2020.12.08
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地域包括ケア時代に求められる在宅医療の姿
~コロナ禍を生き残る在宅医療のありかた~

「第3回医療と介護の総合展(東京)」セミナーレポート②

新型コロナウイルス感染症拡大によって、多くのクリニックで外来患者数の大幅な減少がみられた一方、需要が急速に高まっているのが在宅医療です。100万人いるとも言われる在宅医療を必要とする人に対して、医療を提供するリソースは十分整っているとはいえません。東京都八王子市を中心に、病院・クリニック・介護施設などを展開する、医療法人永生会の事務長である中村哲生氏が、ポストコロナ時代の地域包括ケアについて、生き残るクリニック経営のために必要なポイントについて解説しました。

取材・文/河村 武志(ナレッジリング)
撮影/穴沢 拓也(株式会社BrightEN photo)
編集・構成/メディカルサポネット編集部

2020年10月14日(水)~16日(金)の3日間にわたり、幕張メッセにて「第3回医療と介護の総合展(東京)」(主催:リード エグジビジョン ジャパン株式会社)が開催されました。医療・介護分野におけるB to B商談展として日本有数の催しですが、併せて数多くのセミナーが企画され、コロナ禍の状況にあっても多数の参加者でにぎわいました。

 

ここでは、15日(木)のセッション「地域包括ケア時代に求められる在宅医療とは?」から、医療法人社団永生会 クリニックグリーングラス事務長の中村哲生氏によるセミナーの模様をレポートします。

 

 

中村哲生

医療法人社団永生会 クリニックグリーングラス 事務長

1993年に在宅医療の世界に足を踏み入れて以来、27年間にわたって経営に携わる。2017年3月より現職。同年5月に『コップの中の医療村―院内政治と人間心理』(日本医療企画)を出版。これまで在宅医療に係る顧問先は70か所ほどあり、年間100本以上の講演活動も行っている。

   

  

■“持続可能”な在宅医療の実現を目指して

 

私が勤務する医療法人社団永生会(東京都八王子市)は、3つの病院を中核として、クリニック、介護老人保健施設、認知症グループホーム、訪問看護ステーション、居宅介護支援事業所を運営し、疾病予防・医療・介護・福祉の切れ目ないトータル的なヘルスケアを提供しています。

 

これから日本の総人口は減っていきますが、65歳以上の高齢者人口だけは2040年まで増えていきます。少子化も長らく続いている中で、これからの医療・介護をどう支えていくか、これが大きな課題です。厚生労働省は「全員参加型在宅医療」の旗を振り始めています。特に、多くの病院が在宅医療に参入することをめざしている。病院側の本音としては在宅医療やりたいとは思っていないことが多いですが、それでもやらないと病院の経営が成り立たない状況に直面しつつあります。

 

厚生労働省によれば、現時点で在宅医療を必要としている人は全国で約100万人いるとされています。しかし、それを支えられるリソースは確保できていません。仮に、既存の現場が無理に無理を重ねて支えるかたちになれば、看取りや夜間対応のニーズも増え続ける中で、やがて崩壊してしまうでしょう。持続可能な在宅医療のあり方を模索し、形作っていく必要があります。

 

在宅医療を必要としている100万人に対して、在宅療養支援診療所は全国に1万4500件程度しかありません。まだまだ高齢者は増え続けるのに、どう考えても足りないじゃないですか。一方で、医療機関は全国に約11万件あります。ここが少しずつでも在宅医療の患者さんを診てくれたら、かなりの部分を賄える……という計算があり、厚生労働省は診療報酬などを使って誘導を進めているわけです。

  

 

   

■コロナ禍後、増え続ける在宅医療需要に応えられるクリニック経営とは?

   

COVID-19の影響としては、外来は大幅な患者数の減少に見舞われました。ただ、コロナ禍だからといって、それまで患者さんが外来でもらっていた薬が必要なくなるわけじゃない。そこで、受け皿として在宅医療のニーズがさらに高まって、当クリニックでも毎月非常に多くの新規依頼が入っています。一方で、それに対応できるだけの数の医師をそろえなければなりませんから、毎月のように新たに医師を採用しているところです。

  

このようにニーズが旺盛に高まり続ける在宅医療・介護業界ではありますが、個々の法人の生き残りについては安穏としていられないことも確かです。在宅医療に進出する医療機関が増えると、社会全体としては望ましくても、個々の法人の経営的観点からすると、だんだんと患者さんの獲得が難しくなることも考えられます。その中で、質の悪い在宅医療は淘汰されます。今の状況をみると、在宅医療で繁盛しているところは、ほぼ100%が口コミによるものです。したがって、良い口コミを広げてもらうという観点からも、地域包括ケアシステムの中で互いに顔の見える関係性を築くことが、これからの重要なポイントになっていくでしょう。

 

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