の患者さんが知らない間に入院していた』というのはよくあること。『紆余曲折の末にたどり着いたのであろう妙な処方』を目にすることも多い。患者さんの治療に関わる経緯や途中経過を、薬局の側にも伝えてもらいたいです」と話していました。

 

薬薬連携の場面は、漫画での表現も難しかったといいます。「編集部から『理想の姿を描いて』と言われ、試行錯誤しながら生まれたストーリー。現実的には、両者の交流はまだ少ないですよね。診療報酬の後押しも大切ですが、まずは顔の見える関係にならないと」と富野さん。チャット欄も大盛況で、「病院薬剤部からの情報開示が少ないように感じていますが、何をオープンにすれば連携が進むのでしょうね」「在宅だと患者背景やキーパーソンの共有があるので、外来でもできたらいいと思います」「うちの地域では若手薬剤師による『薬薬連携の会』が発足して、先日Zoomで会議しました!」といった意見が飛び交いました。

 

■薬剤師の関与も増えつつある「看取り」

仲間の計らいで、ずっと関わってきた胃がん患者の最期に立ち会うことができたみどり。さまざまな思いが胸に押し寄せ、がん薬物療法認定薬剤師である先輩の前で涙をこぼしてしまう。

 

アンサングシンデレラ 病院薬剤師 葵みどり」(3巻167ページ)©荒井ママレ/コアミックス

 

チャット欄などでも「涙なしには読めなかった」と大反響だったこのシーン。病院薬剤師でもある富野さんによれば、「薬剤師の業務としてはまだレアかもしれませんが、十分な信頼関係を築けたケースとして描かれています」ということ。木村さんも「病院で看取りを経験しましたが、正直、無力感もありました。医療従事者としてそれを背負い、次の患者さんに経験を生かす思いが大切だと思います」と体験を話していました。

 

また、在宅医療が拡大していくなかで、薬剤師の役割にも変化を感じるという意見も。薬局店主の清水さんは「訪問の際、救急搬送の依頼を薬剤師がすることも増えています。薬局薬剤師のほうが、看取りに関わる可能性が高いのかもしれません」と話していました。一昔前には見られなかった「看取りに関与する薬剤師」ですが、今後はスタンダードな姿になっていくのかもしれません。

 

■従来の薬剤師像に縛られない活躍に期待!

2時間の予定をオーバーするほど盛り上がった本イベント。最後に話題になったのは、頼れる先輩薬剤師、瀬野の言葉が胸を打つ名シーン! 薬剤師のあり方について悩むみどりを、先輩が激励する姿が印象的です。主催の竹中さんは、「すべての薬剤師にとって、『自分の立ち位置を決め付けない』ことが大切。自身の職場で薬剤師として何ができるのか、ぜひ考え続けてほしいです」と締めくくりました。

アンサングシンデレラ 病院薬剤師 葵みどり」1巻14ページ©荒井ママレ/コアミックス

 

「アンサングシンデレラ」医療原案・富野浩充さんからのメッセージ

一般の人にとって、いまだに薬剤師のイメージは「薬を出す人」のまま。漫画やドラマを通して、薬剤師という仕事の魅力がもっと多くの人に伝われば……と願っています。

 

フジテレビ木曜劇場「アンサング・シンデレラ 病院薬剤師の処方箋」は、7月16日から放送が始まっています(22:00放送)。現実と向き合いながらも理想を追求する薬剤師たちの姿を、どうか見逃さないでください!

 

「アンサングシンデレラ 病院薬剤師 葵みどり」(荒井ママレ作、医療原案/富野浩充、コアミックス刊)

総合病院の薬剤師として働く、葵みどり・26歳。医師のように頼られず、看護師のように親しまれなくても、今日も彼女は患者の「当たり前の毎日」を守るため、院内を駆け回る。称賛されなくてもあなたを支える医療ドラマ!『アンサング シンデレラ 病院薬剤師 葵みどり』は現在、「月刊コミックゼノン」で連載中。

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