2020.03.31
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【書評】あの『誰も教えてくれなかった診断学』の続編がついに!!

メディカルサポネット 編集部からのコメント

臨床経験を積んでいけば、直感的に診断名がひらめくことは増えていきますが、どうしても分析的・系統的なアプローチが必要な場面もでてきます。本書では「直感を鍛える」「推論を深化させる」を大きなテーマとし、無意識で働く「直感」をどう鍛えるのか?その方法も紹介しています。弱点を補強し、一歩進んだ「上級編」の診断推論を始めましょう。

 

【書評】あの『誰も教えてくれなかった診断学』の続編がついに!! 【書評】あの『誰も教えてくれなかった診断学』の続編がついに!!

   

野口先生は診断学教育の日本の草分けのような存在であることは言うまでもありません。2008年に出版された名著『誰も教えてくれなかった診断学』(医学書院)には、当時日本の多くの若手医師や学生が診断学への勇気を貰えたのではないかと思います。その上級編に当たるのが本書です。

 

評者は個人的に野口先生にお目にかかったことがあり、またご著書やメディアでも野口先生のご経歴をよく拝見するのですが、1995年にTufts-New England Medical Center Fellow of Clinical Decision Makingで訓練をされた(そののちHarvard SPHで公衆衛生学を修められています)というその時代は、診断学の“ブーム”が訪れている今とは全く違う風景が日本に広がっていたのではないかと想像します。そのような中、clinical decision making(臨床決断学)といわれる分野において、こうしてわかりやすく診断学を“誰も教えてくれなかった”切り口で世に広めてくださったことは、日本の医学界において大きな福音だったと思います。

 

本書は前著の後継にも当たる位置づけとの本書の言葉通り、前著に加え、昨今の診断学志向の基本構造となるいわゆるdual process theoryに基づくsystem 1 diagnosisについても言及され、さらにその詳細な省察が展開されています。「推論をみがく」の章ではいわゆるsystem 2の概念を包括し、様々な角度から“狭義の”診断推論を訓練するための方策がケースとともに紹介されています。複雑症例の攻略ももちろん本章のターゲットです。続くフレームワークの章でpivot and clusterやhorizontal-vertical tracingなどの代表的な診断戦略も紹介されています(感謝申し上げます)。Treat/no Treat, Treat/Test/Waitの章では、決断分析の考え方を学ぶ上でとても勉強になる症例と解説の記載があり、野口先生のご本ならではの学びが充実しています。最後の章は「地雷疾患」の章であり、いわゆるdon’t miss diagnosisの各論についてまとめられています。

 

「直感?直観?」「意識下を動かす」「ワーキングメモリ」「AI」などのコラムも充実していて、個人的には読者としてそちらも気に入っています。

 

総じて、奥義伝授のタイトルにふさわしい包括的なマスターピース、お勧めです。

 

【著】野口善令(名古屋第二赤十字病院副院長/第一総合内科部長)

 出典:Web医事新報

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