2020.01.28
3

【書評】『学会では教えてくれない アトピー性皮膚炎の正しい治療法』アトピー性皮膚炎治療への著者の熱意が伝わる一冊

メディカルサポネット 編集部からのコメント

他医療機関で治癒しない難治患者を長年診てきた筆者が贈る、アトピー性皮膚炎診療ガイドの決定版です。ステロイド外用薬を忌避する「脱ステロイド療法」や、保湿剤で置き換える「減ステロイド療法」によって難治性アトピー性皮膚炎の患者さんが増加していました。基礎となる湿疹・皮膚炎から説き起こし、日米のガイドラインによる診断基準を検証。実際の治癒例を提示しながら、治療の肝となる適切ねステロイド外用療法を解説していきます。治療への著者の熱意が伝わる一冊です。

 

【書評】『学会では教えてくれない アトピー性皮膚炎の正しい治療法』アトピー性皮膚炎治療への著者の熱意が伝わる一冊 【書評】『学会では教えてくれない アトピー性皮膚炎の正しい治療法』アトピー性皮膚炎治療への著者の熱意が伝わる一冊

   

アトピー性皮膚炎治療の寛解導入期においては、皮膚での炎症を速やかに収束させるために、皮疹の炎症や部位にあった適切な強さのステロイド外用薬による治療が必要である。一方、ステロイド外用薬による副作用を恐れて、strongestのステロイドは使用しないことにしている、あるいは1週間以内など期間を限っての使用にしている、ステロイド外用薬は必ず保湿剤などに薄めて使う、という方針の先生もいるかもしれない。

 

本書においてはそれまでstrongestのステロイドを使用していなかった重症患者を、strongestのステロイド単独で、どのくらいの量、どのくらいの期間使用して、安全に寛解導入できるかを、著者が実際に臨床写真を提示しながら、自身の経験に基づいて示している点が貴重である。

 

海外の臨床研究においても寛解導入期に組織学的にも十分な寛解が得られるほどの炎症抑制を行わなければ、寛解維持もうまくいかないということが指摘されている。つまり、strongestのステロイドを使用しないことにしてしまうと、本来なら寛解導入可能な重症アトピー性皮膚炎患者がうまく治療できないリスクが生まれてしまう。

 

保湿剤との混合、重ね塗りに関しては、日本特有なものであり、アドヒアランスの向上やこれまでの治療経験に基づいた方策として行っている医師も多い。その際、混合、重ね塗りが効果に及ぼす影響を考慮した上での使用が必要との強いメッセージが本書内では発せられている。平易な言葉でわかりやすく記載されており、読みやすく、また、著者の患者を良くしたいという熱意、エネルギーが伝わる一冊である。

 

【著】渡辺晋一(帝京大学名誉教授)

 出典:Web医事新報

この記事を評価する

  • このエントリーをはてなブックマークに追加

TOP